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    電気

    kotobuki_enst

    DONE初夜失敗した茨あん。据え膳は自分で用意するタイプの茨。「で」は「電気消せばいいですか」の頭文字です。
    下拵えは丁寧に 意外とロマンチックなシチュエーションを選びがちだというのは付き合ってから知ったことだ。告白はホテルの高層階でのディナーの最中だったし、記念日の贈り物は大きな花束。初めてキスをしたのは交際から三ヶ月後に、夜遅くに車で海浜公園に連れていかれたときだった。もし彼との交際に更に先があるのならばどんな女の子でもうっとりと惚けてしまうようなシチュエーションを用意してくるに違いないのだろうと思っていた。
     だから少し油断していた。共同の案件を終えたあとに慰労の名のもと二人きりでディナー——というよりも夕食を兼ねた普通の反省会——を行うのは初めてではなかったし、その会場に彼の家を提案されたのも内食の気分だっただけだろうと考えた。そもそも公私混同を嫌う人でプロデューサーとして顔を合わせるときに恋人としての何かを与えられたこともない。家に呼ばれ彼の手料理に舌鼓を打ちもちろん仕事の反省点や改善点も共有して、まさかそのまましっとりと口付けられベッドに縫い付けられるとは一切考えになかったのである。
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