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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    ポイポイ 51

    いなばリチウム

    ☆こそフォロ

    主肥初夜。
    https://poipiku.com/594323/6821639.html
    ↑これの二人。なんやかんやあって恋仲になった2人の話。うちの主肥は首の傷を見せてくれるのか?いやそもそも致す時に電気消してきます、という話。(理由は色々ある)

    初夜暴発主肥「消せよ」
     そう言われて、なんのことか全然分からなかった。
     夜で、執務室の更に奥にある、俺の寝室で、ベッドの上で。押し倒されてくれた肥前が睨むように俺を見上げている状態だった。
    なんのことか本当に分からなかったので、しばらく考えて、「気配……を?」と返したら舌打ちされた。ベッドの上でしていい顔じゃないんだよな。 そういうところも可愛いと思ってるから、別に今更傷ついたりしないけど。
    「あかりだよ。……これか?」
    「そうだよ~。2回押すと豆電球に、あっ」
     枕元にあったリモコンを手に取った肥前は、俺が言い終わる前に手早くボタンを3回押した。あっという間に視界が真っ暗になる。どうしてそういうことするんだ。
    「おーい。何も見えないんだけど」
    「おれは見える」
    「だろうね」
     ふ、と鼻先で笑われたのが分かった。体は密着しているから、かろうじてどこにいるかは分かるけど。
    「肥前」
    「ん…」
     体をかがめて顔を寄せれば、どうにか位置は違わずに唇を重ねられた。かさついた唇を舌先で舐めると、小さく息をつめる間があってから薄く口が開く。そのまま中に潜り込んで引っ込みかけた舌先を捉えると、くぐもった声が漏れた。
    「……ぅ、ん……っ」
     舌先を舐り、食むように吸い上げると、遠慮がちに伸びた手が俺の袖を掴んだ。手探りでパーカーの裾から手を突っ込む。だぼっとしたシルエットの中が、見た目よりずっと薄くて細いのは見えなくてもわかった。平らな腹に掌を当てて、するりと胸まで撫であげれば、袖を掴む力が強くなる。掌越しに、とっとっとっ、と早い心音が伝わってくる。唇を離して、まだ互いの吐息が届く距離で俺は尋ねた。
    「…いや?」
    「……」
     肥前の手は、俺の袖を掴んだままだけど、振り払うことも押しのけることもしない。
    「もうやめて欲しい?」
     肥前は、本当に嫌なら嫌だと口で言うし、なんなら嫌という前に手が出るタイプなので、そういう意味ではとてもわかりやすい。真っ暗で何も見えないけど、肥前がまだ俺の体の下にいるのが答えだった。本人はふいとそっぽを向いてしまって、跳ねっ毛が俺の鼻先をくすぐったけど。
    「じゃあ電気つけていい?」
    「やめろ」
     それは嫌か~。多少目が慣れてきたとは言え、この暗闇の中でことを進めるの、なかなか難易度が高い。だからといって、このまま健全に寝るつもりはもちろんなかったので、多分ここほっぺたかな?というところに口付けて、たくしあげたパーカーの下に顔を寄せる。
    ちゅ、ちゅ、と音をたてながら胸元から腹の方へ降りていくと、これも抵抗はなかったものの、柔らかい皮膚を強く吸うと、ひゅっと喉が鳴る音が続いた。指先が髪に絡む感触があったけれど、気にせず腰骨の辺りをなぞる。嫌がられてたら俺の毛根が悲鳴をあげていただろう。しかし、下も脱がせようとしてはたと気付く。これ、どうやって脱がせるんだろう。そのまま下にずらすにはきつく、しかしチャック的なものが見当たらない。
    「…っにしてんだよ……」
     あちこち触っていたので、さすがに不審に思ったらしい肥前が身じろいだ。気が変わられては困る、と思うものの、正直に伝える。
    「下、脱がせるの難しい」
     少し間があって、はあ、と深いため息が聞こえたかと思うと、しゅる、と衣擦れの音がして、布地と腰の間に隙間ができた。手探りで引っ張ると、下着とまとめてするりと簡単に脱げる。スキニーだと思ってたけど、どうも違うっぽい。腰のとこでなんか結んでた……? 何も見えないから分かんなかったけど。っていうか今肥前が自分で脱いでくれた……!? なにそれえろいな……見えないのが重ね重ね惜しい。
    「うるせえな」
    「痛っ」
     声に出てたらしくて、怒った声が降ってくると同時に、服から抜いたばかりの足が俺の脇腹を蹴った。本当にひどい。見えないから避けることもできないし。でも、蹴った足はそのまま俺の体を挟み込んでくるから、まだ全力の拒否ではないらしい。でも見えないのは本当に不便というか、困るというか。駄目元で、最後のひと押しをしてみる。
    「ねえ、やっぱ電気さあ」
    「嫌だ」
     いやか~
     即答されてしまい、俺は諦めて手探りでベッドサイドテーブルの引き出しを探った。自分の部屋なのでどこに何を入れてるかくらいは、まあ見えなくても分かる。こういう時のために色々入れておいてよかった!
    「なんだそれ」
     下から怪訝な声がしたけど、再び体を屈めて口づけを落とす。何せ真っ暗なので鼻先のあたりを掠めた気がするけど想定内だ。ちゅ、ちゅ、と何度も口付けて、鼻先から頬、頬から唇に辿り着く。唇を食みながら、俺の腰のあたりを挟み込んだままの足にそっと触れる。爪先から、膝裏、太腿に手を滑らせると、びく、と体が震えたけど蹴りが飛んでくる様子はない。
    「ん、ッ」
     宥めるように口づけを繰り返しながら足を広げさせ、その間に体を押し込む。触れた箇所から緊張が伝わってくるけど、今更止められるわけがない。足の付け根を辿ると、既に熱を持ち始めている中心がぬるりと俺の手を濡らす。俺だけじゃなかった、と安心する気持ち、好きな子に意地悪したい気持ちが拮抗した。
    「すご、もうぬるぬるじゃん」
    「だまれ…っ」
     こわ。でも声は震えてるのでもう気にしないし、視界が暗いのはもういいか、と思った。さっき引き出しからとったチューブの中身を手の上から垂らしていく。
    「ん……っ、ぁ……っ?」
     戸惑うような声と同時に、俺の背中に回った手が、ぎゅっとシャツを強く掴む感触がした。ちゃんと掌とかで温めておけばよかったけど、残念ながらそんな余裕はない。用意していたローションをゆる勃ちあがった性器にぬちぬちと絡ませながら、その下の窄まりをに滑らせていく。
    「っ、な、にして、」
    「何って、ここ慣らさない、と……?」
    「あ、ッ」
     ぐちゅ、と音を立てて中指を埋め込むと、想像よりも抵抗なく飲み込まれていった。柔らかくて熱くて、狭いけれど、指を僅かに動かすだけでぐちゅぐちゅと粘着質な音が立つ。ローションをまとわせてるとは言え、あまりにも難なく指が飲み込まれていった。そっと人差し指も添えてみると、狭い入口さえ抜ければやはりぬるりとした感触だけで咥えこまれてしまう。
    「ひぜ、ん? ここ、すごいんだけど……え、やわらか」
    「あ、あっ、ま、て……んんっ」
     荒い呼吸に合わせて、肉壁がきゅうきゅうと吸い付いてくる感覚がたまらない。体の中心に熱が集まるのがわかった。暗闇の中で、ごくりと息を飲む音がやけに大きく響く。
    「指、やめろ……っぁ、」
     もはや俺の首を絞める勢いで抱きこんでいる肥前の声は近い。でも掠れた声が出る度に腰が揺れて、その動きでさらに奥へと指が入っていくし、柔い内側を擦ってしまう。
    「っは、やく、いれろよ……」
    「はやくって、そんな」
    「入るだろ、なぁ、」
     肥前の言葉通り、二本の指で広げたところはもっと質量を求めて収縮しているけど、俺は慎重に、大事に肥前のこと抱きたいのに。でも、熱い吐息がかかるたびに理性が飛びそうになるし、股間が痛いくらいに膨張しているのも事実だ。
    「じゃ、じゃあ、いい……? 本当に……」
     指をそっと引き抜くと、名残惜しそうに内壁が絡みついてきて、ちゅぽ、と微かに音が鳴った。興奮でおぼつかない手で自分の下着をずらす。あ、ゴム、どこに置いたっけ、と思ったものの、ぐいと引き寄せられて、次の瞬間には熱くて柔らかいぬかるみに包まれていた。
    「ぅあ、ちょ、待って……!」
    「っるせぇ、な……ぁ」
     しっかり腰を挟まれているし、蕩け切ったナカの、指で触れていた場所より奥に飲み込まれて、達してしまわないようにするので精いっぱいだ。先端も、太い幹の部分も熱い肉にきゅうきゅうと締め付けられている。
    「あー……すご、きもちいい……」
    「うぁ……ッ、んんっ……」
     思考もとろりと蕩けそうになるけど、肥前の苦し気な吐息で我に返る。動きたいけど、動いたらもう我慢できない気がする。ふ、ふ、と息を整えながら、なんとか腰を動かさずにいたのに、息が整いきる前に、巻き付いた足がことさら強く俺の腰をぐいぐいと押した。
    「ッ、だめだって、あ、」
     俺の制止を無視して、ぬち、ぬち、と控えめな水音と共に屹立した性器が飲み込まれていく。あたたかくて、やわらかくて、時折きゅうきゅうと締め付けられながら、根元まで包み込まれてしまう。俺の腹にぴったりと密着した太腿は震えていて、はあはあと乱れた呼吸が耳元で聞こえる。
    「は、いった……」
    「っ、しゃ、べんな……っ」
     俺の声は震えていたし、肥前が声を出す度、呼吸に合わせてナカがきゅうと締まるから余計に刺激されて苦しい。首をしっかり抱きこまれているせいもあるけど。
    「肥前、肥前、手離して……」
     むずがるように首を振る肥前の腕をそうっとほどき、ベッドの上に縫い付けるように下ろす。その顔を見降ろしたところで、やっぱり真っ暗なので何も見えないけど、だからこそ声とか音とか、根元まで納めた性器の脈打ちまで響いて聞こえるようだった。
    「肥前、動くから……」
     ゆっくり腰を引くと、離れたくないみたいに内壁が絡みついてくる。中ほどまで抜いてから再び押し込むと、ぐぷぐぷと空気を含んだ音が響いた。
    「ん……んっ、あ」
    「はあ……音すご、」
    「う、るせ……っあ、あッ、んん、ぅ、う」
     途中で口元を覆ったのか、声がくぐもる。聞きたいのに、と思うものの、一度動くともう止められなくて、また腰を引いて、押し込んでをゆっくり繰り返した。その度にじゅぶ、ぐちゅ、と結合部から音が漏れて、俺の荒い息と、肥前のくぐもった声に混ざる。けれど、もっと動いていいかな、と腰をぐいと押し付けると、ゴツ、と鈍い音がして、「いっ……て」と掠れた声が下から聞こえた。
    「え、ごめん、もっとゆっくりがいい……?」
    「っちげえよ、頭……」
     あたま? そういえば今の音なんだろう、と身を屈め、肥前の頭あたりに手を伸ばすと、こつん、と硬いものに当たる。夢中になっている間に、体がずり上がっていたらしく、すぐそこにヘッドボードがあった。気付かなかったけど、見えないんだからしょうがない。もう少し後ろに下がった方がいいかな、とまた手探りで位置を確かめると、今度は別のものに手が当たった。ヘッドボードよりはるかに小さくて、なんだか覚えがある触り心地だ。
    「あ、」
     肥前に取り上げられてどこかにいったと思っていたリモコンだった。俺はほとんど無意識に、ボタンに手をかけた、が。
    「ッ、おい」
     汗ばんだ手が俺の腕を掴み、同時にぐいと引き寄せられる。油断していたせいでバランスを崩し、思いきり覆いかぶさってしまった。ぐちゅっ、と音を立てて、抜けかけていた性器が落ちるように狭い孔の奥を突く。
    「っ!~~~っ、ん」
     声にならない声はどっちだったか分からない。ただ、前触れなく激しく肉筒を扱かれて、倒れ込んだ先は汗ばんでしっとりとした肌で、肥前の吐息はすぐ近くで、それで、我慢できなかった。
    「ぁっ、あ、」
    「ん……っ!」
    「ま、って、あ、あっ」
     俺の情けない声と共に、腰が震え、脈打つ肉からどくどくと溢れていくのが分かる。その間にも柔らかな肉が蠢き、締め付けてきて、射精は長く続いた。頭の芯が痺れそうなほどに気持ち良くて、しっかり注ぎ込もうとするように腰を何度も押し付けるのを抑えられない。
    「ぁ……ふ、ぁ……」
    「はあ、は……はぁ……」
    「ん、ぅ……」
     体の下で、肥前がぶる、と身震いする。ようやく出し切ると、今度は脱力感と羞恥心に襲われた。中に出してしまった。しかも、びっくりするほど早く。
    「ひ、ひぜん、ごめん……」
    「ぁ……あ?」
     あかりつけていい? と尋ねるものの、力なく「やめろ」と返される。そうっと腰を引くと、ぬぷ、と間抜けな音がした。
    「はあ……」
     肥前が深く息を吐き出す。怒っているような、呆れているような、どちらともつかないため息だったが、「風呂、借りるからな」と言い残して起き上がる気配がして、俺は一人、暗闇に残されたのだった。


    ***


     風呂場の方からしばらくシャワーの音が聞こえてきていたけど、その間も俺はベッドから動けず、かろうじて下履きは履いたものの、すっかり身支度を整えた肥前が戻ってきて明かりをつけた時にはもうベッドの上でまんじゅうのように布団にくるまっていた。ぎし、とベッドが軋んで、肥前が布団に潜り込んでくる。
    「……おい」
    「そっとしておいて……すごいショック受けてるから今……」
     もそもそと喋る俺を、肥前はまた鼻で笑う。それから少しだけ沈黙があって、次に口を開いたのもやっぱり肥前だった。
    「気にするほどか?」
    「気にするよ……俺、ほんとはあんな早漏じゃないから……」
    「へぇ?」
     早漏じゃないし、初めてだから俺が色々やってあげようと思ってたし、そもそも最初にあかり消されちゃうとは思わなかったし……と呟いているうちに、段々と恥ずかしくなってきた。俺はもう少しスマートにやれる男だと思っていたのに、肥前相手だとなんだか全部がめちゃくちゃで情けない。なのに、しっかり俺の懐に潜り込んできた肥前はなんだか機嫌がよさそうだった。
    「それじゃ、次はせいぜい頑張れよ」
    「またそんな面白がって……え?」
     がばっ、と起き上がると、布団が持ち上がって途端に眉を顰められる。枕を引き寄せて、もうすっかり寝るつもりの肥前に、俺は恐る恐る言った。
    「次がある…ってこと?」
    「うるせぇ。寝ろ」
    「っていうか、肥前自分でなんか……慣らしてきたよね?」
    「寝ろ」
    「抱かれる準備してきてくれた……ってこと? それってさあ」
    「寝ろ」

     肥前はそれ以上もう何も返してくれなかったし、翌朝目が覚めた時にはもう部屋に戻ってしまったから寂しかったけど、その日一日、妙に浮かれた気分で仕事をこなせたのだった。


    おわり?
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    作者からのリプライ

    いなばリチウム

    自主練https://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
    1820

    おすすめ作品

    Norskskogkatta

    過去のを晒す主こりゅ/さにこりゅ
    リクエスト企画で書いたもの
    小竜が気になり出す主とそれに気づく小竜
    夏から始まる


    燦々と輝く太陽が真上に陣取っているせいで首に巻いたタオルがすでにびっしょりと濡れている。襟足から汗がしたたる感覚にため息が出た。
    今は本丸の広い畑を今日の畑当番と一緒にいじっている。燭台切ことみっちゃんはお昼ご飯の支度があるから先に本丸にもどっていって、今はもう一振りと片付けに精を出しながらぼんやり考えていたことが口をついた。
    「小竜って畑仕事嫌がらないんだね」
    長船派のジャージに戦装束のときのように大きなマントを纏った姿に畑仕事を嫌がらない小竜に意外だなと思う。大抵の刀には自分たちの仕事じゃないと不評な畑仕事だけど小竜からは馬当番ほど文句らしき物を言われた記憶が無い。
    「いやいや、これで実は農家にあったこともあるんだよ?」
    これなんかよくできてると思うよ、と野菜を差し出される。まっかなトマトだ。つやつやして太陽の光を反射するくらい身がぱんぱんにはっている。一口囓るとじゅわっとしたたる果汁は酸味と甘さと、ちょっとの青臭さがあって我こそはトマトである!と言っていそうだ。
    「おいしい!」
    「だろうっ!」
    手の中の赤い実と同じくらい弾けた笑顔にとすっと胸に何かが刺さった気が 3868

    Norskskogkatta

    過去のを晒すさにちょも
    リクエスト企画でかいたもの
    霊力のあれやそれやで獣化してしまったちょもさんが部屋を抜け出してたのでそれを迎えに行く主
    白銀に包まれて


    共寝したはずの山鳥毛がいない。
    審神者は身体を起こして寝ぼけた頭を掻く。シーツはまだ暖かい。
    いつもなら山鳥毛が先に目を覚まし、なにが面白いのか寝顔を見つめる赤い瞳と目が合うはずなのにそれがない。
    「どこいったんだ……?」
    おはよう小鳥、とたおやかな手で撫でられるような声で心穏やかに目覚めることもなければ、背中の引っ掻き傷を見て口元を大きな手で覆って赤面する山鳥毛を見られないのも味気ない。
    「迎えに行くか」
    寝起きのまま部屋を後にする。向かう先は恋刀の身内の部屋だ。
    「おはよう南泉。山鳥毛はいるな」
    「あ、主……」
    自身の部屋の前で障子を背に正座をしている南泉がいた。寝起きなのか寝癖がついたまま、困惑といった表情で審神者を見上げでいた。
    「今は部屋に通せない、にゃ」
    「主たる俺の命でもか」
    うぐっと言葉を詰まらせる南泉にはぁとため息をついて後頭部を掻く。
    「俺が勝手に入るなら問題ないな」
    「え、あっちょ、主!」
    横をすり抜けてすぱんと障子を開け放つと部屋には白銀の翼が蹲っていた。
    「山鳥毛、迎えにきたぞ」
    「……小鳥」
    のそりと翼から顔を覗かせた山鳥毛は髪型を整えて 2059

    Norskskogkatta

    過去のを晒す主くり
    リクエスト企画で書いたもの
    ちいさい主に気に入られてなんだかんだいいながら面倒を見てたら、成長後押せ押せでくる主にたじたじになる大倶利伽羅
    とたとたとた、と軽い足音に微睡んでいた意識が浮上する。これから来るであろう小さな嵐を思って知らずため息が出た。
    枕がわりにしていた座布団から頭を持ち上げたのと勢いよく部屋の障子が開け放たれたのはほぼ同時で逃げ遅れたと悟ったときには腹部に衝撃が加わっていた。
    「から! りゅうみせて!」
    腹に乗り上げながらまあるい瞳を輝かせる男の子どもがこの本丸の審神者だ。
    「まず降りろ」
    「はーい」
    咎めるように低い声を出しても軽く調子で返事が返ってきた。
    狛犬のように行儀よく座った審神者に耳と尻尾の幻覚を見ながら身体を起こす。
    「勉強は終わったのか」
    「おわった! くにがからのところ行っていいっていった!」
    くにと言うのは初期刀の山姥切で、主の教育もしている。午前中は勉強の時間で午後からが審神者の仕事をするというのがこの本丸のあり方だった。
    この本丸に顕現してから何故だか懐かれ、暇があれば雛のように後を追われ、馴れ合うつもりはないと突き離してもうん!と元気よく返事をするだけでどこまでもついて来る。
    最初は隠れたりもしてみたが短刀かと言いたくなるほどの偵察であっさり見つかるのでただの徒労だった。
    大人し 1811

    Norskskogkatta

    過去のを晒すさに(→)←ちょも
    山鳥毛のピアスに目が行く審神者
    最近どうも気になることがある。気になることは突き詰めておきたい性分故か、見入ってしまっていた。
    「どうした、小鳥」
     一文字一家の長であるというこの刀は、顕現したばかりだが近侍としての能力全般に長けており気づけば持ち回りだった近侍の任が固定になった。
     一日の大半を一緒に過ごすようになって、つい目を引かれてしまうようになったのはいつからだったか。特に隠すことでもないので、問いかけに応えることにした。
    「ピアスが気になって」
    「この巣には装飾品を身につけているものは少なくないと思うが」
     言われてみれば確かにと気づく。80振りを越えた本丸内では趣向を凝らした戦装束をまとって顕現される。その中には当然のように現代の装飾品を身につけている刀もいて、大分親しみやすい形でいるのだなと妙に感心した記憶がある。たまにやれ片方落としただの金具が壊れただのというちょっとした騒動が起こることがあるのだが、それはまあおいておく。
     さて、ではなぜ山鳥毛にかぎってやたらと気になるのかと首を傾げていると、ずいと身を乗り出し耳元でささやかれた。
    「小鳥は私のことが気になっているのかな?」
    「あー……?」
    ちょっと 1374

    Norskskogkatta

    供養主くり
    極になって柔らかくなった大倶利伽羅に宣戦布告する片想いしてる主
    ポーカーフェイスの君にキスをしよう


    「大倶利伽羅」

    ひとつ呼ぶ。それだけで君は振り向いて、こちらを見てくれる。
    それだけでどうしようもなく締め付けられる胸が煩わしくて、ずたずたに切り裂かれてしまえとも思う。

    「なんだ」

    いつもと変わらぬ表情で、そよ風のように耳馴染みの良い声がこたえる。初めて顔を合わせた時より幾分も優しい声音に勘違いをしそうになる。
    真っ直ぐ見つめる君に純真な心で対面できなくなったのはいつからだったっけ、と考えてはやめてを繰り返す。
    君はこちらのことをなんとも思っていないのだろう。一人で勝手に出て行こうとした時は愛想を尽かされたか、それとも気づかれたのかと膝から力が抜け落ちそうになったが、4日後に帰ってきた姿に安堵した。
    だから、審神者としては認めてくれているのだろう。
    年々距離が縮まっているんじゃないかと錯覚させるような台詞をくれる彼が、とうとう跪座までして挨拶をくれた。泣くかと思った。
    自分はそれに、頼りにしていると答えた。模範的な返しだろう。私情を挟まないように、審神者であることを心がけて生きてきた。

    だけど、やっぱり俺は人間で。
    生きている限り希望や 1288

    Norskskogkatta

    供養主くり

    おじさま審神者と猫耳尻尾が生えた大倶利伽羅のいちゃいちゃ
    猫の日にかいたもの
    大倶利伽羅が猫になった。
    完璧な猫ではなく、耳と尾だけを後付けしたような姿である。朝一番にその姿を見た審神者は不覚にも可愛らしいと思ってしまったのだった。

    一日も終わり、ようやっと二人の時間となった審神者の寝室。
    むっすりと感情をあらわにしているのが珍しい。苛立たしげにシーツをたたきつける濃い毛色の尾がさらに彼の不機嫌さを示しているが、どうにも異常事態だというのに微笑ましく思ってしまう。

    「……おい、いつまで笑ってる」
    「わらってないですよ」

    じろりと刺すような視線が飛んできて、あわてて体の前で手を振ってみるがどうだか、と吐き捨てられてそっぽを向かれてしまった。これは本格的に臍を曲げられてしまう前に対処をしなければならないな、と審神者は眉を下げた。
    といっても、不具合を報告した政府からは、毎年この日によくあるバグだからと真面目に取り合ってはもらえなかった。回答としては次の日になれば自然と治っているというなんとも根拠のないもので、不安になった審神者は手当たり次第に連絡の付く仲間達に聞いてみた。しかし彼ら、彼女らからの返事も政府からの回答と似たり寄ったりで心配するほどではないと言われ 2216

    Norskskogkatta

    供養さにちょも
    桃を剥いてたべるだけのさにちょも
    厨に行くと珍しい姿があった。
    主が桃を剥いていたのだ。力加減を間違えれば潰れてしまう柔い果実を包むように持って包丁で少しだけ歯を立て慣れた手付きで剥いている。
    あっという間に白くなった桃が切り分けられていく。
    「ほれ口開けろ」
    「あ、ああ頂こう」
    意外な手際の良さに見惚れていると、桃のひとつを差し出される。促されるまま口元に持ってこられた果肉を頬張ると軽く咀嚼しただけでじゅわりと果汁が溢れ出す。
    「んっ!」
    「美味いか」
    溺れそうなほどの果汁を飲み込んでからうなづいて残りの果肉を味わう。甘く香りの濃いそれはとても美味だった。
    「ならよかった。ほら」
    「ん、」
    主も桃を頬張りながらまたひとつ差し出され、そのまま口に迎え入れる。美味い。
    「これが最後だな」
    「もうないのか」
    「一個しか買わなかったからな」
    そう言う主に今更になって本丸の若鳥たちに申し訳なくなってきた。
    「まあ共犯だ」
    「君はまたそう言うものの言い方を……」
    「でもまあ、らしくないこともしてみるもんだな」
    片端だけ口を吊り上げて笑う主に嫌な予感がする。
    「雛鳥に餌やってるみたいで楽しかったぜ」
    「…………わすれてくれ」
    差し 588

    Norskskogkatta

    供養主くり
    伊達組にほのぼのと見守られながらのおやつタイム
    伊達組とおやつ


     ずんだにおはぎに色とりどりのフルーツがのったタルト、そして一等涼しげな夏蜜柑の寒天がちゃぶ台を賑わせる。
     今日は伊達の四振りにおよばれしてのおやつタイムとなった。
     燭台切特製のずんだに意外とグルメな鶴丸の選んできた人気店のおはぎ、太鼓鐘の飾りのようにきらきらと光を反射するフルーツののったタルトはどれも疲れた身体に染みるほどおいしいものだった。
     もっと言えば刀剣男士達とこうしてゆっくり話ができるのが何よりの休息に思う。
     本丸内での面白エピソードや新しく育て始めた野菜のこと、馬で遠乗りに出かけたこと、新入りが誰それと仲良くなったことなど部屋にこもることが多い分、彼らが話してくれる話題はどれも新鮮で興味が尽きない。
     うん、うんと相槌を打ちながら、時折質問をして会話を楽しんでいると、燭台切がそういえばと脈絡無くきりだした。
    「主くんって伽羅ちゃんに甘いよね」
     それぞれもってきてくれたものに舌鼓をうって、寒天に手を着ける前にお茶を口に含んだ瞬間、唐突に投げられた豪速球にあやうく吹きかけた。さっきまで次の出陣先ではなんて少し真面目な話になりかけていただけに衝撃がす 2548