夜をこえて ほんとうに何てことない、普段の夜だった。
残業もそこそこで家路につくと、鯉登さんから『今日は肉じゃがだぞ!』ってラインが来て、帰宅した俺は絹さやの筋をとった。
炊きたて白飯のみずみずしい甘味。濃口しょうゆと砂糖でほっくりと煮あがった肉じゃがとの組み合わせは見事で、箸がとまらくなった。
「めちゃくちゃ旨いです。けど、またいい肉を」
「鹿児島黒牛だ!」
肉じゃがなんて、そこら辺のこまぎれ肉でいいはずなのに。だがビールをあおりながら『月島に喜んでもらいたかった』と満面の笑みを見せる鯉登さんが可愛いすぎて、言葉が出ないかわりに唇を噛みしめるより他なかった。
今日は木曜日。
明日も仕事があるから、早々に風呂を済ませて寝る。それだけのはずだった、けれど。
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