月の光ピアノを弾いた瞬間、ふわりとレースカーテンが風になびいた。
ドビュッシーの月の光。
曲名の通り今日は月が一段と要とピアノを照らす。
強弱がわかりやすいこの曲は要が感情をピアノに乗せると風もそれに呼応するようにレースカーテンを揺らす。
リビングの窓際に置いてあるこのピアノ、茶色いアップライトピアノは幼い頃、HiMERUと一緒に連弾したり、音に合わせて歌ったり、踊ったりと楽しい日々を一緒に過ごしたピアノだ。
最近は仕事が忙しくなり、弾く時間が無く少し埃を被っていたので調律が狂ってないか心配したが鍵盤を叩けば昔と同じ音を奏で、当時のことを思い出し、ふっと笑みが浮かぶ。
HiMERUが入院して代わりに自分なりにHiMERUの仕事を肩代わりするようになり、弾く時間が昔より長く取れず腕が訛っていると思ったが、頭、いや、手が勝手に覚えているようだ。自然に動く。
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