「冬と狼 星の夜に」(前略)
ところで主の前に相棒の話しである。彼は自分と同じ化生の類だ。
自分達が付喪神と呼ばれる存在であること、自分を買い求めた人間の男、つまりは自分達の主のこと、彼はなんでも教えてくれた。
若いという言葉ではまだ足りない。単に幼いとも違う。そんな「生じたばかり」の自分を大変可愛がり、気にかけ、主が時折とても意地の悪いことを言ったりやったりするのから庇ってくれたりもした。
「僕は脇差だからね。お手伝いとかお世話が出来るのが嬉しいんだ。君の本体は非の打ちどころのない良品だし姿形も立派だけど、付喪としては赤ん坊だもの、尚のこと気になるよ」
これでも僕は何百も『年上』だしね、と彼は笑った。
堀川国広というこの少年の姿をした脇差の付喪神は、己の正体について人間の世界では色々と賑やかで定かでないことも一番初めに知らせてきた。
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