それは存在しない筈の記憶…って、出来たら良かったのですけどねぇ。

『お世話します！』

「こひつじくん。」

はい、貴方の子羊です！どうかされましたか、テメノスさん。
…え、呼んでみただけ？そうでしたか、好きなだけ呼んでくれて構いませんからね。僕はここにいますから、今日は絶対に貴方の傍を離れません。だから安心してくださいね、テメノスさん。

「くり…、こひつじくん。」

何でわざわざ言い直されたのですか？そんな悪戯が成功した子供みたいな顔で笑わないでください、テメノスさん。そんな顔されたら、怒るに怒れないじゃないですか…。
え、お昼ご飯はあーんって食べさしてくれと？そうじゃなきゃ食べない、と？僕は別に食べてくださるなら構いませんが、後でテメノスさんが…いえ、何でもありません。もうすぐお昼の時間ですし、準備しますね。だからいっぱいご飯食べてくださいね、テメノスさん！

『落ち着く部屋』

ここはただ眠りに戻るだけの部屋ではあるのだけど、人を招くとあるならば話は別だ。僕は今すぐにここを掃除をしなくてはならない。
机に使ったまま放置していたノートやペンを元の場所に戻し、どうせまた着るだろうと洗濯したまま放り投げていた服をクローゼットに仕舞直して、ぐちゃぐちゃになっていたベットを整え、最後に空気の入れ替えの為に窓を開け放した。
テーブルに花でも飾ろうかと考えて、止めた。明らかに来客を意識してますとの現れと受け取られ、不意討ちを喰らいかねない。

「たまには、君の部屋に行ってみたいです。」

きっかけは、そんなテメノスさんの言葉だった。何処からその様な流れになったかは覚えてはいないが、気が付いたらそんな話になっていた。