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    ワイシャツ

    hiromu_mix

    DOODLEファ切で、10.雨よ、やまないで
    「唇に触れた ワイシャツ 濡れた髪」

    両片思いっぽい二人。
    傘の下には太陽が夕暮れの空が突如増えてきた雲で覆われ、暗くなったと思ったら激しく降り出した雨に、ファットガムは空を見上げて一つ舌打ちをする。
    やっと着なれてきたワイシャツが途端に鬱陶しくなって、ネクタイに指をひっかけ緩めながら、ファットガムは近くのカフェに逃げ込んだ。どこにでもあるチェーンのカフェは、ファットガムと同じように雨から逃れようと入って来た客も多くほとんどの席を埋めてしまっていたが、低脂肪の姿なのでどうにか取れた端っこの、窓際のカウンター席を確保して、ファットガムは一つ息を吐く。雨に当たった時間は僅かだ問うのに、濡れた髪からぽたぽたと雨のしずくが落ちた。
    「ついてへんわぁ」
    水と一緒に差し出された暖かなおしぼりで、雨でぬれた顔を拭けばすっきりする。こんなのオッサン臭いと思うが、まあもうオッサンに片足突っ込んでるので今更か。明日もこの姿で居なければいけないので、アイスコーヒーだけ頼んでファットガムは、激しく雨が打ち付ける窓をぼうっと見つめた。スマートフォンを見れば、着信が一件。その名前に唇が緩む。
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