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    イクラ

    まさよし

    DONEオーカイ オエがありえないくらい知識がなくピュア
    「今夜、騎士様のこと抱くから」

     突然そう言い渡されたカインは当然のように固まってしまった。手に持っていたフォークを落としそうになり、慌てて皿に乗せる。口に運ぼうとしていたタルトのひと欠片が行き場を失ってどこか寂しげに取り残されて、けれどカインがそれを視界に映すことはなかった。そこにはオーエンの、なにか企んでいるような楽しそうな笑顔だけが映っていた。
     付き合おうと言い出したのはオーエンのほうだった。ある日、なんでもないことのように「ねえ、恋人っていうのになろうよ」と言い出したのだ。もちろんカインは戸惑ったが、気づいたときには「おまえがそうしたいなら、いいよ」という言葉を返していた。それまでもオーエンがカインの部屋に気まぐれに現れてはふたりで過ごすことが数え切れないほどあり、いつの間にかその時間を楽しみにしている自分がいたことをカインは自覚していたが、まさか恋人になろうと言われて迷わず了承するほどの好意を抱いていたとは思っていなかった。その日の夜は、今まで知らなかった自分の気持ちと、オーエンと恋人になったのだという事実に頭がいっぱいになり眠れないほどだった。
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