微かな息苦しさで目を覚ました直後、もぞもぞと胸元で蠢く緑色が千束の視界いっぱいに広がった。
「うひ、ぁ」
叫んだはずがちっとも迫力のない掠れた悲鳴しか出てこず、飛び起きようとして中途半端に動きを止めるのと同時に、「やっとお目覚めかよ」と千束を窘めるような声音で胸へ無遠慮に頭を乗せているものの正体に思い至る。緊張感が走ったのは一瞬で、千束は脱力して再びベッドへ身体を沈み込ませる。
「……なにしてんの?」
「心音の確認」
誤魔化すでもなく、悪びれるでもなく、真島は堂々と言い放った。
「確かめるまでもないでしょ、アンタなら」
「いいんだよ。分かってて、好きでやってんだ」
千束が着ているオーバーサイズのシャツの上から胸に耳を当てていた真島が、感慨に耽るような声で呟く。なんだよそれ、と悪態をつきながら、千束は言いくるめられたような気がしてどこか面白くなかった。
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