「黒崎様、失礼致します」
「お……ハ、ハイ」
硬さの残る声に、使用人の女はくすりと口元を引き上げたが直ぐに仕事用の笑みへと戻す。
「お茶をお持ち致しました」
「アリガトウゴザイマス……」
障子を開ければ部屋の中心で所在なさげにしている少年が一人。
女は静かな所作で机の上に盆を置くと湯呑みを一つ、色とりどりの菓子が乗った菓子皿も置く。
盆には未だ一つ湯呑が残っているがそれを机に置く事はしない。
その盆を琥珀の眼がちらちらと見ており、その分かり易い態度に対して女は「如何かされましたか、黒崎様」としれっと尋ねる。
「えっと、この後白哉のとこにも茶、持ってくのか」
「はい」
「あ、じゃ、じゃあ俺白哉のとこに持って行くよ。その、顔出す予定だったし」
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