ステップ・ファミリー 休日昼間の映画館はさまざまな客層で賑わっている。
エスカレーターを上ってそのフロアに足を踏み入れると、がらりと雰囲気が変わった。どことなく上品な印象を受けるのは照明の色によるところが大きい。壁の色もシックなブラウンを基調とした、開けた半円形の空間だ。
先程までとは違う、靴の下で感じるのが珍しい弾力のある絨毯の床。
奥に見える、赤いカーテンがかかった幻想的な入口。
先頭にエリ、その隣に寄り添うように緑谷が、そして最後に一歩後ろから轟が続いた。外見もバラバラで傍から見て不思議な三人は、もう兄妹のように打ち解けている。今は、仲良く午後の日差しが差し込むカフェで食事をしてきた後だ。
物珍しげに周囲を伺いながら、エリが緑谷の手をそっと握った。照明がおさえられた空間に、これまで歩いたショッピングモールとは違う雰囲気を感じたらしい。
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