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    ナンダカンダ

    ごまどれ

    DOODLE少し前にページメーカーで投稿していたSSを格納しました。なんだかんだ出先で手を出すのってれいくんな気がしてる。(人目を盗むのがうまい) TV局の裏手から住宅街へ向かって少し歩くと、小川の土手に沿って桜並木が続いている。向かい合う桜の木がアーチのように空を覆い、降り注ぐ桜の花びらが小川の水面を白く染めていた。

    空には三日月。夜も更け、出歩いている住民はほとんどいない。家々から漏れる光の下、みな家族団欒を楽しんでいるのだろう。

     零は先ほどから何も言わず桜の木の下に佇んでいる。満開を迎え、はらはらと溢れる花びらがそっと舞い降りる音でも楽しんでいるのだろうか。それとなく整った横顔を盗み見ると、その口元は満足そうに微笑んでいた。


     びゅう、と突然強い風が吹き抜けた。春一番が花びらを攫うように空へと駆け上っていく。街灯に淡く照らされたそれらは暖かな春の吹雪だった。


    「綺麗だね」

    彼の感慨を邪魔しないよう、薫は静かに感想を言葉にした。

    夜桜で花見をしよう、と持ちかけたのは俺だ。学園時代、零はよく庭園を散歩していたし、花を愛でるのは好きなのだろう。薫の予想通り、零は二つ返事でついてきて、この小川の土手までたどり着くとひときわ立派な桜の木の下で動かなくなってしまった。

    静かに桜を眺める零は美しい。言葉は無くとも、彼 843

    あるぱ

    DONE彼のもつ運命についての話/死のうと思ったけど髪を切ったらタイミングを逸した人の話。BL(といいはる)/書いてて長くなって飽きちゃったので駆け足/なんだかんだ2時間 通り過ぎる人たちは俺の事をまるで見えていないように振る舞うのに、肩が触れる数センチ手前で、ふ、とぶつからないように離れる。相手が避けているということは当然俺にも分かりきっているのだが、もしかしたら自分の周りに磁場があって、彼らと反発しているのではないか、などと、つまらない妄想が浮かんでしまう。
     通勤時間の駅のホームは、人でごった返していた。誰も隣に気を配ってなんてない。別に、特別俺が無視されているわけではない。
     つま先を何度か上下させ、点字ブロックの凹凸を確かめる。この先危険。それを知らせる点は、靴越しの足の裏ではあまりにも心もとない存在感に感じられた。
     微かに風を感じて、顔を上げた。ホームの入口に顔を向けると、二つ目のようにライトを光らせた電車が、駅にすべりこんでくる。伸ばしたままの前髪が、ふわふわと踊った。俺は足の裏で何度も点を確かめ、一歩前に出た。
     空気の流れが大きくなる。それに音。レールを擦るような甲高い金属音。足元を見る。あと一歩、あと一歩。
     昨日まであんなに躊躇っていたのに、今日は不思議と、まあいいかと思えた。
     俺の人生はここまでです。皆さんどうぞお元気で。
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