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    グレイ

    吉良の作業ログ

    MAIKING風邪ネタでナツグレの冒頭。グレイが風邪をこじらせる話。ざっくり時間軸。39.7℃

     起床と同時に確認した時計の短針が左上を指し示していたので、グレイはおやと目を見張った。次いで己の身を襲った悪寒に思わず身震いすると、何事かを理解するよりも早く起こしたはずの上体が後ろへと傾いていく。かろうじて機能した腹筋が衝撃を軽減するも、頭部が枕に押し付けられた途端小さく呻き、強く目を瞑った。
     こめかみを押さえれば、指先には浮いた血管から常らしからぬ脈動が伝わる。拍動に合わせて痛む頭に手を当てながらゆっくりと起き上がると、カーテンの隙間から差し込んだ陽の光に視界が眩んだ。ベッドから抜け出し、足先がカーペットに着いたところに再び沸き起こった凍える感覚で、ようやく自らの身に起こるの異常に理解が及ぶ。茹った頭ではまともな思考が働かず、ずいぶんと遅れた把握であった。
     ベッドサイドに備え付けられた棚の引き出しをひどく緩慢な動作で開くと、ろくに中身に目も向けることもなく手を突っ込んで何かを探す。程なくして引き抜かれた手には体温計が一本握られていた。小さな画面の隣のあるボタンを一度押し込むと、襟首を引っ張って脇に差し入れる。二の腕を押さえ付けながら検温が終わるのを待つ間、グレイ 3536