来るもの拒まず去るもの許さず「そういえば、君妖刀普通に持って運んでたよね」
激務による徹夜がとうとう限界に達し、最早峠も超えたハイテンションも終わりが見える部下たちを仮眠室に詰め込む直前、同じく徹夜で土気色になりつつある顔色の上司の言葉を、五十鈴はよく覚えている。
当時なんて返したかは一切覚えていないが、結論から言えばそれがきっかけで五十鈴は刀遣いになった。適性があっても本人の性格が向いてるとは限らねェだろ、とは思いながらも、今まで近づくことすらできなかった妖刀に触れる方に天秤が傾いたのだ。
殆ど鍛えていなかったが、それでもなんとか訓練期間を終え、所属したのは当然峰柄衆。今まで細々としていた修理待ちの機材に大物が混じったり、妖刀の研磨依頼が舞い込んだりと、そこは五十鈴にとって最高の職場だった。
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