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    SuzukichiQ

    DONE龍羽ワンライです
    『聞こえた!』 実際のところ、普通の人はどのくらい聴こえるものなんだろうと考えたことがある。
     羽京にとっては生まれたときから自分の聴こえ方が自分にとって普通だったから、感覚的な意味で聴力の良さに気付くのは遅かった。
     両親はたぶん早く気付いていた。幼少期の自分はどうやら言葉の発達が人一倍早かったらしい。歌を覚えるのも物心がつくより前のことだった。それでも普通に育てられたから、まわりと自分の差異が分かってきたのは小学校に上がってからだったと思う。地獄耳と初めて言われたのもそのくらいの時期だった。
     気にしていた時期もあったが、専門機関で検査を受けてからは納得が出来るようになった。どんな小さな音でも聴こえる――ということではなくて、どうやらこの聴力の良さというのは、周囲をよく観察し、洞察する性分と掛け合わさった結果なのだという。その説明は自分のなかにストンと落ちて、以降は地獄耳だと言われても実際そうなんだと思うようになった。疲れていたり周りが見えていないときには他よりちょっと耳がいいくらいの人間だし、高い集中力が必要な環境になれば、拾った音の情報をより多く早く処理できる。それで周りに頼られることも増えた。
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    SuzukichiQ

    DONE6/25潮騒の無配冊子です。新刊「プラットフォーム・ゲートウェイ」の内容を一部含みますが知らなくても大丈夫です。
    【龍羽】Firstletter,lastletter 拝啓 西園寺羽京殿

     入梅の候、変わりなくお過ごしだろうか。羽京殿におかれては、ますますご清祥のこととお喜び申し上げる。

     貴様に伝えることがあって手紙を書いている。
     ただ、用件だけではこの紙一枚すらも埋まらず、無粋な手紙になってしまう。思いついたことをとりあえず書いていく。

     このまえは短い期間だったが、顔を見ることができてよかった。北米と日本間の弾丸移動というのは初めてだったが、やってみれば出来るものだ。日本を発つとき、空港にスイカたちが来た。ゲンもいて話を聞いたのだが、貴様はゲンとの予定をわざわざ変更したのだな。改めて礼を伝えておく。
     スイカたちに見送られてからのことだが、予定をしていた通り北米に戻った。今も宇宙センターでエンジニアと打ち合わせをする毎日だ。件の一仕事のあとからSAIもプロジェクトに加わった。やるべきことは多いが、休みたいときは船で海へと出たりチェスやゲームをしたりと、やりたいことをして過ごしている。普段は湿度が低くて気温もあまり高くないから、日中も夜も過ごしやすくて助かる。
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    millustacc

    MEMO続きものぽちぽち
    end point④「また来たの」
    こんな問答も何回目になるんだろう。二、三日に一回ほどのペースで龍水は羽京のところにお邪魔していた。羽京は同じ言葉を毎回龍水に言うけれどそのあとはいつも無言で招き入れる。龍水が何かしらの茶菓子を持ってくるのも当たり前のことになっていて、それを食しながら食堂で談笑するのがいつの間にか日課となっていった。
    「こんな真昼間から来てさぁ、ねぇ領主様って暇なものなの?」
    「俺は要領がいいんだ」
    「…そうだろうね」
    羽京は「それ自分で言うんだ…」と言いたげな顔で龍水を見た。
    「さぁ、今日は何を話そうか」
    最近は専ら龍水の話ばかりだった。家柄、仕事、いつも手土産を持たせてくれる執事の話…羽京に関しては「食べるのが好き」「音楽が好き」「主人の帰りを待っている」「不死身…」最初の頃に知ったことばかりで他の情報があまり得れていない。いや、この数ヶ月で分かったことも多少はあったか。屋敷に小さなダンスホールがあったからそこで羽京を誘って踊ったけれど初めての割には上手く踊れていたなとか、いつも俺が玄関でノックをする前に気付くのはなぜかと聞いたときは耳が良いのだと教えてくれたな。俺がどんな領主なのか知ったのも、屋敷まわりで野草でも取っていたのであろう住人の噂話からだったと最近になって教えてくれた。
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    millustacc

    MEMO不死身の🏹と土地を治める🐉の話(たぶんファンタジー)
    ※龍羽
    ※とりあえず序章だけ
    end point木々がざわめく音、遠くから聞こえる波がさざめく音、屋敷に響く僕だけの足音。
    そして三百年に数回、外から来る見知らぬ他人の足音。来て様子を見てみては気味悪がって去って行く。僕に出て行って土地を寄越してほしいのだろうが出て行く気はさらさらない。だってご主人様が帰ってくるかもしれないから。同じ日を繰り返し僕はいつまでもここで待つ。
    ──だけれど、今日は確かな足音がひとつ。屋敷に向かって響いていた。





    成人し、とある土地を治めることになった俺は前任者、またはその土地に住む人々から毎回聞かされる話があった。
    「丘の上には悪魔が住んでいる」「不死身でずっと居着いている」「気味が悪いから出て行ってほしい」どうにかならないかと口々に言われた。しかし悪さはしていないようで気味が悪いだけで追い出すのはいかがなものかと思った俺はまず最初に会うことにした。周りからは一人で行くのは危険だとか言うが付いてくる者を探すだけで時間の無駄だ。あの丘の上からは海が見えるはずだし新しい御宿にするのも悪くない。俺は早く会って話をして行動し、ことを進めたい。時間は有限なのだ。
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