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    セタ

    emotoruma

    MEMOお題サイト『リライト』様の「好きすぎる7題」から。
    自サイトで進めてたものの途中で止まってたのでとりあえず泰権で1つ。全部できたらまとめて支部に載せたいけどいつになるやら…。
    どうやら、君には依存性があるらしいはじめのうちはな、とにかく楽しくなったのだ。気持ちが浮かれて訳もなく歌い出したくなるような、何もかもが楽しくて仕方がない。そのうち慣れてくると、少し落ち着いてきて、多幸感、というのだろうか、目の辺りだとか頭が熱を帯びたようにぼおっとなって、夢を見ているようにふわふわとした気分になる。しばらく経つと、今度はとても穏やかな気持ちになるようになった。日々の憂いや不安が消えて、何も怖くなくなる。心が凪いでゆったりとした時間が過ごせる。
    そうしているうちにな、だんだん、足りなくなってくるのだ。それまでと同じでは満足できない。同じだけではかつてのような幸福感が得られない。もっともっとと欲しくなって、でも却って渇くようでな。今度は手元にないと落ち着かない。眠れない。しばらく断たれた時など泣きそうになったものだ。しまいには目が回って頭がぐらぐらして吐き気すら覚えるようになって、だが、それでも、手放せないんだ。夜を明かした翌朝どんなに後悔しても、求めずにいられないんだ。我ながらどうしようもないとは思うのだが、そのときは、やっぱり楽しくてしあわせで心が安らかになるんだ。
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    再走(サイソウ)

    DONE2025/3/16に開催されたHARU COMIC CITY 34の無配…予定だった散文。体調不良で欠席し配布できなかったため、こちらで供養します。
    同日がトーハクのdkj展の最終日だったので、それに合わせたネタです。2月のVRFで配布したこちら↓とうっすら繋がってますが、単品でも読めると思います。
    https://poipiku.com/4918557/11382208.html
    同一ケース展示の話 ―最終日― 展示物を眺める人々のささやくような声が、薄暗い室内の空気を密やかに震わせる。展示室の中央、ことさら目立つ位置に並んで展示されている膝丸と髭切は、空気を隔てる硝子越しに今日も流れゆく人々を見つめていた。
     注がれるいくつもの熱心な視線、佩裏まで見られるのは面映ゆい心地でもあったが、そんな眼差しを受けとめるのが今代の彼らの役目のひとつだ。
     ――でも、今日の弟はそれどころじゃないみたい。
     髭切が視線を走らせた先にいるのは、今回の展示の目玉のひとつであり、髭切がここに呼ばれる所以ともなった弟刀・膝丸である。刀身へ注がれる視線を前にして、今朝から何度も周囲を気にしては居住まいを正し、を繰りかえしている。人出が少なくなってきてからは、もはや動くまいと決した心を物語るように、両手を膝の上で固く握りしめていた。
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