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    ライツ

    k_hizashino

    DONE恋愛関係じゃないんだけど長い付き合いでやたら距離感の近い大般若と主。今日ふっとみたらいつも凛々しい姿の主が縁側で大般若にもたれかかってうたた寝をしていた。お互いの選んだ関係がどうあれ、大般若のそばでならあんな風に安心できるのならそれは喜ばしいことだ。みたいな本丸の刀による日記。
    残鐘「今日は主も大般若も仕事が立て込んでいるようでお互いに顔をあわせてはいなかった。だがそれを気にしている様子もなく、滞りなく仕事をしていた。あの二方は仲が良く、それとなく二方でいるところを見かけるのでそうでないときはむしろこちらが気忙しく思ってしまう」

    「主は色恋を好まぬ方であった。ゆえに大般若があの宴の最中に自分が主に恋慕していると告げた時はヒヤリとしたものだ。そう告げず傍に仕えるのみでよしとしようとする刀たちも数は少なくなかった。あの豪気さはあの刀があの刀たる所以だろうか」

    「あるいは思いつめてもいたのかもしれない。実際思いを告げたあと、主がそれを断ってからはふさぎ込んでいたし、自身を折ってほしいとも進言したと聞く。主は刀を大切にされる方であったからもちろんそれを断った。どんな思いなら受け取ってくれるのか、大般若は問うた」
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    DONE家路を辿っていたらいつの間にか結婚式を挙げていたはなし
    直接的な性表現はありませんが、一部連想させる表現があります。
    ゆめのつづき 暗闇のなかに、ゆらゆら揺れながら連なる赤い光を見つけた。とても静かな夜だった。悲しいかな俺が家に帰れる時間はいつも静まりかえっているのだが、それにしたって静かだった。痛いほど沁みる静寂に、俺は携帯電話を握りしめた。一二三の声が、聴きたくなった。でも、何度かけても繋がらなかった。そりゃそうだ。一二三は働いている時間なんだから。分かってる。分かっていても、俺は一二三なら出てくれるような気がして諦めきれなかった。結局、繋がらなかった。そしてこれで最後にしようと発信ボタンを押したとき、圏外になっているのに気がついた。シンジュクのどまんなかで圏外。おれ、いま、どこにいるんだろう。我に返ったとき、俺はどことも知れない場所を歩いていた。なにか白いものを被っているせいで前がよく見えなかった。泥のなかを進んでいるように身体が重くて、そろりと視線を動かせばスーツじゃなくて白い着物を着ていることが分かった。そういえば、通勤鞄どこやったっけ。どうして提灯なんか持っているんだっけ。なんだか見覚えのあるそれは、すこし前に見たあの怪火そのものだった。背後からたくさんの足音がする。むせかえるような獣のにおいがする。俺は、得体の知れない大きなうねりの先頭を歩かされていた。やがていつの間にか一枚の襖の前に座っていた。後ろにはもうなんの気配もなかった。でも、この先になにかいる。怖くてたまらなかった。進みたくなんかなかった。それなのに俺は、襖を開けてしまった。そこは座敷だった。立派な金屏風の前に誰かが座っていた。顔はよく見えなかった。目を凝らすと、川に石を投げ込んだときのように歪んでしまうのだ。俺はその隣に座った。目の前には朱塗りの銚子と三枚重なった杯が置かれていた。だから分かった。いまから行われるのは三献の儀だ。俺が被っているのは綿帽子で、身にまとっているのは白無垢だ。これは、結婚式だ。拒絶すればするほど、俺の手は素直に動いた。一の盃、二の盃と滞りなく酒を酌み交わし、とうとう三の盃だけになってしまった。このままでは夫婦になってしまう。ふるえている場合じゃない。俺は一二三が好きなんだ。愛しているんだ。死ぬまでいっしょは一二三がいい。俺の大事な幼馴染みで、たったひとりの友達で、家族。俺は力をふりしぼって差し出された三の盃をはねのけた。はずみで綿帽子も落ちた。肩で大きく息をしながら濡れた畳の上を這って逃げる
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