ななごのひ。 黒いフライパンの上ではスフレパンケーキがふるふると震えている。七海はその柔らかい物体を崩さぬよう、細心に気をつけてディッシュへと移す。その目はさながら年季の入った職人のように鋭い。手慣れた手つきでホイップしたバターを添えた。そこに更に、苺をはじめとした各種フルーツを一口サイズに切り揃え盛り付ける。包丁の扱いは剣豪の演舞のようだ。最後にアイスクリームをトッピングし、カウンターテーブルへ。
お待ちかねだった七海の愛妻は満面の笑みだ。早速フォークを手に取り、ひらりと掬い取ってピンクの唇の中へ滑りこませ、咀嚼する。
「おいし〜! とろける~! 七海、最高〜!」
「そうでしょう、日々研鑽を続けていますからね」
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