Nムルヒス『口移し』 かつては家の一部だった瓦礫にもたれながら小槌ヒースクリフが項垂れているのを大槌ムルソーが発見した。
そのまま寝落ちしてしまったかのように頭を下げたきり、ぴくりとも動かない様子に嫌な予感が脳裏をよぎり、ムルソーは反射的に息を飲んでしまう。
落ちこぼれだと指をさされていた小槌を見つけた際の反応を他の金槌に見られていないかと周囲を見回してからムルソーは、改めて彼を見つめ直す。
返り血だったら良かったことかと思わずこぼしたくなるほど顔のほとんどが赤く染まっているのは、異端から強く殴られたか何かで出血しているのだろうか。
続いて、移動手段を奪う目的で切られたらしき片方の太腿には大きな切傷があり、足元に赤い水溜りを広げてしまっていた。
2313