Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    SuzukichiQ

    DONE龍羽ワンライです
    『聞こえた!』 実際のところ、普通の人はどのくらい聴こえるものなんだろうと考えたことがある。
     羽京にとっては生まれたときから自分の聴こえ方が自分にとって普通だったから、感覚的な意味で聴力の良さに気付くのは遅かった。
     両親はたぶん早く気付いていた。幼少期の自分はどうやら言葉の発達が人一倍早かったらしい。歌を覚えるのも物心がつくより前のことだった。それでも普通に育てられたから、まわりと自分の差異が分かってきたのは小学校に上がってからだったと思う。地獄耳と初めて言われたのもそのくらいの時期だった。
     気にしていた時期もあったが、専門機関で検査を受けてからは納得が出来るようになった。どんな小さな音でも聴こえる――ということではなくて、どうやらこの聴力の良さというのは、周囲をよく観察し、洞察する性分と掛け合わさった結果なのだという。その説明は自分のなかにストンと落ちて、以降は地獄耳だと言われても実際そうなんだと思うようになった。疲れていたり周りが見えていないときには他よりちょっと耳がいいくらいの人間だし、高い集中力が必要な環境になれば、拾った音の情報をより多く早く処理できる。それで周りに頼られることも増えた。
    2320

    SuzukichiQ

    DONE6/25潮騒の無配冊子です。新刊「プラットフォーム・ゲートウェイ」の内容を一部含みますが知らなくても大丈夫です。
    【龍羽】Firstletter,lastletter 拝啓 西園寺羽京殿

     入梅の候、変わりなくお過ごしだろうか。羽京殿におかれては、ますますご清祥のこととお喜び申し上げる。

     貴様に伝えることがあって手紙を書いている。
     ただ、用件だけではこの紙一枚すらも埋まらず、無粋な手紙になってしまう。思いついたことをとりあえず書いていく。

     このまえは短い期間だったが、顔を見ることができてよかった。北米と日本間の弾丸移動というのは初めてだったが、やってみれば出来るものだ。日本を発つとき、空港にスイカたちが来た。ゲンもいて話を聞いたのだが、貴様はゲンとの予定をわざわざ変更したのだな。改めて礼を伝えておく。
     スイカたちに見送られてからのことだが、予定をしていた通り北米に戻った。今も宇宙センターでエンジニアと打ち合わせをする毎日だ。件の一仕事のあとからSAIもプロジェクトに加わった。やるべきことは多いが、休みたいときは船で海へと出たりチェスやゲームをしたりと、やりたいことをして過ごしている。普段は湿度が低くて気温もあまり高くないから、日中も夜も過ごしやすくて助かる。
    4576