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    ソング

    sangurai3

    DONE恋人の日記念SS 恋人設定のポプメル。原作完結後想定。
    記憶の中の数少ないラブソングを総動員して書きました。甘さが出てるといいな。
    月夜のコネクション 日付が変わる一時間ほど前、メルルは寝室の窓を開け夜空を見上げる。外からは涼やかな風に乗って森の香りが流れてくる。聞こえるのはかすかな虫の音とフクロウたちの鳴き声。テランの夜は今日も静かだ。
     祖母のナバラは先に眠っている。若い娘がいつまでも夜更かしをするんじゃないよと言い残して。苦笑しながら頷いたが、このささやかな日課をやめるつもりはない。明日を迎える前のわずかな時間。このひとときこそが今のメルルにとって最も幸せな時間だと言えるのだから。
    (ポップさん。ポップさん。起きていらっしゃいますか)
     メルルは心の中で呼びかける。大戦のさなかでポップと繋がった『回線』は今も使用可能ではあるが常時接続はされていない。お互い常に感情が繋がりっぱなし感知されっぱなしでは都合が悪いこともあろうと、諸々調整の末普段は『閉じている』状態を保つことで同意したのだ。例えるならばお互いの心の中に小さな扉があって、メルルがポップの扉をノックし内側から開かれたときだけ通信が可能になるというわけである。そしてその『閉じた』状態を開くのがこの時間。今日が明日に変わる前の約一時間、メルルとポップは二人だけの心の会話を楽しむことにしている。
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