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    村雨

    kino_akira_fu

    PROGRESSさめししです。
    恋を知らない獅子神さんに、愛を教える村雨さんのお話。
    時間軸は明確に定まって無いのですが、オバキルからLiA間くらいのイメージで書いてます。今の所……!!

    獅子神さんがモブ(男)と付き合っていた描写があります。
    言葉を尽くす また上手くいかなった。去り行く背中をただ見つめる。何が悪かったか、いつだってわからないまま終わる。強請られたものをプレゼントした。気持ちを告げた。共に時を過ごした。夜だって、幾度も。紡いだ言葉も、紡がれた言葉も甘やかだったはずなのに。あれが、――ではなかったのだろうか。少なくとも、俺は与えていたつもりだった。けれど、きっと、違かったのだ。息苦しくて、鳩尾が痛くて、この場に蹲りたい。別れを告げられこんなにも苦しいというのに。俺が与えていたものは、別の何かだったのだ。
     子供の頃にやった砂場での遊びを思い出す。形はあるはずなのに、決して手には収まらない無数の砂。小さな粒は汗ばんだ手のひらにこびりつくのに、定まった形がなくて決して手に入らない。それでも頑張って、固めて、固めて。綺麗な丸ができて、見て、と渡したら叩き潰された。一瞬で壊れる脆い団子。あの時の俺は何を求めていたのか。ただ、受け取ってもらえるだけでよかったのかもしれない。
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    いちとせ

    DONEししさめ 無自覚に獅子神さんのことが大好きな村雨さんが告白する話。
    誓いは突然に 一日の業務の終わり、カルテの記載をまとめているときに端末が震えた。グループチャットで獅子神が「真経津に頼まれてローストビーフ作ったから食いたい奴は来い」と送ってきていた。「私の分は取り分けておいてくれ」と返信した。
     大学病院の業務量は定時に終わるようにはできていない。そもそも定時まで手術が入っており、その後から病棟業務が始まる。今日も2時間ほどの残業を行う予定だったが、そこから獅子神宅に向かったのではローストビーフは跡形も残っていないだろう。取り分けを頼んではいるが、あの面子の手練手管に獅子神が対抗しきれるかというと恐らく不可能だろう。少なくとも今のところは、だが。幸い病棟患者に大きなトラブルはなくカルテ記載さえ終わればよい。少し急げば予定を繰り上げることができそうだ。一段階情報処理のギアを上げて30分ほど巻いて業務を終えた。後日職場では村雨先生が何らかの連絡を受けた途端、鬼気迫る様子になりタイピング速度も倍になった、もしや彼女ではとやや尾鰭のついた噂が流れたが、誰も真相を確かめようとはしなかった。
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