まだ俺の背負う肩書が、騎士団長ではなく小隊長だったころ。今よりも、さらに無茶が多かった若き時代の話だ。
とにもかくにも、気を張り続けるのが得意だったが故。休息を忘れ、どっと働いて糸が切れたように倒れるというのを繰り返していた時期がある。どうも俺は「うまい具合にやる」という絶妙な生き方ができなくていけない。英雄になぞらえた力は幼いころから皆の期待の的であり、自らもまたその力を持ってして民を守るのが使命だと思っていた。だからと言い訳にできるものではないが、そもそもにして立ち止まるという選択肢がなかったのである。
(……二日、眠るばかりで潰したな……)
ベッドから眺める暦の恨めしいこと。任務に手を付けず、訓練にも出られず、ただただ眠るというのは俺にとってこの上ない屈辱だった。もう大丈夫なのではないか、と起き上がろうとして眩暈にやられ、空虚に八つ当たって舌打ちを零す。倒れるほどに疲れているのだから本能的に休めればよいものを、俺の頑固は体の欲求さえ押さえつける強大さを持っていた。
5742