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    伊達

    bocchi_takagi

    PAST龍が如く6の最期のシーンの伊達さんと秋山さんの会話シーン後の伊達さんの話と秋山さんの話。7外伝が出る前に書きたかったので。
    ※2023/4/3 Privatterにアップしていた作品。Pixivにもあります※
    いつかを夢見て 人の居ない、明るすぎない照明がぼんやりと浮かぶ静かな場所で一人、酒を煽る。浅く腰掛けたカウンターの前に人の気配はない。あるのはまだ酒が残っているロックグラスだけだ。
     長いこと刑事をやっているとまあとにかくいろんなことがある。この神室町っていうのは極道が幅をきかせていた場所だから事件なんてのは日常茶飯事だ。特に俺の場合は、桐生というとんでもないやつに関わったせいで異動も、退職も、復職も経験した。警察官の中でも一際異例な存在だろう。
     広島で起きた事件、それからあいつの何より大事な、娘同然である遥に関わる出来事。激闘の末、唯一無二の男は死んだ。大切な人たちを守れるのなら喜んで死んでやるとまで言いのけた。その表情と、頑固な性格を考えたらどう足掻いても、説得を続けても――例え殴り合ったとしても答えが変わらないことは明白だったし、表情一つで察してしまえるほど、俺はあいつと過ごした時間があまりにも長過ぎた。あの場に居合わせたのが俺じゃなかったとしてもきっと未来は変わらなかっただろう。そう考えれば自分がその「最期」を見届ける立会人になったのは良かったのかもしれないが、残され、背負わされたものはあまりにも重かった。
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