airinpeche
DONE藍燐 しと打ててとて お互いの事務所間にあるレスティングルームでは、会おう、と示し合わさずとも遭遇することがままある。今日も、呼び出しをくった帰りに隅のクッションに身を投げ出してだらけていると、同じく事務所帰りらしい藍良が俺を見つけてぴこぴこと走り寄ってきた。今日はソロで外部のラジオにゲスト出演するそうだから、先達か、例のプロデューサーにアドバイスでも求めていたのかもしれない。
寝転んだままスマホを懐へ仕舞い迎えてやると、嬉しそうに隣へ座る。わざわざ同じクッションを選んで。ここで会うのなんて数え飽きるほどというのに、よくもまあ新鮮に喜べるものだ。自分も似たようなものだし、からかう気は起こらないのだけど。
「お兄さん、ひとり? 暇ならごはん行こーよ」
2407寝転んだままスマホを懐へ仕舞い迎えてやると、嬉しそうに隣へ座る。わざわざ同じクッションを選んで。ここで会うのなんて数え飽きるほどというのに、よくもまあ新鮮に喜べるものだ。自分も似たようなものだし、からかう気は起こらないのだけど。
「お兄さん、ひとり? 暇ならごはん行こーよ」
airinpeche
DONE藍燐 うれしきもの 共有スペースから一枚の戸で隔たれた異空間。映像と音響に浸る為の防音設備。逢引には恰好のシチュエーションだというのに、巨大な液晶は平凡なバラエティを映している。内容は、出演者の幼少期はどうだっただの、今の道に進むきっかけはいつ得ただの。
ありきたりで、つまりは需要の褪せない話題だ。隣の少年も大きな目をきらきらさせて食いついている。誰の言葉にも真剣に耳を傾けているけれど、特に、つい先日引退したアイドルがなにか喋るたび、なにくれと掠れた声で感嘆符を発していた。
場面変わっておたよりコーナー。活力をもらうモノはなんですか。食品、映画、趣味への没頭に、ペットや友人との素朴な時間。銘々が答えを上げるなか、目当てのアイドルがとある個人店を挙げる。
4584ありきたりで、つまりは需要の褪せない話題だ。隣の少年も大きな目をきらきらさせて食いついている。誰の言葉にも真剣に耳を傾けているけれど、特に、つい先日引退したアイドルがなにか喋るたび、なにくれと掠れた声で感嘆符を発していた。
場面変わっておたよりコーナー。活力をもらうモノはなんですか。食品、映画、趣味への没頭に、ペットや友人との素朴な時間。銘々が答えを上げるなか、目当てのアイドルがとある個人店を挙げる。
airinpeche
DONE藍燐 芳しき人「ツイてねえなあ、まったく」
返事はない。誰に宛てたものでもないので、落胆もなかった。少しは落ち着くだろうかと鎖骨のあたりを数度叩いてみても、動悸の収まる様子もない。タッピング療法がアルコールの分解に繋がるわけもなく、早々に腕はソファの外へ投げ出した。
燐音がふらつく足で寮まで帰り着き、ひと気のないブックルームに籠もり始めてから、既に幾ばくかの時が過ぎている。良い子の就寝時間だって超えているし、同室の二人は今頃夢の中だろう。
「どうせ飲むなら楽しい酒を、つって。あちらさんも、そろそろお開きの時間かねェ」
虚空に向けて嘆息を一つ。降りてくる息はどうにも酒臭い。大半が未成年の寮にこれを持ち帰りたくはなかったけれど、副所長サマ直々に野宿を禁じられているし、ホテルの手配も億劫で、合鍵はあっても家主不在のニキ宅で休む気にもならず。必然、馴染み深いブックルームを頼ったのだった。
6061返事はない。誰に宛てたものでもないので、落胆もなかった。少しは落ち着くだろうかと鎖骨のあたりを数度叩いてみても、動悸の収まる様子もない。タッピング療法がアルコールの分解に繋がるわけもなく、早々に腕はソファの外へ投げ出した。
燐音がふらつく足で寮まで帰り着き、ひと気のないブックルームに籠もり始めてから、既に幾ばくかの時が過ぎている。良い子の就寝時間だって超えているし、同室の二人は今頃夢の中だろう。
「どうせ飲むなら楽しい酒を、つって。あちらさんも、そろそろお開きの時間かねェ」
虚空に向けて嘆息を一つ。降りてくる息はどうにも酒臭い。大半が未成年の寮にこれを持ち帰りたくはなかったけれど、副所長サマ直々に野宿を禁じられているし、ホテルの手配も億劫で、合鍵はあっても家主不在のニキ宅で休む気にもならず。必然、馴染み深いブックルームを頼ったのだった。
airinpeche
MAIKING藍燐 藍←燐1
「ねェ、ヒロくんもしっかりしてきたしさ。燐音先輩も、そろそろ自分を優先したっていいんじゃない?」
「燐音くんはいつでも自由気ままにやってますゥ」
「あー、ちがくて、私生活をね? ファンへの隠し事は増えちゃうけどさ、恋、してみるとか、どう」
「どうって? アイドルは恋愛禁止なんじゃねェの」
「そうだけど。でも、どきどきするのも大切じゃない? おれたちはファンと一緒に楽しんだり、誘惑したりがお仕事でしょ。私生活が充実してたら、燐音先輩はもっともっとすごいアイドルになるでしょ。おれはそれが見てみたいなァって」
「藍ちゃんは魅力的な俺っちを堪能したいの?」
「うん。だっておれ、アイドルみんなのファンだもん。計算とか、演技とかの枠を超えて輝く燐音先輩も見てみたいよ」
3398「ねェ、ヒロくんもしっかりしてきたしさ。燐音先輩も、そろそろ自分を優先したっていいんじゃない?」
「燐音くんはいつでも自由気ままにやってますゥ」
「あー、ちがくて、私生活をね? ファンへの隠し事は増えちゃうけどさ、恋、してみるとか、どう」
「どうって? アイドルは恋愛禁止なんじゃねェの」
「そうだけど。でも、どきどきするのも大切じゃない? おれたちはファンと一緒に楽しんだり、誘惑したりがお仕事でしょ。私生活が充実してたら、燐音先輩はもっともっとすごいアイドルになるでしょ。おれはそれが見てみたいなァって」
「藍ちゃんは魅力的な俺っちを堪能したいの?」
「うん。だっておれ、アイドルみんなのファンだもん。計算とか、演技とかの枠を超えて輝く燐音先輩も見てみたいよ」
airinpeche
MAIKING藍燐パロ 観用少女、プランツドール。時には観用少年。彼らの糧は、あたたかなミルクに、時折与う砂糖菓子。それから、なにより大切なのは──
「ほら、藍良。夕食にしよう」
眺めていた絵本を閉じた小さな手を取りエスコートする。ソファに横並びでというのが、食事時の定位置だ。限らず室内では大抵隣り合っているのだけど、この時間は特に身を寄せ合っている。
青磁の一点模様が特徴のティーカップに温めたなみなみミルクをたたえ、甘えてくる子に飲ませてやるのが日に三度。朝、目覚めてからと、入浴後に着替えをしてやるのが日に二度。仕事の息抜きと称して、髪や肌の手入れをしてやるのが何度か。出会いの日に見た藍色の衣装がよく似合っていたからと、安直に藍良と名付けて、そんな生活を始めてから四ヶ月あまり。
1250「ほら、藍良。夕食にしよう」
眺めていた絵本を閉じた小さな手を取りエスコートする。ソファに横並びでというのが、食事時の定位置だ。限らず室内では大抵隣り合っているのだけど、この時間は特に身を寄せ合っている。
青磁の一点模様が特徴のティーカップに温めたなみなみミルクをたたえ、甘えてくる子に飲ませてやるのが日に三度。朝、目覚めてからと、入浴後に着替えをしてやるのが日に二度。仕事の息抜きと称して、髪や肌の手入れをしてやるのが何度か。出会いの日に見た藍色の衣装がよく似合っていたからと、安直に藍良と名付けて、そんな生活を始めてから四ヶ月あまり。
airinpeche
MOURNING藍燐 没 待ち合わせ場所の燐音先輩は目立つ。きれいな赤髪を帽子に隠しても、シンプルな服装でもだ。装飾がないぶん、スタイルの良さが際立つんだろう。本人も自覚してるから、できるだけ壁際で縮こまってるんだけど、それが余計に人目を引いてる。そもそも一人にしたくないなら、星奏館から一緒に出てくれば済む話なんだけど。
でも、おれを待っててくれる燐音先輩ってすっごくきれいなのだ。目を伏せて、ちょっと退屈そうに手元を見つめて。ついカメラを向けたくなるそんな人が、たぶん、そうしてるあいだはおれのことを考えてくれている。そんなの、きらきらして見えるに決まってる。このほんのちょっとの時間は、おれだけの特別なのだ。
メインストリートからはずれた隅っこに姿を見つけて立ち止まる。おそろいで買ったUVカットのサングラスに、
1239でも、おれを待っててくれる燐音先輩ってすっごくきれいなのだ。目を伏せて、ちょっと退屈そうに手元を見つめて。ついカメラを向けたくなるそんな人が、たぶん、そうしてるあいだはおれのことを考えてくれている。そんなの、きらきらして見えるに決まってる。このほんのちょっとの時間は、おれだけの特別なのだ。
メインストリートからはずれた隅っこに姿を見つけて立ち止まる。おそろいで買ったUVカットのサングラスに、
airinpeche
MOURNING藍燐 没「お前死んでも寺へはやらぬ 焼いて粉にして酒で飲む」の話
二人暮らしには少々広いリビンクのソファで、片方は酒を煽り、片方はストローでソフトドリンクを吸い上げながらドラマに集中しきっている。原作アリの悲恋モノで、彼氏だけが死んで終わるやつ。燐音の主演作品だ。
結末は藍良も読んで知っているから、生きてるあんたを横に置いて見たい、という要望を聞いている最中だった。リアルタイムは難しいからと、毎週、録画したのを二人で眺めている。次回予告まで堪能してから、生きてるよね、ここにいるもんね? と安心したがる藍良にあちこちを揉まれるまでが恒例だった。
そういえば。アルコールでゆるんだ思考を巡らせる。死別の詩で、情念深いものがあったはず。このドラマはそこまでの執念を描いてはいないけれど。
1940二人暮らしには少々広いリビンクのソファで、片方は酒を煽り、片方はストローでソフトドリンクを吸い上げながらドラマに集中しきっている。原作アリの悲恋モノで、彼氏だけが死んで終わるやつ。燐音の主演作品だ。
結末は藍良も読んで知っているから、生きてるあんたを横に置いて見たい、という要望を聞いている最中だった。リアルタイムは難しいからと、毎週、録画したのを二人で眺めている。次回予告まで堪能してから、生きてるよね、ここにいるもんね? と安心したがる藍良にあちこちを揉まれるまでが恒例だった。
そういえば。アルコールでゆるんだ思考を巡らせる。死別の詩で、情念深いものがあったはず。このドラマはそこまでの執念を描いてはいないけれど。
airinpeche
DONE藍燐 果報に愛念2024.05.29
空気が揺れている。なにか音がする。それに誘われるまま瞼を上げると、夕陽が淡い金色を輝かせている。
「はぇ」
間抜けな音が出た。眼前にほとんど見る機会のない光景があったからだ。寝起きで油断したのと見とれたせいで、つい口がゆるんでしまった。
「燐音先輩? 起きたの?」
咄嗟にもう一度眠ったふりをする。どうしてってそりゃあ、この時間の終わってしまうのが惜しいから。
さっき見上げたのは少年のおとがいで、俺を呼ぶ声だってよく知っている。寝かせられている暖かいのは藍良の腿だった。おまけに、頭まで優しく撫でるサービス付き。さっき聞こえたのは鼻歌だろうか。やけに機嫌が良さそうだった。
「ん〜? あれェ、いま声がしたのに……?」
869空気が揺れている。なにか音がする。それに誘われるまま瞼を上げると、夕陽が淡い金色を輝かせている。
「はぇ」
間抜けな音が出た。眼前にほとんど見る機会のない光景があったからだ。寝起きで油断したのと見とれたせいで、つい口がゆるんでしまった。
「燐音先輩? 起きたの?」
咄嗟にもう一度眠ったふりをする。どうしてってそりゃあ、この時間の終わってしまうのが惜しいから。
さっき見上げたのは少年のおとがいで、俺を呼ぶ声だってよく知っている。寝かせられている暖かいのは藍良の腿だった。おまけに、頭まで優しく撫でるサービス付き。さっき聞こえたのは鼻歌だろうか。やけに機嫌が良さそうだった。
「ん〜? あれェ、いま声がしたのに……?」
airinpeche
MEMO藍燐といろいろDom/Subユニバースパロ含まれるもの
メイン
藍燐 後天性Dom×Sub
ちょっと
巽ひめ SwitchSub×Dom
ニキマヨ Dom×SwitchSub
「燐音先輩、おれ、ほかのひととPlayしてきたって浮気なんて思わないからね」
「なに? 急に。俺っちべつに欲求不満じゃありませんけど〜」
「……でも、必要なことだって。本能的なものだから、がまんしすぎるとよくないって……聞いたよ」
「心配どうもォ。まじで平気だよ。燐音くん我慢は得意なの」
「燐音先輩が我慢強いのは知ってるけど……つらくなるまえにクリニックいってね? お医者さんに通いづらいなら、マヨさんがいいお店紹介してくれるって……」
「……なんだよ、さっきから」
「へ?」
「よそでPlayしろって……俺の欲を他人に預けろって? どういう意味かわかってんの」
2173メイン
藍燐 後天性Dom×Sub
ちょっと
巽ひめ SwitchSub×Dom
ニキマヨ Dom×SwitchSub
「燐音先輩、おれ、ほかのひととPlayしてきたって浮気なんて思わないからね」
「なに? 急に。俺っちべつに欲求不満じゃありませんけど〜」
「……でも、必要なことだって。本能的なものだから、がまんしすぎるとよくないって……聞いたよ」
「心配どうもォ。まじで平気だよ。燐音くん我慢は得意なの」
「燐音先輩が我慢強いのは知ってるけど……つらくなるまえにクリニックいってね? お医者さんに通いづらいなら、マヨさんがいいお店紹介してくれるって……」
「……なんだよ、さっきから」
「へ?」
「よそでPlayしろって……俺の欲を他人に預けろって? どういう意味かわかってんの」