Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    山椒魚

    DONE邦訳第2巻以降の内容が大きく関わってくるおはなしです。
    したがって、ネタバレが大いにありますのでご注意ください。

    以下ネタバレを含む内容紹介。

    日月露華芝の身体で「絶世きゅうり」を名乗っていた沈清秋を振り返る、主に洛冰河視点の物語。タイトルのポップな雰囲気はラベル詐欺のようなものです。他に思いつかなかったのでご勘弁ください。
    魔王陛下はきゅうりに夢中 それは、洛冰河と共に街歩きをしていた時のこと。
     少し喉でも潤そうかと、通り沿いにある店が外に出している腰掛けを借り、お茶と一緒に注文した甘いものを摘んでいたときの事だった。
     街の賑わいなどについて他愛もない話をしながら、何とはなしに通りを眺めていると、両脇に出店が立ち並ぶ大通りの人混みの中をくぐり抜けながら、幼い子どもたちが歓声をあげて走ってくる姿が見えた。
     兄妹なのだろう。彼らの顔立ちはよく似ており、上二人の兄たちが、少し歳の離れた弟と妹の周りをケラケラと笑いながらぐるぐると走り回っている。弟と妹は一緒に手をつなぎ、近くに来た兄を掴まえようと、これまたキャッキャと楽しそうに駆け回っていた。
     その一団は、しばらく沈清秋の眼の前でじゃれ合っていたが、やがて下の弟がふらりと大人にぶつかって叱られると、上の兄が「ごめんなさい」と頭を下げて、今度は皆で手をつないで家があると思われる方角へと走り去って行った。
    12496

    山椒魚

    DONEやっぱりバレンタインとホワイトデーはセットでしょ。両想いなんだし!ってことでシリーズものと化していますが、この話だけでも読めるようになっています。

    ※:※:※:※:※

    邦訳分冊版の連載を追いかけ中。(現在連載50巻目 第20話の段階)
    自力でに翻訳はできていないため、先の展開は知らない状態です。何か勘違いがあってもぬるく見逃してください。
    情人節の贈りもの 〜白色情人節に贈るもの〜 白色情人節。
     それは日本で言うところのホワイトデー。
     元々我が国には無かったイベントだが、何となく日本から持ち込まれた文化のため、やる奴はやるけどやらない奴はやらない程度のイベントだ。情人節ほどやらなきゃいけない感は無い。
     そもそも我が国では女性からプレゼントを貰うなど誕生日くらいのもので、もっぱら男から本命の女性に というのが一般的だ。その根底には、女性にお金を使わせないという暗黙のルールがあるので、白色を取り入れたとしても男が女性に贈り物をする回数が増えるだけ。まぁよほどラブラブならば贈り合ったりもするようだけどね。
     というわけで、前世での俺の情人節絡みの思い出と言えば、妹に贈られた菓子をお裾分けで貰ったとか、兄達が本命に最上の物を贈るために開催した試食会への参加だとか、つまり自分とは全く関係が無いエピソードばかりだった。こちらの世界にもそんな習慣は無かったため、これら呪われたイベント(ぼっちにとって情人節と5月の我愛你の日と七夕節は特に地獄!)とは一生無縁かと思っていた。いたのだ・・・が。
    6879

    山椒魚

    DONEさはんドロライの1周年に初参加で参入させていただこうと書いた話です。
    周年記念の特別企画として色々選べるお題の中から「再会 」をテーマに書き始めましたが、果たして読んでくださった方にそう思っていただけるか自信が・・・・・・。

    捏造設定とチートアイテムが堂々と幅をきかせています。何でも許せる方向けです。
    扇子の行方「また妙な物を欲しがるものだ」

     扇子が欲しいと洛冰河が言い出した。
     少し意外だったが、得心がいかないでもない。
     では、揃いで誂えようかと沈清秋が提案すると、それも嬉しいのですが・・・と冰河は少し言い淀んでから、できれば使い古しがよいのです と言う。
     「師尊が新しいものを誂える折に、今使われているものをいただければ」などと。
     「それでは[[rb:襤褸 > ボロ]]ではないか、遠慮はいらぬよ」
     師に出費させるのを良しとせずに辞しているのか、と沈清秋は思ったのだが。
     「新しいものではなく、師尊が愛用されていたものをご下賜いただきたいのです」と冰河が更に言うので、なるほど形見のようなものかと納得はした。形見とは会えぬ者を偲ぶ物。魔界の統治に絡み遠征を余儀なくされることもあるゆえ、何か師の物を持っておきたいということだろうか・・・・と。
    19538

    山椒魚

    DONE冰河は、それが当たり前の日常になってからは、師尊が起きる頃を見計らって朝食を準備したり出来るようになっていっただろうけれど、最初のうちは何よりも師の機嫌やら反応やらが気になってしまって側を離れられなかったんじゃないかなと。「この弟子に思うところがおありならば、すぐに口にしていただけるようその場にてお待ちせねば」くらいの気負いっぷりで。
    そんなことを思って書いた、まだ冰河の自信が薄かった頃の話です。
    早春 目を覚ました師は、しばらくぼんやりとしたお顔でこちらを眺めていらっしゃる。

     寝惚けているというよりも、記憶がうまく繋がらなくて緩慢に逡巡しているといった風情だ。
     はて?とでも言わんばかりに僅かに眉根を寄せ、斜め左上に瞳を動かした表情は、日頃の清廉風雅な面持ちとは相反した幼さをも感じさせる無防備なもので、無自覚な様子であるのがまた愛らしい。
     そう。師自身はお気付きではないようだが、ごくたまにこういった隙のある一瞬をお見せになるのが、この弟子としては嬉しいやら悩ましいやらトキメキが過ぎて具合悪くなるほどだけれど一周回って結局つまり嬉しいやら・・・・・・
     などと。
     無限ループしそうな気持ちにブレーキをかけつつも、思わず溢れてしまった笑みをそのままに俺が朝の挨拶をすると、師尊も返してくださろうと薄く唇を開き、そこで一瞬、眉を顰めた。
    1456