桜流し
とーい
DONE桜流しの雨という言葉が素敵だなと思い妄想。奪っていくスタイルの雨師🐯さんと桜の花精👒さんとの短い妄想。春驟雨の帳に隠れて――桜流しの雨――そろそろ、起きたらどうだ。
絹のように柔らかな蕾をそうっと雨粒で揺らせば、ようやく、待ち臨んだ時がおとずれる。
「――あ、とらおだぁ」
ほころぶ花のうちで大きなあくびを一つ零した桜の花精のふにゃりとした笑みに、暗色のフードをおろしたローも薄い笑みを返し手を差し伸べた。
起き抜けこそローの懐で二度寝を決め込んでいたが、一夜明け、すっかり目が覚めたらしい。
地上に降りたローがその姿を定位置である小高い丘の上に探していると、遠くから、呼ぶ声が聞こえた。
「おーい、とらお!こっちだ!」
視線を向ければ、桜だけでなく、こぶしに木蓮、つつじ、それに人里から賑やかな声に惹かれてやってきたらしい蓮華に菜の花——春が来た喜びを共に祝う花精達の宴が開かれていた。
2513絹のように柔らかな蕾をそうっと雨粒で揺らせば、ようやく、待ち臨んだ時がおとずれる。
「――あ、とらおだぁ」
ほころぶ花のうちで大きなあくびを一つ零した桜の花精のふにゃりとした笑みに、暗色のフードをおろしたローも薄い笑みを返し手を差し伸べた。
起き抜けこそローの懐で二度寝を決め込んでいたが、一夜明け、すっかり目が覚めたらしい。
地上に降りたローがその姿を定位置である小高い丘の上に探していると、遠くから、呼ぶ声が聞こえた。
「おーい、とらお!こっちだ!」
視線を向ければ、桜だけでなく、こぶしに木蓮、つつじ、それに人里から賑やかな声に惹かれてやってきたらしい蓮華に菜の花——春が来た喜びを共に祝う花精達の宴が開かれていた。
takamura_lmw
DONE桜流しのさめしし、もしくはししさめ。ハッピーエンドです。ほんとなんです。メリバでもないキラッキラのハピエンなんです。信じてください。これがずっと出力できなくてここ一ヶ月他のものをなんも書けてませんでした。桜が散る前に完成して良かったと思うことにします。次はお原稿と、にょたゆりでなれそめを書きたいです。
桜流し 獅子神敬一が死んだ。
四月の二日、桜が散り出す頃のことだった。
村雨にその死を伝えたのは真経津だった。
「——は?」
「死んじゃったんだって。試合には勝ったのに。獅子神さんらしいよね」
真経津は薄く微笑んで言った。「獅子神さん、死んじゃった」と告げたその時も、彼は同じ顔をしていた。
「……いつだ」
「今日。ボク、さっきまで銀行にいたんだ。ゲームじゃなかったんだけど、手続きで。そしたら宇佐美さんが来て教えてくれた。仲が良かったからって」
村雨はどこかぼんやりと真経津の言葉を聞いていた。
「あれは、……獅子神は家族がいないだろう。遺体はどうするんだ」
「雑用係の人たちが連れて帰るって聞いたよ」
「そうか」
「銀行に預けてる遺言書、あるでしょ。時々更新させられる、お葬式とか相続の話とか書いたやつ。獅子神さん、あれに自分が死んだ後は雑用係の人たちにお葬式とか後片付けとか任せるって書いてたみたい。まあ銀行も、事情が分かってる人がお葬式してくれた方が安心だもんね」
22432四月の二日、桜が散り出す頃のことだった。
村雨にその死を伝えたのは真経津だった。
「——は?」
「死んじゃったんだって。試合には勝ったのに。獅子神さんらしいよね」
真経津は薄く微笑んで言った。「獅子神さん、死んじゃった」と告げたその時も、彼は同じ顔をしていた。
「……いつだ」
「今日。ボク、さっきまで銀行にいたんだ。ゲームじゃなかったんだけど、手続きで。そしたら宇佐美さんが来て教えてくれた。仲が良かったからって」
村雨はどこかぼんやりと真経津の言葉を聞いていた。
「あれは、……獅子神は家族がいないだろう。遺体はどうするんだ」
「雑用係の人たちが連れて帰るって聞いたよ」
「そうか」
「銀行に預けてる遺言書、あるでしょ。時々更新させられる、お葬式とか相続の話とか書いたやつ。獅子神さん、あれに自分が死んだ後は雑用係の人たちにお葬式とか後片付けとか任せるって書いてたみたい。まあ銀行も、事情が分かってる人がお葬式してくれた方が安心だもんね」