夜明け前 薄暗い中、じっと目と耳でゲンの様子を観察した。
隣から静かに規則的な寝息が聞こえるのをしっかり確認してから千空はゆっくりと身体を動かす。僅かな軋みにも細心の注意を払って何度も何度もゲンの顔を確認する。
――よし、寝てんな。
通った鼻筋に切れ長の目、頬に刻まれたひび……その全てがバランスよく揃っているように見える。左右で色の分かれた髪、白髪なのは精神的なものか遺伝か、石化後に起きた現象らしい。初見では物珍しかったが、今ではすっかり見慣れてしまっている。
――やっぱりテメ―の方が顔はいいじゃねぇか。
薄く開いて寝息を立てている男の唇は昨夜散々「千空ちゃん可愛い」、「好き」とこれでもかと言わんばかりに愛の言葉を千空に降り注いだ。言っているゲンは言いたいだけなのだろうが、言われている千空は恥ずかしさしか思い出に残らない。
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