天国は月にあるらしい首のうしろから背骨がいたい。ぼんやりとした意識で始めに感じたのはそれだった。それから自覚した頬に固い感触に、自分が作業机で寝落ちたことを理解する。最近は前に作ったある演出装置を元にして別の用途で使える装置を組み立てていたから寝不足で、そのツケが回ってきたようだ。
寝起き特有のボンヤリとする視界を正すために何度かゆっくりと瞬きをする。けれど作業用ライトが眩しくて目を背面へとそらせば、まだ部屋の中は暗くて夜だということを理解する。
そのままソファーに目線を向ける。姿を確認しようとして目をこらしてみると、そこで寝ているはずの人がいなかった。
今日は練習のあと、ガレージへ一旦よってほしいと司くんへ頼んだ。ランドの都合で少し早めに帰ることになったので、先程話した改良装置の最終調整をその場で試しながら作業するためだった。寧々はえむくんともう少し一緒にいることになったらしく、僕たちは二人で帰路につくことになった。
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