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    そらの

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    そこそこあぶ空1210展示
    マヴェフェニ
    呼ぶのならいつだって、

    #TGM
    #マヴェフェニ
    mavefeni

    あなたが呼ぶのなら貴方が呼ぶのならいつでも会いに行く。それがただの気まぐれで本心ではなかったとしても。それほどまでするくらいには、私は彼を愛していると言える。見返りは望まない。好きでやることだから。だからどうか、そんな寂しそうな、悲しそうな顔をしないでほしい。

    「こんにちは」

    「よくきたね」

    「あなたが呼んだんでしょう」

    「あぁ、そうだったね」

    多少なりと予定はあったがプライベートのことだったので捨ておいた。私からもよく訪れるが、呼ばれるとなると少し訳が違う。そんな時の彼は、疲れていたり、落ち込んでいたりする時が多かったからだ。もちろん、何も無い時がないわけではない。むしろそちらの方が多いが、メッセージの文面から察することができるので、そんな時はすぐに駆けつけるように、している。

    「今日は何かありましたか」

    「いや特には」

    「誤魔化さなくてもいいんですよ」

    「……君には叶わないな」

    「それなりの付き合いは、あると思ってますから」

    ルースターと比べるとほんの少しの付き合いしかないが、まず彼と比べることは間違いだということは解る。彼はルースターが幼児である頃から、もしかしたら生まれた頃からの付き合いであるから比べようもないほどの差がある。それでもそれなりに、付き合いがあると思っている。それが私の思い込みだとしても。

    「……最近悪い夢ばかりみて」

    そう言った彼の目元には隈ができていた。夢見が悪くて眠れないのと、眠ろうとはしなかったのだろう。体力資本の自分達だから、衣食住はきちんと、と私にも周りにも、自分にも言い聞かせていたが、こればっかりは仕方のないことなのだろう。彼が悪夢を見る要素はたくさんあった。相棒の死、ウィングマンの死。ルースター との空白の時間、これはもう忘れてもいいはずなのに記憶にはくっきりと刻み込まれているらしく、どうにも消えないようだ。あとは私も知らない幾許かのこと。どれだけの苦労、苦難を抱え込んでいるのだろう。私には少しもわからないのだ。それがとても悔しい。

    「……眠れないんですね」

    「解るのかい」

    「えぇ、解りますよ」

    あなたが私を呼んだから。メッセージの文面からは憔悴している様子が見てとれたからだ。いつもなら「遊びに来るといい」とかいった文面なのに対して、こういう時は「来てくれると嬉しい」と遠慮がちな、来れれば来て欲しい、というような少し弱気な文面だからだ。そういう時はできるだけ用事を投げ出してでも彼の元へと向かう。長く放置してしまうと、ダメになってしまいそうだったから。彼がそこまで弱い人だとは思ってはいないけれど、誰にだって弱いところはあると思っている。だから、そういう時にはそばにいたい、と我儘なことを思っている。

    「じゃあ、寝ましょう」

    「……眠れないんだ」

    「眠れるように協力しますから」

    「どうやって?」

    「まずベッドに行きましょう」

    まずは寝る場所に行くことから始まる。そうしなければ落ち着くことができないからだ。彼にとってそこが落ち着くかは解らないが、寝るといったらまずそこだろうからそこへ連れて行く。彼は大人しくベッドへと向かう。

    「横になってください」

    「……うん」

    そうして横にさせ、私はベッドの縁と腰掛ける。そうして横になった彼の髪を梳くように撫でてやる。これだけでも変わらないだろうか。私にできることなどこれくらいしかなかった。言ってくれれば、なんだってするけれど。

    「落ち着きそうですか?」

    「……わからない」

    「まぁそうですよね」

    さてどうすればいいのだろう。他にできることといったら?一緒に寝る?あまり意味がある気がしない。むしろ邪魔になるのではないだろうか。それに私は眠くない。起きてる気配がする者が近くにいたら余計眠れないだろう。

    「……君の体温を感じたい」

    「体温、ですか」

    「うん。今は君が恋しい」

    そこまではっきり言われると正直恥ずかしい。けれど嫌ではない。それが彼のためになるのなら、できることはしてやりたかった。かといってどうすればいいのか、さっぱりわからない。体温を、と言われても。うんうんと唸ったところでふと先日、ルースターがボブに膝枕をしてほしいのだと真剣に相談されたことがあった。散々とその理由を聞かされうんざりしたが、なるほど一理あるかもしれない、と思った。彼がそれをよしとするかは解らないけれど。

    「ピート、頭を少し上げてくれます?」

    「なんでだい?」

    「いいから」

    ベッドに深く座り込んだ私の太ももに、彼があげた頭を乗せる。それから一度彼の髪を撫でる。彼はとても驚いたようだったが、すぐに優しく笑んだ。

    「これでどうでしょう」

    「いいね、悪くない」

    「じゃあ、寝てください。起きるまではこうしていますから」

    「約束だよ」

    「もちろん」

    そう言ってしばらくして彼は静かな寝息を立て始めた。睡眠時間が足りなかった分、やはり眠かったのだろう。時折髪を梳きながら寝顔を覗くと、安心しきった寝顔をしていた。悪夢を見ているような気配はなかった。こんなことで彼が落ち着いて眠れるなら、もっと早くからしていればよかった。今までは睡眠薬をすすめたり、体を動かして疲れさせてみたり、と無駄なことをしていたと思う。彼が安心して眠るにはそんな事より、私がそばにいた方がよっぽどよかったのだ。

    貴方が私を呼ぶのなら、いつだって会いにきます。気まぐれに私の名前を呼んだ時も。

    だから必要とするのなら、なんでもいい、どんなことでもいい。絶対に私を呼んで欲しい、と起きた彼に伝えたのだった。眠れないならいつだって今日みたいにしますから、といえばそれからしょっちゅう強請られたりはしたけれど。
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    そらの

    DONEいきなりあぶ空2023展示
    立ち上る紫煙の元を探ってふと、時折匂う、苦味のある香り。それはすれ違った時だったり、隣にいる時だったり、抱き合ったりした時に密かに感じられるものだった。それが何か、解らぬほどボブは子供ではなかった。
    自分にだって覚えはある。一丁前に大人になったと浮き足立った時、つい手を出したものだった。自分には合わずただただ苦しんだだけだったけれど。
    一時だったけれど覚えのあるそれが、時折、ブラッドリーから香るのだ。独特の苦味のある香り───煙草のそれ───が。本人がそれに気づいているのか、それは知らない。言わずにいるだけなのか、言わないつもりでいるのかも、知らない。
    ボブはそれを不思議に思っていた。もう長いと言えるほど生活を共にしているのに、けれどその姿を見た事は一度もない。どこでもだ。ただ感じるのはその匂いだけで、でもその確たる証拠はどこにもなかった。もしかしたら匂い移りしただけかもしれないとも思うが触れるその手からも香るそれがそうとは言わせてくれない。不思議に思うだけで不快に思うことは無いのだから言ってくれればいいのに、とボブは思う。我慢させていたとしたらなんだか申し訳ない。ブラッドリーがボブを自由にさせるように、ボブもブラッドリーの行動を制限したくないのだ。
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    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/ルスマヴェ/お題「歌声」
    わかりづらいですが、段落ごとに時間が進んでます。本当にわかりづらいです。反省してます。
    Sing for me 幸せだと感じる時、聞こえてくるのはいつも彼の歌声だった。
     ブラッドリーは歌が上手い。ピアノも弾ける。彼の父親もそうだった。二人揃って音楽の才能があった。だけどそれをブラッドリーに伝えると、彼はこう答えた。「俺が親父と違うのは、俺はマーヴを惹きつけるために歌ってるってこと。俺の歌声はマーヴのためにあるの」だから同じにしないで、と彼は笑った。

     繋ぎっぱなしのビデオ通話で、かつて僕たちは会話もせず黙って時間を過ごした。ブラッドリーは料理をして、僕は洗濯物を片付けて。お互い画面なんてあまり見ていなかったと思う。自分が映っているかどうかも気にしていなかった。ただ画面上で繋がってさえいれば、二人の時差も距離も忘れてしまった。時々思い出したように画面を見ると、ブラッドリーはナイフや缶切りを持ったまま、同じタイミングで僕の様子を確認しに来る。そして安心したように微笑み、また画面の前から消える。それを何度か繰り返していると、そのうち彼の歌声が聞こえてくる。
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    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/お題「いい子」「悪い子」
    たまらんくらい最高のお題だったのでどちらも使いました
    帰り支度 思えばブラッドリーは、僕の知る限りずっといい子だった。
     大人の助けが必要なほど幼い頃から、ブラッドリーは他者を助けることに躊躇いがなかった。家の中では着替えを手伝ってもらっていた子が、外では道端でひっくり返った虫を草木がある場所まで戻してやり、公園では転んだ子に駆け寄り、大丈夫かと声をかけた。小さい頃は家族や僕以外には少し内気だった坊やは、転んで落ち込んだその子を控えめな態度で誘い、一緒に遊んで回った。そのうちその子は坊やの友達になり、名前と住所を教え合った。
     学校に通い始めてからも、ブラッドリーは何も変わらなかった。忙しいキャロルに代わって保護者面談に出席すると、先生からは驚くほどよく坊やを褒められた。「クラスメイト同士の喧嘩を止めて、仲直りまでさせたんですよ」また、意地悪されている子がいれば常に一緒に行動し、いじめっ子にも怯むことはなかったという。優しくて強い心を持ち、それを家族や僕以外にも分け与えられる子。先生の話を聞きながら、僕は誇らしさで胸がいっぱいだった。僕が坊やを育てたわけでもないのに、すぐにでも彼をハグしたくてたまらなかった。帰宅してキャロルに報告する間、僕の隣で話を聞いていたブラッドリーは嬉しそうに小さな鼻を膨らませていた。褒められるためにしているわけではなかっただろうが、それでも大人2人に口々に讃えられることは、彼にとっても大きな喜びだったろうと思う。
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