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    ご本人

    わび助平

    DONE大学時代出会って一年頃の鈴薪の夜の小話です。
    ミズタマさんのイラストに着想を得て書かせていただきました。
    ※この小話の創作・掲載にあたりましては、ご本人様の承諾を得ております。
    (しまったタイトル考えてなかった大学時代鈴薪です)明かりを落とした部屋の中は、窓から差し込む月明かりにひっそりと照らされていた。月の光が隣で眠る薪の栗色の髪の上で、小さな王冠のような天使の輪のような、そんなちらちらと輝く銀色の輪を描く。その光景は、子どもの頃読んだ本に出てきた海の底で眠る宝物を思い出させた。

    ここは薪の家の客間。並べて敷いた布団に俺と薪がほぼ同時にもぐりこんでもう二時間は経つ。しかし、今夜もなかなか薪に眠りが訪れない。無理もない。
    薪は幼い頃に両親を失った。その傷さえまだ十分に癒えていないというのに、その孤独で小さな背中にはさらに十年間一緒に暮らした養父の裏切りと死と彼が隠していた目をそむけたくなるような真実が追加でのしかかった。俺と出会って間もない頃でさえ両親を失う悪夢にうなされていた薪は、澤村を失ってさらに不安定になった。そして澤村の死後一年近く経つ今でも薪の状態は落ち着かず、不眠や情動不安定をはじめさまざまな不調に悩まされている。
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    kotobuki_enst

    DONE茨の相談に乗ってあげるあんずさんの茨あん。進展しないから落ち込んでたとかそういうわけではないけどご本人からエールをもらえてちょっと浮かれてる茨。
    会話をメインに話を進めようとするのは難しいね……!
    その瞳に焼べるのは「……どうしても仕留めたい案件があるんですけど」
    「うん」
    「自分には難しそうなんですよねぇ。こういう時、あんずさんならどうします?」

     茨の珍しく弱気な発言に、あんずは返事の代わりに向き合っていた雑誌から正面に座る茨へと視線を移した。当の茨はあんずの方は見ておらず、ノートパソコンを見下ろしてキーボードを叩いている。
     夜のCOCCIには茨とあんず以外の客はいない。つい先ほど店員がラストオーダーに注文したコーヒーとカフェラテを運んできて、今はキッチンの奥に引っ込んで店じまいの支度をしているようだった。茨がキーボードを叩く音と遠くでカチャカチャと食器のぶつかる音だけが店内に小さく響いている。二人は四人用のテーブルに荷物を広げて、何か打ち合わせをするわけでもなく各々の片付けるべき業務をそれぞれ進めていた。会話はなく、最後に言葉を交わしたのは「遅くなってきたね。そろそろ切り上げる?」「そうですね。キリの良いところで引き上げましょうか」という一時間ほど前のやりとりであった。結局どちらも進んで荷物を片づけ始めることなく、こうして閉店ギリギリまで店に居座っている。
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