なかた
DONE海の家でバイトする綴が心配な至に巻き込まれる千景と万里(綴至)月よ聞いてくれ「はぁ」
ファブリックソファの座面に足を上げ、背中を丸めたルームメイトがため息をつく。それも、これでもかというくらいわかりやすく、盛大に。
一度やニ度なら知らんぷりしていただろう。だが、今のでちょうど十回目。こちらの我慢もそろそろ限界だ。
俺が趣味で続けているブログは、どの投稿にもそれなりの数のコメントが寄せられている。返信するかは別として、たまにはそれらに目を通そうとノートPCを操作していたが、もうそんな気分ではない。液晶モニターをは手前に倒して、そこだけどんよりとした空気が漂うソファの前に足を運ぶ。
部屋にいる間、ソファに身を委ねた茅ヶ崎がそこから一歩も動かず、手にしたスマホの画面にかじりついている。という光景を、俺は毎日のように目にしていた。とはいえ、指の一本も動かさず、ただ注視しているだけという状況は珍しい。おそらく、ゲームをしているわけではないのだろう。動画配信サービスを利用して、アニメでも観ているのか。それとも――
4775ファブリックソファの座面に足を上げ、背中を丸めたルームメイトがため息をつく。それも、これでもかというくらいわかりやすく、盛大に。
一度やニ度なら知らんぷりしていただろう。だが、今のでちょうど十回目。こちらの我慢もそろそろ限界だ。
俺が趣味で続けているブログは、どの投稿にもそれなりの数のコメントが寄せられている。返信するかは別として、たまにはそれらに目を通そうとノートPCを操作していたが、もうそんな気分ではない。液晶モニターをは手前に倒して、そこだけどんよりとした空気が漂うソファの前に足を運ぶ。
部屋にいる間、ソファに身を委ねた茅ヶ崎がそこから一歩も動かず、手にしたスマホの画面にかじりついている。という光景を、俺は毎日のように目にしていた。とはいえ、指の一本も動かさず、ただ注視しているだけという状況は珍しい。おそらく、ゲームをしているわけではないのだろう。動画配信サービスを利用して、アニメでも観ているのか。それとも――
なかた
DONE今夜はお持ち帰りで❤️(綴至♀)「今週、金曜の夜は大学の同級生と飲みに行ってきます」
と伝えた瞬間、至の左右対称に整えられた眉が左だけピクリと動いたのを、綴は見逃さなかった。本当は子供のように「やだ。どうせ女もいるんでしょ?」と駄々をこねたいのに、大人の理性で我慢している証拠だ。わかっていても、今更誘いはは断れない。至の不満を少しでも解消したくて、綴はこう付け加えた。
「でも、一次会だけで帰ってきますね」
ホッとしたのか、わずかに口元が緩む。ベリー色のリップカラーで彩られた唇は瑞々しくて美味しそうだ。至の綺麗な顔はいくら見ていても飽きない。
「飲み会が楽しいのなんて、学生のうちだけだから。楽しんで来なね」
綴にとってはまだ未知の世界である社会人特有の苦労をにじませながらも、前向きに送り出してくれた。そんな至との約束を守るため、綴は二次会には行かないと固く誓った。
3182と伝えた瞬間、至の左右対称に整えられた眉が左だけピクリと動いたのを、綴は見逃さなかった。本当は子供のように「やだ。どうせ女もいるんでしょ?」と駄々をこねたいのに、大人の理性で我慢している証拠だ。わかっていても、今更誘いはは断れない。至の不満を少しでも解消したくて、綴はこう付け加えた。
「でも、一次会だけで帰ってきますね」
ホッとしたのか、わずかに口元が緩む。ベリー色のリップカラーで彩られた唇は瑞々しくて美味しそうだ。至の綺麗な顔はいくら見ていても飽きない。
「飲み会が楽しいのなんて、学生のうちだけだから。楽しんで来なね」
綴にとってはまだ未知の世界である社会人特有の苦労をにじませながらも、前向きに送り出してくれた。そんな至との約束を守るため、綴は二次会には行かないと固く誓った。
なかた
TRAINING秋の終わりの綴至♀「あ~うまかった。いつもごちそうになってばっかりですみません」
「いいの、いいの。私の課金で綴がお腹いっぱい幸せになってくれたら、それはもう実質収入だから」
「なんすかそれ」
オタク特有の思考回路が理解できずに至の方へ目を向ける。すると彼女は、返事をするより先に、腕にかけていたストールを広げた。
「寒っ。車だから防寒のステータス上げる装備はいらないかと思ってたけど、読みが外れたか」
店に入る前はまだ日も沈んでおらず、厚着をしてきた綴の方が汗ばむくらいだったが、食事をしている間に状況は一変していた。エアコンで適温に調整された店内を出ると、冷たい風が二人の体温を奪う。今日の至は上半身に薄手のリブニット、それから今たった羽織ったストールしか身につけていない。フード付きブルゾンを着た綴と比べても、見るからに寒そうだ。
874「いいの、いいの。私の課金で綴がお腹いっぱい幸せになってくれたら、それはもう実質収入だから」
「なんすかそれ」
オタク特有の思考回路が理解できずに至の方へ目を向ける。すると彼女は、返事をするより先に、腕にかけていたストールを広げた。
「寒っ。車だから防寒のステータス上げる装備はいらないかと思ってたけど、読みが外れたか」
店に入る前はまだ日も沈んでおらず、厚着をしてきた綴の方が汗ばむくらいだったが、食事をしている間に状況は一変していた。エアコンで適温に調整された店内を出ると、冷たい風が二人の体温を奪う。今日の至は上半身に薄手のリブニット、それから今たった羽織ったストールしか身につけていない。フード付きブルゾンを着た綴と比べても、見るからに寒そうだ。
なかた
TRAINING出オチ茅ヶ崎至は足に何か挟んで寝たい!「綴、ちょっとこっちに来て」
地方公演中の滞在先として、監督が押さえてくれたホテルの一室。ベッドの上に寝転がった至さんは、俺に背を向けたままそう言った。移動中の新幹線の中では、手から離れることのなかった携帯用ゲーム機も今は充電ケーブルに繋がれて、サイドテーブルに置かれている。小さく聞こえる音楽は、至さんが現在進行形でプレイしているスマホゲームのBGMだろう。
「ちょっとって、これくらいですか」
明日はマチネ公演があるので、夜更かしは避けたい。そう思いつつも、公演の後はいつも高揚感が残ってなかなか寝付けなかった。至さんと同じようにベッドに横なり、手持ち無沙汰に台本のページをめくっていた俺はシーツの上を這い進んだ。
3234地方公演中の滞在先として、監督が押さえてくれたホテルの一室。ベッドの上に寝転がった至さんは、俺に背を向けたままそう言った。移動中の新幹線の中では、手から離れることのなかった携帯用ゲーム機も今は充電ケーブルに繋がれて、サイドテーブルに置かれている。小さく聞こえる音楽は、至さんが現在進行形でプレイしているスマホゲームのBGMだろう。
「ちょっとって、これくらいですか」
明日はマチネ公演があるので、夜更かしは避けたい。そう思いつつも、公演の後はいつも高揚感が残ってなかなか寝付けなかった。至さんと同じようにベッドに横なり、手持ち無沙汰に台本のページをめくっていた俺はシーツの上を這い進んだ。
なかた
TIRED綴至/性癖がドノーマルな攻くんがサイズのあった誕生日プレゼントを買うために頑張る.txt「至さん。もし良ければなんですけど、今夜は……でしてくれませんか?」「え?」
ゲームのデイリークエストをクリアしていくように慣れた様子でベルトの金具を外して、今まさにジーンズのファスナーを開けにかかろうとしていた至さんが手を止める。うまく聞き取れなかったのは至さんが作業に集中していたからではなく、羞恥心に負けた俺が肝心なところで声のボリュームを下げたせいだろう。
舞台の上で台詞を言うように堂々と声に出すのは気がひけるが、意図を汲み取ってもらえない方が困る。俺は小さく息を吸って覚悟を決めた。
「あの……足でしてほしい、です」
「は?」
至さんは甘い印象の目が大きく見開いた。そりゃそうだろう。俺だって何言ってんだって自覚しながら望みを口にしている。
「足コキって言った方が伝わりますか?」
「いや、それはわかってるよ。ただ、今まで綴にそういう変わったプレイ要求されたことなかったからびっくりしてるだけ」 407
なかた
TIRED綴至/ゴミ捨て場で見知らぬ男を拾うリーマン出不精な至にとって部屋から一歩も出ずに買い物ができるネット通販は渡に船、日照りに雨といえるようなサービスだった。しかし、困ったことが一つだけある。頻繁に注文すれば、その分だけ梱包用の段ボールが溜まっていく。そしてそれらの存在は、物が多く散らかった部屋をさらに無秩序にするのだ。ピザソースがついた口を拭くのに使ったティシュや飲み終わったコーラのボトルのように簡単には捨てられない分、面倒だが流石にいつまでも見て見ぬ振りはできない。同じ大手通販サイトのロゴが入った段ボールを解体し、紐でまとめるとそれを脇に抱えて至はマンションのエレベーターに乗り込んだ。ゴミ出しの曜日は確認した。あとは手にした段ボールをゴミ捨て場に置き、部屋に戻ればいい。その頃にはケトルに入れた水も沸騰して熱いお湯になっているだろう。食べ慣れた味のカップ麺で腹ごしらえを済ませたらあとは好きなだけゲームができる。そんなことを考えながらエレベーターを降り、マンションを出たところで至は我が目を疑った。ゴミ捨て場に人が捨てられているのだ。思わず、意識的に瞬きしてみたがコンタクトに異常はなく、目に見える景色にも変化はなかった。相変わら 1510