執行ムル×Nヒス『接吻』 前置きもなく、にゅっと伸ばしてきた両手で両頬を挟まれては力強く引き寄せられる。
あ…このまま顔の皮を引き剥がされるんだ。
と何故か他人事な感想が浮かんだと同時に恐怖がMAXに達し、浮かんだ感想ごと頭の中は真っ白になった。
そんなヒースクリフの予想を裏切るかのように、ムルソーは真顔で己の唇を相手のと重ねさせた。
恋人同士がするキスとは言い難い、ただ唇を押しつけてるだけのキスだった。それに加え、肝心の本人は両目をしっかりと開けたままなせいで、余計に圧を感じる。
硬直したヒースクリフの恐怖に満ちた表情が深緑色の双眼に映る。
ひび割れてざらついた唇を唇で触れては離れ、また触れるの繰り返しが何度も続くと焦れったくなったのか、ムルソーはいきなり相手の下唇を軽く噛んだ。
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