ひとにぎり「良かった。今日はもう熱が下がってる」
静かに眠る家康の額を手のひらで触れた。
昨日より顔色も良い。夏帆里はほうっと深く息をついた。
数日前から高熱を出して寝込んでいた。
なんでもないと言い張る恋人を家臣と共に説得し、無理矢理休ませた。
過労が相当溜まっていたのだろう。
無論それだけはなかった。
(家康、良かった……本当に)
夏帆里は小さく欠伸をした。少し気が抜けて睡魔が襲ってきた。
だが、まだ眠れない。家康が目を覚ますまで。
眠る家康の隣に横たわり、眺めていた。好きな人の寝顔は見ていて飽きない。
顔を近づけるとちょんと唇を重ねていた。
途端に顔が赤くなるのがわかる。思わず唇を押さえた。
(私……今、キス……)
夏帆里は慌てて離れようとすると、グッと腰をさらわれた。

厄災リンクパターン①100年の眠りから覚めたリンクが厄災ガノンをゼルダ姫と封印してから2年後。
いまだにリーバルの死を受け止めきれずにいたリンクは毎日のようにリトの村のメドーの止まり木でメドーに寄り添いリーバルの残滓に触れていた。
リーバルの魂はリンクのためにメドーの中に残り、話すことはできないがそばにあり続けた。
リーバルの魂に癒され喜んでいたリンクだったが、日々を過ごすうちに思い出したはずの記憶が色褪せ始め恐怖する毎日を過ごすことになった。今のリーバルとは新しい記憶を作ることはできない。
そんな悲しい日々を過ごしていたある日、ゼルダ姫の元に各部族から神獣を廃棄する草案が提出された。厄災の化身に操られ暴れていた頃の記憶が色濃く、あれは恐怖の象徴だと訴えるものが多かったのだ。

咲き誇る花の行く末この世界ってすっごい不条理だよな
どんなに頑張ったって結果が出なかったり
どんなに願ったって叶わなかったり
どんなに愛し合ってたって簡単に引き裂かれて

俺はさ、神様なんかいないって思ってるけど
真っ二つにされたやつに縋って泣き崩れてるこの子見てたら
奇跡くらい起こしてやれよって
ほんと、マジでそう思ったよ



【イーガ団であるために】




俺の所属する暗殺組織イーガ団には大体こんな奴らが集まってる。
王家に恨みがあるもの。行き場所がないやつ。厄災を信仰してるやつ。
殆どがそのどれかを理由にイーガ団なんてのをやってるけど、たまにそれ以外の理由で組織に入団してくる奴がいる。
今回の話はそんなそれ以外の理由で入ってきた、まだ少女って言えるくらい可愛らしい女の子の話。

猟犬は怖いものですイーガ団の本部のとある場所にある幹部以上のみが利用できるBAR。
秘密厳守が絶対ルールのその店は、店内で見聞きしたことは決して店の外で漏らしてはいけない。
店外で出会っても知らぬふりをするのが決まりごと。
それ故にその店では愚痴から秘密暴露まで様々な情報が飛び交っており、聞き上手な店主には様々な相談事が舞い込むこともあった。
そこを切り盛りする店主は下っ端構成員でありながら酒の目利きができて人望も厚い。さらに料理もうまいということから総長コーガ様から信頼されて店を任されているわけだが。
その店主こそこの俺！その器用さと人柄の良さから本職の指導員以外にも医療班やら研究班にも顔を出して多忙な毎日をすごしているこの俺！