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    山椒魚

    @darumasan5656

    中華BLの沼に生息しはじめた両生類。20↑
    たわ言を吐きます。勘違いが多いです。動きは鈍いです。何かあったら棒でつついてください。痛くないやつが嬉しいです。


    『人渣反派自救系統』 の邦訳分冊版の連載を追いかけ中。(現在連載50巻目 第20回の段階)
    自力で翻訳はできていないため、先の展開は知らない状態です。何か勘違いがあってもぬるく見逃してください。

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    山椒魚

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    冰河は、それが当たり前の日常になってからは、師尊が起きる頃を見計らって朝食を準備したり出来るようになっていっただろうけれど、最初のうちは何よりも師の機嫌やら反応やらが気になってしまって側を離れられなかったんじゃないかなと。「この弟子に思うところがおありならば、すぐに口にしていただけるようその場にてお待ちせねば」くらいの気負いっぷりで。
    そんなことを思って書いた、まだ冰河の自信が薄かった頃の話です。

    #人渣反派自救系统
    scumVillainSelf-SavingSystem
    #svsss
    #クズ悪役の自己救済システム
    #冰秋
    iceAndAutumn

    早春 目を覚ました師は、しばらくぼんやりとしたお顔でこちらを眺めていらっしゃる。

     寝惚けているというよりも、記憶がうまく繋がらなくて緩慢に逡巡しているといった風情だ。
     はて?とでも言わんばかりに僅かに眉根を寄せ、斜め左上に瞳を動かした表情は、日頃の清廉風雅な面持ちとは相反した幼さをも感じさせる無防備なもので、無自覚な様子であるのがまた愛らしい。
     そう。師自身はお気付きではないようだが、ごくたまにこういった隙のある一瞬をお見せになるのが、この弟子としては嬉しいやら悩ましいやらトキメキが過ぎて具合悪くなるほどだけれど一周回って結局つまり嬉しいやら・・・・・・
     などと。
     無限ループしそうな気持ちにブレーキをかけつつも、思わず溢れてしまった笑みをそのままに俺が朝の挨拶をすると、師尊も返してくださろうと薄く唇を開き、そこで一瞬、眉を顰めた。
     「ん」と、とりあえず最低限の音での返事はあるが、その音すら掠れていて痛ましい。
     「ん、んんっ」と咳払いのような音を出して喉を整えると、ふいっと顔を隠すように横を向いてしまわれてから、感情の伺えない単調なお声で小さくボソボソと小言を仰る。

     どうやら昨夜からの記憶が繋がったようだ。

     何を伝えようとしているのか聞き取るべく、緊張しながら耳をそばだてているのだが、これがまた聞かせるつもりを疑うくらいの、超単調な超小声。
     抑揚をつければそれだけ喉に負荷がかかるためというのもあるだろうけれど、本当のところは『とりあえず言っておかねば矜持が立たぬが、さりとて相手のせいにばかりもできぬ』という、こんな場合ですら物事を正当に取扱おうとされるお人柄からの苦し紛れのお振る舞いであろうと推察された。

     「師尊、この弟子は・・・・・・」
     と、無理をさせたことへの謝意を伝えようと口を開くと、顔を背けたままの師から、手のひらを振って中断させられる。
     言わずともよい。このような恥ずかしい話はもう終いだ ということである。
     口には出されていないが、何よりも半分隠された横顔から伺える、拗ねたような照れたような何ともお可愛らしい表情に因ってその意図が充分に伝わってきて、俺は安心と歓びで満たされていく。

     赦してくださっている。
      そしてこれからも、許していただける──

     舞い上がるような今の気持ちを素直な言葉にして師に聞いていただきたいけれど、恥ずかしがり屋の娘子を追い詰めて怒らせてしまうといけないので、俺は満ち溢れる幸せを自分の中だけで噛み締めてから、スッと立ち上がり、拱手する。

     「朝餉の支度をして参りますね」
     計らずも潤んできてしまった目元を悟られぬよう、努めて平静を装い素早く部屋を後にしようと踏み出したところを、小さく呼び止められる。
     続く言葉を聞き漏らさぬようにと再び牀榻の脇に跪けば、気怠そうに身を起こした師から、優しい手つきでふわりと髪を撫でられた。
     少し驚いて顔を上げたその耳元に唇を寄せて、師はぽそりと求めを口にする。
     「・・・・・・粥がよい。いつものを」
     
     近付いた顔。耳をくすぐる吐息。掠れた低い・・・でも微かに甘い声。
     狙った訳でもないのだろう。
     何か特別な言葉でもない。なのに・・・・・・

     ぶわり と一瞬にして、首から耳まで赤くなってしまった俺の反応に目を丸くした師は、虚を突かれたような表情を浮かべたが、これまた一瞬の後
     綺麗なその面に見惚れるほどの華を浮かべ
      嬉しそうに、咲った。



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    night201910

    MEMO冰秋&冰九にしたい現代転生AUの双子ネタ。の続きの中でも書きたいところだけ書いたメモ。
    その後、沈垣は冰哥と接触。そのことを岳清源に相談中うっかり沈九と喧嘩になり、沈九が家を飛び出してしまう。冰哥は沈九に前世の記憶が無いことを知りながら、沈垣の知り合いだと嘘をついて沈九に近付いて誘拐&軟禁に成功……するのか?という話。
    さはん現代転生AU② 警察に通報されたら面倒だからと、連絡だけは入れることにしたらしい。道中で見かけた公衆電話を前に立ち止まった沈九は、決まりが悪そうにちらりと洛冰河を見上げた。言いたいことはわかっている。彼はスマートフォンも、財布も持っていないのだ。
     だが、残念ながら洛冰河も小銭は持ち合わせていなかった。少し待っているよう言い残して最寄りのコンビニに入り、適当に店内を物色して紙幣一枚を店員に渡す。お釣りを細かくしていただけますか?と微笑みかければ、恐らく学生であろう、アルバイトらしき女性は慌てながらも喜々として洛冰河の手に小銭を握らせてくれた。ついでに二つに折られたメモもひとつ。両替金を用意すると言って暫くパタパタと動き回っていたのは、このメモを書くためだったようだ。
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