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    マンドリカルド

    mono_gmg

    DONE大学生ぐだ×バーの店員マンドリカルドな現代パロディ。まだ続く予定
    色々ふわふわしてますがご容赦ください


     一般的な夕食の時間は過ぎ去り、夜の都内が賑わいを見せ始めた頃。中心地から少し外れ、とある物静かな人気の無い通りを一人の若者が歩いていた。その足取りは酒に呑まれた者特有の不安定さは見られなかったが、どことなくふらふらとしていて覚束無い。俯きがちなその背中には彼だけが知っている寂しさが漂っている。
     青年は少し前までは大切な人と親密な時間を過ごしていたけれど、その大切な人と歩む道は今や違えてしまった。互い以上に想いを寄せる恋人が出来た訳ではなく、双方の間にある恋心が冷めた訳でもない。二人の関係に幕を下ろしたのは彼女が静かに呟いた別れよう、の五文字。相手を試すような冗談を告げるような人ではなかった。慌てて表情を窺えば眉を八の字にしながらもしっかりとこちらを見据えていて、長い時間を共にしてきた人の決意を覚ってしまった。切り出されてからたっぷり間を置いてゆっくりと頷く。未練は無い、と言えば嘘になるけれど。提案も憂いも拭い去って彼女を説得出来る自分の姿が思い描けなかったのだ。関係性が一つ消えても大事な友人であることは変わらないから、彼女にほんの少しの罪悪感も残したくなくてなるべく穏やかに笑 8950