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    十六夜

    妖怪ろくろ回し

    MOURNING殺生丸と十六夜*


    「あぁもう、どうしようどうしよう……ごめん殺生丸! 少しだけでいい、ただ抱いてるだけでいいから翡翠を見ておいてくれ!」
     戻ってくると言ったはずの法師さまは戻ってこないし、琥珀は薪割りに行ってしまったし、かごめちゃんも楓さまのところに行っちゃったから。だから少しの間でいい、少しだけ見ておいてくれ!
     とまぁ、つまるところ殺生丸に拒否権などない様子でまくしたてられ、妖怪はやわらかい受け物を退治屋の女から受け取った。
     喃語ばかり口にする赤子のことを知らない訳ではない。珊瑚、琥珀、金と玉の名を持つ娘たちに翡翠。よくもまぁ人間にしては大層な名をつけたものだが、そんなことはどうでもいい。お願い、と赤子を押し付けてきた母親は確かに大忙しらしく、飛来骨を握りしめて家を出て行った。外れに妖怪が出ただとか村人が叫んでいたからだろうか。
    「……解せぬ……」
     請われれば殺生丸は妖怪を始末してもよいとまで思っていたのに、どうしてこうなるのか。
    「あ、殺生丸さま」
    「……」
    「さっき珊瑚さまが妖怪退治だって出て行ったけど……翡翠、こんなところにいたんだ」
    「……やる」
    「だめですよう、せっかく寝てる 2271