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    戦場

    雑魚田(迫田タト)

    DONE戦場時代、怪我したムリとその横で代わりに剣の手入れしてあげてるトーがただ真面目な会話するだけのトームリ
    (やることやってる関係のつもりだけどそういう要素は皆無)

    ※失望の結果殺意が芽生えるほどのかつてのムリおじのカリスマ性ってほんとなに……?って頭を抱えて唸ってた末の産物なので捏造しかないです
    「起きてるか、ムリナール」
     小さめの医療テントの外から、トーランドは控えめに声を掛けた。予想通りすぐに中で居住まいを正す気配がして、時間を置かずに短く簡潔な返事が返ってくる。
    「ああ」
    「邪魔するぜ」
     一応ひとこと断りを入れてから、トーランドは入り口をそっと手で捲り上げ、なるべく静かに中に足を踏み入れた。
    「調子はどうだい、ムリナールさんよ。だいぶバッサリいかれたって話だが」
     入ってすぐに立ち止まり、トーランドはムリナールに問いかけた。端のほうで椅子に大人しく座っているムリナールの肩口辺りには、包帯がぐるぐると厚く巻き付けられている。
     ウルサス軍の本隊の斥候に徹していたトーランドが後から聞いたところによると、別方面の斥候が見落としていた相手の遊撃隊に部隊の脇腹の隙を突かれ、そこから防衛線が崩れかけたのを後方のムリナールが飛び込んでぎりぎり立て直した、という話だ。相変わらず一人でどうにかできてしまうのが恐ろしいところなのだが、正式に訓練され統率された騎士団などでない以上、彼ほどの不確定要素を含めなければ、相手との圧倒的な練度の差を埋めることは難しい。彼自身が誰よりもはっきりとそれを認識しているため、いつも多少の負傷は数に入れずに暴れ回っているのだが、今回ばかりは流石にそうも言っていられなかったようだ。
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