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    刺青

    hiko_kougyoku

    DONE乃武金
    「龍の刺青を持つ男」⑤(終)
    ※乃武金と言い張る。
    ※捏造多々あり。かなり自由に書きました。
    ※ いつもと違う雰囲気。
    ※名前付きのモブ有。
    ※流血描写あり。
    龍の刺青を持つ男⑤(終)  6

     電光石火の動きで金勒が迫ってくるのを確かめた乃武綱だったが、しかし次の瞬間、目の前で銀色が閃いたことに気付くと、背筋がぞわりと粟立つのを感じた。金勒が逆手で抜き出した刀を、勢いのままに下方から振り上げたのだ。
     素早い抜刀ができるという逆手持ちの利点が頭をよぎった乃武綱は、返す刀が真っすぐこちらの首を突き刺そうとしていることに気付くと、咄嗟に刀で受けとめた。目の前で小さな火花が散る。速いと思った時には金勒の姿はすでになくなっていた。開けた視界を目の当たりにし、一瞬呆けてしまった顔は直後、背中に冷たいものが走ったところで凍り付いた。
     思考ではなく勘が体を動かした。乃武綱が振り向きざまに刀を水平に構えた瞬間、刀と刀がぶつかった衝撃が掌に伝わってくる。瞬歩で背後に回り込んだ金勒の、頸動脈を狙った突きを防いだのだ。まぐれとも天運とも言える防衛を、眉を顰めることで不快感を示した金勒は、刀をくるりと回して順手に持ち替え、畳みかけるように鋭い斬撃を繰り出す。空気を震わせた、三つの金属音。牽制でしかなかったのか、それら全てが刀身に当たるだけだったものの、瞬きする間もない攻撃に産毛が立ち上がるのを感じた。
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    hiko_kougyoku

    DONE乃武金
    「龍の刺青を持つ男」②
    ※乃武金と言い張る。
    ※捏造多々あり。かなり自由に書きました。
    ※ いつもと違う雰囲気。
    ※名前付きのモブ有。
    ※流血描写あり。
    龍の刺青を持つ男②  3

     夜の帳はとうに降り、多くの人間が寝静まった頃。普段であれば寝酒を嗜む乃武綱だったがこの時ばかりは違い、七番隊舎を出て一番隊舎へと向かっていた。
     昼間の喧騒はどこへ行ったのか、すれ違う人間どころか木々のざわめきすらも聞こえない、厳かな静謐。あると言えば自分が発する足音と、布と布が触れた時の摩擦音。夜は慣れているはずだが、この夜は苦手だ。思いつつもすっかり熱の抜けた空気が肌に染み込み、その冷たさに頭の中が緩やかに研ぎ澄まされてゆくのを実感していると、鮮明になった思考に突如桜達の顔が差し込まれ、口元を大きく歪めた。
     嫌なもんを思い出しちまった……少しでも気分を晴らそうと遠くに目をやると、ぼう、と小さな明かりが目に飛び込んできた。一番隊舎だ。乃武綱は時間が時間ということもありすでに固く閉じられた正門を通り過ぎ、漆喰の塀伝いに進んで周囲をぐるりと回りこむ。そうして裏に設えられた小さな門から敷地内へと入ると、すぐ目の前に隊舎とは別の建物が現れた。
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