noa/ノア
DONE[✈慕情&扶揺] 8月9日はハグの日、ということで。はたしてこの二人はハグするのか…?
努力が報われるとは限らない――そんなことは扶揺もよくわかっている。いや、他の人以上によく知っているかもしれない。
だがそれでも期待してしまうのは、報われることもあると知っているからだ。
そう、ちょうど今のように――口元に抑えられない笑みが浮かぶ。
操縦技術以外で国際線のパイロットがさけられないもの、それは英語だ。
パイロットとしての技術には自信がある扶揺も、実は英語だけは少しばかり苦手だった。もちろん定期的な試験で必要なレベルはしっかりクリアしている。だが、いくつかあるレベルの一つ上を取得するのに、ここ数年ずっと苦労していた。
フライトで通信に必要な単語や言い回しを覚えるのはまだいい。だが一応、会話力もいる。レッスンに通ってみたりもしたが、自分の気持ちや意見をすべて言葉で主張せよと求められる英語の世界がどうにも苦手だった。いちいち言わなくても理解してほしいものだ。
2157だがそれでも期待してしまうのは、報われることもあると知っているからだ。
そう、ちょうど今のように――口元に抑えられない笑みが浮かぶ。
操縦技術以外で国際線のパイロットがさけられないもの、それは英語だ。
パイロットとしての技術には自信がある扶揺も、実は英語だけは少しばかり苦手だった。もちろん定期的な試験で必要なレベルはしっかりクリアしている。だが、いくつかあるレベルの一つ上を取得するのに、ここ数年ずっと苦労していた。
フライトで通信に必要な単語や言い回しを覚えるのはまだいい。だが一応、会話力もいる。レッスンに通ってみたりもしたが、自分の気持ちや意見をすべて言葉で主張せよと求められる英語の世界がどうにも苦手だった。いちいち言わなくても理解してほしいものだ。
noa/ノア
DONE[慕情&扶揺✈] お題をいただいていた、酔っぱらった玄真航空のふたり。こっちはちょっと展開が早いです(※健全)
※前半と後半に分けて投稿したものの全体バージョンです
休日の前の夜ほど良いものはない。
なかなか読めずにいた本を手に、慕情は部屋のソファに身を沈めた。だが、三行も読まないうちに、テーブルに置いた携帯が震えた。
ちらりと画面を見る。表示された送信人を確認した慕情の視線は、何事もなかったかのように本へ戻った。
しかし、苛つくかのように携帯は何度も振動音を響かせる。歯ぎしりしたい気持ちで忌々しく視線をやる。
『今、家か?』
『どこにいる?』
風信──なんでアイツは慕情が邪魔されたくないときを見計らったように連絡を寄越すのだ。身じろぎせず、火がつきそうなほど画面を睨みつける。だが、次に現れた名前に思わず眉が動いた。
『扶揺が困ったことになってるらしいぞ』
扶揺が? しばし逡巡したのち、短く返す。
6295なかなか読めずにいた本を手に、慕情は部屋のソファに身を沈めた。だが、三行も読まないうちに、テーブルに置いた携帯が震えた。
ちらりと画面を見る。表示された送信人を確認した慕情の視線は、何事もなかったかのように本へ戻った。
しかし、苛つくかのように携帯は何度も振動音を響かせる。歯ぎしりしたい気持ちで忌々しく視線をやる。
『今、家か?』
『どこにいる?』
風信──なんでアイツは慕情が邪魔されたくないときを見計らったように連絡を寄越すのだ。身じろぎせず、火がつきそうなほど画面を睨みつける。だが、次に現れた名前に思わず眉が動いた。
『扶揺が困ったことになってるらしいぞ』
扶揺が? しばし逡巡したのち、短く返す。
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DOODLE[慕情&扶揺✈️] ご機嫌最悪な慕情機長にお呼び出しされる扶揺。 そわそわと幾度となく確認した携帯電話の画面は沈黙している。小さく息を吐き、のろのろと帰り支度を始めた扶揺は、後ろから声をかけられて振り返った。
「ああ、扶揺、まだいたか」
疲れた顔でやってきたのは少し年上の副操縦士だ。
「今到着ですか? 遅かったですね。慕情機長とのフライトでしたよね」
「ああ」
彼の顔の疲労感が濃くなる。
「なんか南陽航空の飛行機が滑走路から出る時にミスったとかで着陸が渋滞して、上でぐるぐる待機だよ」大きくため息をつく。
「おかげで慕情機長のご機嫌は最悪。待たされると機嫌悪くなるけど、今日は過去に類を見ないほど苛ついてた」
へぇ、と適当な返事を返す扶揺に彼が言う。
「で、そんな慕情機長からお呼び出しだぞ、扶揺」
1877「ああ、扶揺、まだいたか」
疲れた顔でやってきたのは少し年上の副操縦士だ。
「今到着ですか? 遅かったですね。慕情機長とのフライトでしたよね」
「ああ」
彼の顔の疲労感が濃くなる。
「なんか南陽航空の飛行機が滑走路から出る時にミスったとかで着陸が渋滞して、上でぐるぐる待機だよ」大きくため息をつく。
「おかげで慕情機長のご機嫌は最悪。待たされると機嫌悪くなるけど、今日は過去に類を見ないほど苛ついてた」
へぇ、と適当な返事を返す扶揺に彼が言う。
「で、そんな慕情機長からお呼び出しだぞ、扶揺」
noa/ノア
DONE[慕情&扶揺✈] パイロットAU。こちらは玄真航空の二人です。悪天候のフライトで扶揺が見た慕情機長とは―?
慕情機長はどんなパイロットなんだろうなあと考えてみました。解釈違いだったらすみません。
みんなは慕情機長のことを誤解している。
扶揺は常々そう思っていた。
玄真航空の社員たちの間での彼の評判といえば、操縦の腕はなかなかだが、という枕詞のあとに大抵、人づきあいは悪いし冷たいし自分のことしか考えていない――と、そう続く。
確かに最初の二つについては、まあ完全に否定はできないかもしれない――扶揺も似たようなところがあるし嫌いではなかったが。
だが最後の一つについては、大いに同意しかねるところだった。
「おはよう、扶揺。久しぶりだな」
フライト前のブリーフィングのために情報を調べていた扶揺は、コンピュータの画面から顔を上げた。
やってきた慕情機長は、いつも通りぴしりと完璧にアイロンで折り目をつけたシャツに身を包み、喜怒哀楽のない表情で扶揺の横に立った。そんな慕情機長のあまりの隙のなさには、やたら緊張してしまうから嫌だとぼやく副操縦士仲間は多いが、扶揺は好きだった。冬の朝のきりりとした空気を吸った時のように身が引き締まる。フライト前にはありがたい。
3767扶揺は常々そう思っていた。
玄真航空の社員たちの間での彼の評判といえば、操縦の腕はなかなかだが、という枕詞のあとに大抵、人づきあいは悪いし冷たいし自分のことしか考えていない――と、そう続く。
確かに最初の二つについては、まあ完全に否定はできないかもしれない――扶揺も似たようなところがあるし嫌いではなかったが。
だが最後の一つについては、大いに同意しかねるところだった。
「おはよう、扶揺。久しぶりだな」
フライト前のブリーフィングのために情報を調べていた扶揺は、コンピュータの画面から顔を上げた。
やってきた慕情機長は、いつも通りぴしりと完璧にアイロンで折り目をつけたシャツに身を包み、喜怒哀楽のない表情で扶揺の横に立った。そんな慕情機長のあまりの隙のなさには、やたら緊張してしまうから嫌だとぼやく副操縦士仲間は多いが、扶揺は好きだった。冬の朝のきりりとした空気を吸った時のように身が引き締まる。フライト前にはありがたい。
noa/ノア
DONE[南風&扶揺✈] パイロットAU南扶ちゃんたち。珍しく雪が積もった日、ある出来事のせいで傷心の扶揺の家にやってきた南風。 朝、窓を開けた扶揺は小さく息をのんだ。
見慣れた窓の外の景色が、どこも真っ白く覆われている。雪が積もるかもしれないという天気予報は当たったらしい。この暖かい地では珍しい雪景色は、いつもなら淡泊な扶揺の心すら躍らせる。だが、今日はそんな景色すら、心の重しを軽くしてはくれなかった。
冷気に肩をすくめ、窓を閉める。もう一度ベッドに潜り込んだところで、枕の脇に置いたスマホにメッセージの通知が表示される。南風だ。
『雪、すごいな。欠航だし午後休みとっちゃった。お前は?』
欠航になったからって休むか? と白目をむく。扶揺は今日は元から休みだ。そう返すとすぐに返信が返ってくる。
『じゃ、午後にお前のとこ遊びにいく。なんか食べたいものとかあるか?』
4509見慣れた窓の外の景色が、どこも真っ白く覆われている。雪が積もるかもしれないという天気予報は当たったらしい。この暖かい地では珍しい雪景色は、いつもなら淡泊な扶揺の心すら躍らせる。だが、今日はそんな景色すら、心の重しを軽くしてはくれなかった。
冷気に肩をすくめ、窓を閉める。もう一度ベッドに潜り込んだところで、枕の脇に置いたスマホにメッセージの通知が表示される。南風だ。
『雪、すごいな。欠航だし午後休みとっちゃった。お前は?』
欠航になったからって休むか? と白目をむく。扶揺は今日は元から休みだ。そう返すとすぐに返信が返ってくる。
『じゃ、午後にお前のとこ遊びにいく。なんか食べたいものとかあるか?』
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DONE新春SSおみくじ:第七番 [殿下&南風&扶揺]原作軸の神官三人ですが、舞台は現代。謎時空。何も考えずにお読みください。
謝憐がATMで無茶をするお話。
「あ、君たちか」
菩薺観の扉を開けた謝憐は、険しい顔で佇む若い神官二人に微笑みかけた。
「呼んでおいて、君たちか、はないでしょう」
一人がぐるりと白眼をむく。
「扶揺、べつに呼んではいないんだが」
「通霊で『君たちの助けが必要で……あ、いやまあいい。一人でなんとかする』なんて言って切られたら、来ないわけにはいかないじゃないですか!」
もう一人が腕組みをして大きな声で言うと、謝憐は肩をすくめた。
「いやぁ、南風、言っている途中でなんとかなるかと思ったんだよ。でも、まあ来てくれた以上、手伝ってくれるかな?」と言うと、二人はふんとそっぽを向き、
「よろこんで!」と噛みつくように言った。
謝憐は苦笑いしながら二人を中に招き入れ、奥に置かれた功徳箱の前に立った。
1843菩薺観の扉を開けた謝憐は、険しい顔で佇む若い神官二人に微笑みかけた。
「呼んでおいて、君たちか、はないでしょう」
一人がぐるりと白眼をむく。
「扶揺、べつに呼んではいないんだが」
「通霊で『君たちの助けが必要で……あ、いやまあいい。一人でなんとかする』なんて言って切られたら、来ないわけにはいかないじゃないですか!」
もう一人が腕組みをして大きな声で言うと、謝憐は肩をすくめた。
「いやぁ、南風、言っている途中でなんとかなるかと思ったんだよ。でも、まあ来てくれた以上、手伝ってくれるかな?」と言うと、二人はふんとそっぽを向き、
「よろこんで!」と噛みつくように言った。
謝憐は苦笑いしながら二人を中に招き入れ、奥に置かれた功徳箱の前に立った。
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DONE[南風&扶揺✈️] ある日の南扶ちゃんたち。扶揺に呼び出された南風が渡されたモノとは…?
『今週水曜までで会える日は?』
画面に表示されたメッセージの通知。送り主の名前を見なくても誰からかわかる。南風は、小さく溜息をつきながらスマホを手に取り、『ない』と短く返す。厳密にいえばないわけでもないが、そう返すのは癪だった。今日はもう月曜日。いつもながら、こちらの予定などお構いなしだ。こっちだって忙しく飛び回るパイロットなのだ。
すぐに返事が返ってくる。
『木曜は?』
なにやら随分急ぎらしい。手元のカップが空になっていることに気づき、新しくコーヒーを淹れてきてから、ゆっくりと返す。『朝八時。そのあとフライトだから』
向こうでメッセージを打っているらしく、しばらく画面にドットが跳ねる。
『九時。お前のフライト午後からだろ? すぐ済む。じゃあいつもの空港のカフェで』
2349画面に表示されたメッセージの通知。送り主の名前を見なくても誰からかわかる。南風は、小さく溜息をつきながらスマホを手に取り、『ない』と短く返す。厳密にいえばないわけでもないが、そう返すのは癪だった。今日はもう月曜日。いつもながら、こちらの予定などお構いなしだ。こっちだって忙しく飛び回るパイロットなのだ。
すぐに返事が返ってくる。
『木曜は?』
なにやら随分急ぎらしい。手元のカップが空になっていることに気づき、新しくコーヒーを淹れてきてから、ゆっくりと返す。『朝八時。そのあとフライトだから』
向こうでメッセージを打っているらしく、しばらく画面にドットが跳ねる。
『九時。お前のフライト午後からだろ? すぐ済む。じゃあいつもの空港のカフェで』