月夜
はらずみ
DONE月夜の涙政信おのが理想を成すため邁進し、常に威厳を湛えた若き王。その夢を叶えるべく傍にある剣。
「政」
珍しく表情を曇らせ心痛を抱えた面持ちであった。信はそんな政へ語りかける。だが、返る言葉はなくただ抱きしめられるのみ。いつもの逢瀬で熱を交わす抱擁とは違うものだった。
虐げられた過去と理想の礎として踏みつけた命の重さに苛まれることがたまにある。政は信を目の当たりにし、衝動的に寄り掛かりたくなってしまった。月の光が目に染みた。月の光はそれを癒やしてくれたものだが思い出す切っ掛けにもなるのだ。
「なんかすげえ目が痛えな……」
何故かはわからないが信の目から涙がぼろぼろと零れる。政はそんな信の頭をひたすらに撫で安堵した。 306