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DONEしあわせそう。(https://odaibako.net/gacha/3238)さんのお題で書いた左寂先生は、愛されることに慣れていない。自分は慈愛の手を何処にでも伸ばそうとするくせに、それが自分にも向けられることがあるとは思ってもいないようだ。
「おや…ご飯、作ってくれたのかい」
「先生疲れてんだろ、これくらいやらせろよ」
ついでに、と手招きして近づいてきた唇に軽く口付ける。困ったように微笑んでいるその表情(かお)も悪くないが、これくらいは素直に受け取ってほしい。
(……ま、そのうち嫌でも慣れるだろ)
この人だけは、絶対に手放さないと決めたのだから。
228「おや…ご飯、作ってくれたのかい」
「先生疲れてんだろ、これくらいやらせろよ」
ついでに、と手招きして近づいてきた唇に軽く口付ける。困ったように微笑んでいるその表情(かお)も悪くないが、これくらいは素直に受け取ってほしい。
(……ま、そのうち嫌でも慣れるだろ)
この人だけは、絶対に手放さないと決めたのだから。
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DONEあ!自カプがかわいい!(https://odaibako.net/gacha/2783)さんのお題で書いた左寂特別、高い声という訳ではない。
機嫌が悪い時やラップバトルの時などはドスの効いた低い声で相手を威圧しているが、普段は穏やかな中音域で懐に入れた者に対しては優しく語りかけることがあるのも知っている。
現に、今しがた聞こえた声は限りなく柔らかい色を持って耳に響いてきた。
「先生」
声がした方を振り返ると、雑踏の中でちらと輝く白銀を見つける。まだ少し距離があるのに、隣で電話をしているサラリーマンや目の前を横切った学生たちの笑い声より、彼の落ち着いた声がクリアに聞こえたのは何故だろう。
「早かったな」
「左馬刻くんこそ」
紅い瞳と目が合い、冷えた体がふわりと暖まる。それだけが、答えだ。
292機嫌が悪い時やラップバトルの時などはドスの効いた低い声で相手を威圧しているが、普段は穏やかな中音域で懐に入れた者に対しては優しく語りかけることがあるのも知っている。
現に、今しがた聞こえた声は限りなく柔らかい色を持って耳に響いてきた。
「先生」
声がした方を振り返ると、雑踏の中でちらと輝く白銀を見つける。まだ少し距離があるのに、隣で電話をしているサラリーマンや目の前を横切った学生たちの笑い声より、彼の落ち着いた声がクリアに聞こえたのは何故だろう。
「早かったな」
「左馬刻くんこそ」
紅い瞳と目が合い、冷えた体がふわりと暖まる。それだけが、答えだ。
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DONE男ふたりの色んなシーン(https://odaibako.net/gacha/1739)さんのお題で書いた左寂TDDのミーティングのため寂雷の家を訪れた左馬刻は、そろそろ見慣れてきたリビングに繋がる木製のドアを開いた。鍵を開けてくれた衢は、一郎と乱数はまだ来ていないと言っていた。自身も所用でしばらく自室にいるとも。
当然、リビングには寂雷一人のはずで、落ち着いた低音がいつものように「いらっしゃい」と声をかけてくると予想していた左馬刻は、ドアを開けても何も聞こえないことに違和感を覚えリビングを見渡した。半開きの襖の向こうの部屋で、椅子に座って目を閉じている寂雷を見つける。
小さな悪戯心で足音を立てぬよう近寄り端末を取り出し、カメラを起動し一つタップした。画面が瞬き、撮った写真を保存するか、と聞かれる。
(…何やってんだ、俺)
970当然、リビングには寂雷一人のはずで、落ち着いた低音がいつものように「いらっしゃい」と声をかけてくると予想していた左馬刻は、ドアを開けても何も聞こえないことに違和感を覚えリビングを見渡した。半開きの襖の向こうの部屋で、椅子に座って目を閉じている寂雷を見つける。
小さな悪戯心で足音を立てぬよう近寄り端末を取り出し、カメラを起動し一つタップした。画面が瞬き、撮った写真を保存するか、と聞かれる。
(…何やってんだ、俺)
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DONE男ふたりの色んなシーン(https://odaibako.net/gacha/1739)さんのお題で書いた左寂代わりに、誓いの口付けを。寂雷の小指の根元にちらりと光るものを見つけ、左馬刻はその左手を取った。身長の割に細いとはいえ、骨ばった男の指にいかにも子供用の指輪はいささか不恰好だ。
「ああ、つけたままだった。今日退院した子に貰ったんだ」
「……似合わねえな」
「そうだね、でも」
すり、と、寂雷のかさついた指が左馬刻の手のひらを撫で、銀の台座の真ん中で宝石を模した青いガラスが光を反射しキラキラと輝く。
「この青が、なんだか君を思い出して」
愛おしげに目を細める寂雷を見て、左馬刻は安っぽい指輪の横(くすりゆび)に小さくキスを落とした。
全てをすくおうとするこの手に、指輪(かせ)は似合わない。
283「ああ、つけたままだった。今日退院した子に貰ったんだ」
「……似合わねえな」
「そうだね、でも」
すり、と、寂雷のかさついた指が左馬刻の手のひらを撫で、銀の台座の真ん中で宝石を模した青いガラスが光を反射しキラキラと輝く。
「この青が、なんだか君を思い出して」
愛おしげに目を細める寂雷を見て、左馬刻は安っぽい指輪の横(くすりゆび)に小さくキスを落とした。
全てをすくおうとするこの手に、指輪(かせ)は似合わない。
sakuraneko19951
INFOこちらは、2021年10月10日新刊「フロリエンタルノート」をお買い上げ頂いた方のみの限定公開になっております。パスワードは本書の4P、お願い及び注意事項の最後、私の名前の下にある
【】の中の文字列です。
内容は左寂の成人向けショート小説になります。フロリエンタルノートの本編終了後数年後の話ですので、本編をお読み頂いた後にご覧いただけるようお願いいたします。 15738
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DONE男ふたりの色んなシーン(https://odaibako.net/gacha/1739)さんのお題で書いた左寂ガラリと窓を閉める音と、煙草の香りで目が覚めた。ベランダで一服していたらしい彼の方へ顔を向けると、柔らかく光る紅と目が合う。
「おはよう、先生」
起きたばかりだからか、鼻に詰まったような気だるげな声は甘く大人の色気を纏っていて、その響きの心地よさに思わず頬が緩む。
「…何だよ」
「声が…セクシーだな、と思ってね」
そう素直に伝えると、左馬刻くんが一つため息をついてこちらに近づいてくる。顔の横に手をつかれ、ベッドがきしりと音を立てた。唇が合わさり、煙草の香りが鼻に抜ける。
「……先生には敵わねぇよ」
252「おはよう、先生」
起きたばかりだからか、鼻に詰まったような気だるげな声は甘く大人の色気を纏っていて、その響きの心地よさに思わず頬が緩む。
「…何だよ」
「声が…セクシーだな、と思ってね」
そう素直に伝えると、左馬刻くんが一つため息をついてこちらに近づいてくる。顔の横に手をつかれ、ベッドがきしりと音を立てた。唇が合わさり、煙草の香りが鼻に抜ける。
「……先生には敵わねぇよ」
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DONE2W1Hガチャ-あまあま恋愛編-(https://odaibako.net/gacha/617)さんのお題で書いた左寂…あー、別に、隠してるつもりは無かったんだがよ…まあ、確かに調子は悪いが、先生に心配されるほどでもねぇよ。
何つーか、微熱が続いてるみてぇなダルさとか息苦しさが時々あるだけで…いや、家だといつもと変わらねえから体温計では測ってねえな。
動悸?ああ、たまにあるな…どんな時にって、そうだな……。
目を逸らし、しばし考え込む左馬刻くんをゆっくり待つ。医者では治せない病気に罹ってしまったらしい彼の口からはどんな名前が出るだろうか。…私のあさましい期待を断ち切ってくれるなら、どんな名前だっていいのだけど。
「…そういえば、先生といるときが多いな」
こちらを見据えギラリと光る紅に思わず息を呑む。心臓が早鐘を打ち一気に体温が上がった。きっと拗らせると覚悟していたこの治せない病気にはどうやら、さらに病状を進める特効薬があったようだ。
365何つーか、微熱が続いてるみてぇなダルさとか息苦しさが時々あるだけで…いや、家だといつもと変わらねえから体温計では測ってねえな。
動悸?ああ、たまにあるな…どんな時にって、そうだな……。
目を逸らし、しばし考え込む左馬刻くんをゆっくり待つ。医者では治せない病気に罹ってしまったらしい彼の口からはどんな名前が出るだろうか。…私のあさましい期待を断ち切ってくれるなら、どんな名前だっていいのだけど。
「…そういえば、先生といるときが多いな」
こちらを見据えギラリと光る紅に思わず息を呑む。心臓が早鐘を打ち一気に体温が上がった。きっと拗らせると覚悟していたこの治せない病気にはどうやら、さらに病状を進める特効薬があったようだ。
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DONEこんな感じの二人ください(https://odaibako.net/gacha/1536)さんのお題で書いた左寂布団から出るとひんやりとした空気が素肌を包み、寂雷は床に落ちているアロハシャツを拾った。半袖ではあるが上等な仕立てで着心地が良く、なかなか気に入っているのは小さな秘密だ。
シャツ一枚で向かったリビングはいつものコーヒーの匂いが漂っていて、寂雷は大きな窓に一番近いソファに腰掛ける。涼しいはずだ、普段とは違い、ヨコハマの街が雨雲に隠れてよく見えない。
無言で隣に座った左馬刻から手渡されたコーヒーは、白い湯気を立てていた。
(この前は、アイスコーヒーだったな)
一口啜ると優しい熱が腹まで落ちて身体を中から温めていく。次の季節を共に迎えることができる幸せに浸りながら、二人はただ静かに、降り続く雨を眺めていた。
304シャツ一枚で向かったリビングはいつものコーヒーの匂いが漂っていて、寂雷は大きな窓に一番近いソファに腰掛ける。涼しいはずだ、普段とは違い、ヨコハマの街が雨雲に隠れてよく見えない。
無言で隣に座った左馬刻から手渡されたコーヒーは、白い湯気を立てていた。
(この前は、アイスコーヒーだったな)
一口啜ると優しい熱が腹まで落ちて身体を中から温めていく。次の季節を共に迎えることができる幸せに浸りながら、二人はただ静かに、降り続く雨を眺めていた。
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DONE【左寂】#先生と夏休み 参加作品
8p折本「さざ波に寄り添って」の前日譚です。
「さざ波に寄り添って」は以下から無料ダウンロードできます。
BOOTH(https://mixnuts.booth.pm/items/3093413)
※9/11までを予定
#先生と夏休み『青い空、白い雲!夏休みの方も多いと思われますが、皆様いかがお過ごしでしょうか』
釣具を手入れしながら流していたテレビからそんな声が聞こえてきて、漠然とそちらに目を向ける。光るような眩しい青空にもくもくと沸き立つ白い入道雲。いかにも"夏"といった雰囲気の映像に、ふわりと心が浮き立つ。
(青と、白…左馬刻くんの色だな)
そんな考えが自然と浮かび、心臓がきゅうと疼く。無性に彼に会いたくなってきて、アプリのスケジュール帳を開いた。
「次の休み…この日なら夜は空いてるな。ヨコハマか…」
電気ウキに一度電池を入れて、問題なく点灯することを確認する。赤い光は左馬刻くんの鋭い眼光を想起させるが、彼の真紅の方が美しい。あの紅に惹きつけられているのだと…この想いを告げてみたらどのような反応をするだろうか。
363釣具を手入れしながら流していたテレビからそんな声が聞こえてきて、漠然とそちらに目を向ける。光るような眩しい青空にもくもくと沸き立つ白い入道雲。いかにも"夏"といった雰囲気の映像に、ふわりと心が浮き立つ。
(青と、白…左馬刻くんの色だな)
そんな考えが自然と浮かび、心臓がきゅうと疼く。無性に彼に会いたくなってきて、アプリのスケジュール帳を開いた。
「次の休み…この日なら夜は空いてるな。ヨコハマか…」
電気ウキに一度電池を入れて、問題なく点灯することを確認する。赤い光は左馬刻くんの鋭い眼光を想起させるが、彼の真紅の方が美しい。あの紅に惹きつけられているのだと…この想いを告げてみたらどのような反応をするだろうか。
sakuraneko19951
DONE「先生!受け止めて!!第二診察室」開催、おめでとうございます&ありがとうございます。展示品になります。
全年齢の左寂です。違法マイクでショタになった左馬刻とちょっと可愛い先生を目指しました。お気軽にご覧ください。 18
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DONE夏のお題ガチャ(https://odaibako.net/gacha/1955)さんのお題で書いた左寂「あっちぃな…」
気怠げに呟いた左馬刻くんがアロハシャツのボタンを一つ外す。焼けはしないが赤くなりやすいのだと以前言っていたが、薄っすらと朱を帯びている首筋につうと垂れた光る汗が、何だか美味しそうに見える…と言ったら、怒られるだろうか。
「…んだよ、ジロジロ見て」
「いや…綺麗だなと、思ってね」
「先生に口説かれるとはな」
左馬刻くんがニヤリと笑う。そっと顔が近づいてきて、耳に軽く唇が触れた。
「アンタの方が綺麗だよ」
…ああ、茹だってしまいそうだ。
228気怠げに呟いた左馬刻くんがアロハシャツのボタンを一つ外す。焼けはしないが赤くなりやすいのだと以前言っていたが、薄っすらと朱を帯びている首筋につうと垂れた光る汗が、何だか美味しそうに見える…と言ったら、怒られるだろうか。
「…んだよ、ジロジロ見て」
「いや…綺麗だなと、思ってね」
「先生に口説かれるとはな」
左馬刻くんがニヤリと笑う。そっと顔が近づいてきて、耳に軽く唇が触れた。
「アンタの方が綺麗だよ」
…ああ、茹だってしまいそうだ。
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DONEこんなカプが見たかった(https://odaibako.net/gacha/2010)さんのお題で書いた左寂目を開けると、視界いっぱいに広がる菫色。指を入れて梳くとさらりと逃げていくのが気持ちよく、何回か繰り返しているとんん、と掠れた声がした。
「くすぐったいよ……」
「なあ先生、髪、切らねえの?」
なんとはなしに問いかけると、先生がころりと体の向きを変えた。指の間の菫色が逃げていく。
「好きなくせに」
蒼い目がすっと細められ、思わず言葉に詰まる。
「……よく分かってんな」
「ふふ、まあね」
敵わねえな、という本心は飲み込み、軽いキスではぐらかした。
224「くすぐったいよ……」
「なあ先生、髪、切らねえの?」
なんとはなしに問いかけると、先生がころりと体の向きを変えた。指の間の菫色が逃げていく。
「好きなくせに」
蒼い目がすっと細められ、思わず言葉に詰まる。
「……よく分かってんな」
「ふふ、まあね」
敵わねえな、という本心は飲み込み、軽いキスではぐらかした。
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DONEなんか愛しいね(https://odaibako.net/gacha/2012)さんのお題で書いた左寂漂うコーヒーの香ばしい香りで目が覚めた。目の前にはスクリーンセーバーが起動しているパソコン画面。解除して書類が問題なく保存されていることを確認しほっと息をつく。ついでに時間を見ると、十数分ほどうたた寝をしていたようだ。
「起きたかよ」
左馬刻くんが呆れた顔でコーヒーカップを手渡してくれた。一口啜ると爽やかな苦味が口に広がる。相変わらず美味しいね、と言おうとしたら、急に距離を詰められ額に柔らかいものが触れた。
「赤くなってる、可愛い」
「……流石に恥ずかしいよ……」
伸びてきた前髪を留めていたヘアピンを外すと、左馬刻くんが笑う。
「嫌なら、そんな所で寝るなよ」
そう言われてしまうと、嫌ではないのが困ったものだ。誤魔化すように啜ったコーヒーは、何故か先程より甘かった。
336「起きたかよ」
左馬刻くんが呆れた顔でコーヒーカップを手渡してくれた。一口啜ると爽やかな苦味が口に広がる。相変わらず美味しいね、と言おうとしたら、急に距離を詰められ額に柔らかいものが触れた。
「赤くなってる、可愛い」
「……流石に恥ずかしいよ……」
伸びてきた前髪を留めていたヘアピンを外すと、左馬刻くんが笑う。
「嫌なら、そんな所で寝るなよ」
そう言われてしまうと、嫌ではないのが困ったものだ。誤魔化すように啜ったコーヒーは、何故か先程より甘かった。
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DONE夏のお題ガチャ(https://odaibako.net/gacha/1955)さんのお題で書いた左寂鼓膜が痺れるかと思うほどの甲高い音で目が覚めた。ベッドの上でごろりと体勢を変えると、むわっと湿度を含んだ空気が部屋に流れてくるのを感じる。全開の窓とその横に立つ下着一枚の先生を見て、先ほどから聞こえる音は蝉の鳴き声だと理解した。
「ごめん、起こしたかい」
こちらを向く先生の、夏の朝日を浴びて眩しく光る白い肌に赤い痕がいくつも残っているのが、堪らなく心を満たす。
「綺麗だな、先生」
呟くように言うと、先生は首を傾げて窓を閉めた。蝉の声が急に遠ざかっていく。
「何か言ったかい、左馬刻くん」
「…いーや、別に。朝メシにしようぜ」
264「ごめん、起こしたかい」
こちらを向く先生の、夏の朝日を浴びて眩しく光る白い肌に赤い痕がいくつも残っているのが、堪らなく心を満たす。
「綺麗だな、先生」
呟くように言うと、先生は首を傾げて窓を閉めた。蝉の声が急に遠ざかっていく。
「何か言ったかい、左馬刻くん」
「…いーや、別に。朝メシにしようぜ」
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DONEひとこと台詞ガチャ(https://odaibako.net/gacha/536)さんのお題で書いた左←寂。前に書いた左→寂の先生視点「もう、大丈夫ですよ」
腕の傷口に絆創膏を貼ってそう声をかけると、逞しい手が小さく拳を作り、紅い瞳がすっと逸らされた。少しだけ、胸が疼く。
「礼は言わねえぜ、先生」
「ええ、私がやりたくてやっていることです」
これくらいで大袈裟だ、と言い張る彼を説き伏せ手当てをしたのは何度目だろうか。左馬刻くんは一つため息をついて、立ち上がった。
「…コーヒー、飲むだろ。淹れてやんよ」
礼は言わない、と言いながら毎回美味しいコーヒーを振舞ってくれる不器用な優しさに心が暖かくなる。救急箱を片付けて彼が座っていたソファーに腰掛けると、僅かに香水の匂いが立つ。
とくり、と跳ねた心臓に向き合う勇気は、まだ無かった。
301腕の傷口に絆創膏を貼ってそう声をかけると、逞しい手が小さく拳を作り、紅い瞳がすっと逸らされた。少しだけ、胸が疼く。
「礼は言わねえぜ、先生」
「ええ、私がやりたくてやっていることです」
これくらいで大袈裟だ、と言い張る彼を説き伏せ手当てをしたのは何度目だろうか。左馬刻くんは一つため息をついて、立ち上がった。
「…コーヒー、飲むだろ。淹れてやんよ」
礼は言わない、と言いながら毎回美味しいコーヒーを振舞ってくれる不器用な優しさに心が暖かくなる。救急箱を片付けて彼が座っていたソファーに腰掛けると、僅かに香水の匂いが立つ。
とくり、と跳ねた心臓に向き合う勇気は、まだ無かった。
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DONE🐴ラジオネタの左寂好きなアイスの名前を知らない理由を妄想してみた
スマホの通知でそれを思い出し、そのまま画面をスライドしてアプリを呼び出した。自分も少し前に出演した番組は、今日は彼が出演する番だ。
お便りに彼らしく答えていく様子を聞きながらコーヒーを啜る。あまり美味しく感じないのは、彼の淹れてくれるものと比べてしまうからだろうか。
“あとなんだあの……”
おや、と思い、トークアプリを開いてメッセージを一つ送った。
『名前、知らなかったんだね』
そのまま番組を聴きながら、冷凍庫に向かい例のアイスを出してきて、一口齧る。優しいミルクの甘さと果物の甘酸っぱさ、小豆の甘さが絶妙なバランスで混ざり合うそれは、暑い時期にはつい買ってしまう我が家の定番だ。食べ終わる頃には番組も終わり、端末がポン、と音を立てた。
473お便りに彼らしく答えていく様子を聞きながらコーヒーを啜る。あまり美味しく感じないのは、彼の淹れてくれるものと比べてしまうからだろうか。
“あとなんだあの……”
おや、と思い、トークアプリを開いてメッセージを一つ送った。
『名前、知らなかったんだね』
そのまま番組を聴きながら、冷凍庫に向かい例のアイスを出してきて、一口齧る。優しいミルクの甘さと果物の甘酸っぱさ、小豆の甘さが絶妙なバランスで混ざり合うそれは、暑い時期にはつい買ってしまう我が家の定番だ。食べ終わる頃には番組も終わり、端末がポン、と音を立てた。
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DONEいちゃつくふたりはかわいいな(https://odaibako.net/gacha/1221)さんのお題で書いた左寂リビングのドアを開けると、ジュウ…と何かを焼いている音がした。キッチンに立つ背中に声をかける。
「おはよう、左馬刻くん」
「……あ」
白い頭がこちらを振り向こうとして、動きが止まった。フライパンの方をしばし見つめて諦めたように卵の殻を捨てたので、どうやら声をかけるタイミングが悪かったようだ。
「…おはよ、先生。悪りぃけど、パンの方頼むわ」
少し憮然としつつも挨拶を返してきた彼に頼まれた通り、トースターに食パンを2枚セットした。彼が淹れてくれていたコーヒーを机に並べているうちに、チン、と高い音が鳴る。椅子に座ると、左馬刻くんが目玉焼きの皿を持ってきた。
(おや?)
私の目の前には、いつもと変わらない、白の楕円に真ん丸の黄身が浮かんだ目玉焼き。それでは、と左馬刻くんの皿を見ると、黄身がぐしゃりと崩れた目玉焼きが乗っていた。思わず、笑みが溢れる。
444「おはよう、左馬刻くん」
「……あ」
白い頭がこちらを振り向こうとして、動きが止まった。フライパンの方をしばし見つめて諦めたように卵の殻を捨てたので、どうやら声をかけるタイミングが悪かったようだ。
「…おはよ、先生。悪りぃけど、パンの方頼むわ」
少し憮然としつつも挨拶を返してきた彼に頼まれた通り、トースターに食パンを2枚セットした。彼が淹れてくれていたコーヒーを机に並べているうちに、チン、と高い音が鳴る。椅子に座ると、左馬刻くんが目玉焼きの皿を持ってきた。
(おや?)
私の目の前には、いつもと変わらない、白の楕円に真ん丸の黄身が浮かんだ目玉焼き。それでは、と左馬刻くんの皿を見ると、黄身がぐしゃりと崩れた目玉焼きが乗っていた。思わず、笑みが溢れる。
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DONEいちゃいちゃちゅっちゅガチャ(https://odaibako.net/gacha/1317)さんのお題で書いた左寂左馬刻くんの背中には、小さな古傷がある。
職業柄生傷の絶えない体だが、一際古いその傷は大きさからも付けられたと思われる時期からも、彼が小さい子供だった頃のものだろう。誰かを…恐らく、妹さんを庇って、背中に受けたのであろうと、容易に想像がつく。
ふと、左馬刻くんが目の前にいる奇跡に胸が熱くなり、小さな傷に唇を寄せた。
「んだよ先生、足りなかったか?」
「…そうだね。もっと、君が欲しいな」
この幸せな時間は、さまざまな奇跡の上で成り立っているのだから。
226職業柄生傷の絶えない体だが、一際古いその傷は大きさからも付けられたと思われる時期からも、彼が小さい子供だった頃のものだろう。誰かを…恐らく、妹さんを庇って、背中に受けたのであろうと、容易に想像がつく。
ふと、左馬刻くんが目の前にいる奇跡に胸が熱くなり、小さな傷に唇を寄せた。
「んだよ先生、足りなかったか?」
「…そうだね。もっと、君が欲しいな」
この幸せな時間は、さまざまな奇跡の上で成り立っているのだから。
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DONE情けない攻めはかわいいねガチャ(https://odaibako.net/gacha/1462)さんのお題で書いた左寂
シンジュクの近くで発生した野暮用が早く終わり、合鍵でふらりと上がり込んだ先生の家。電気が付いている割に気配が薄いと思ったら案の定、ソファですうすうと寝息を立てる先生がいた。膝の上に本があるところを見ると、読んでいるうちに寝てしまったのか。
(案外、世話が焼けるんだよな)
勝手知ったる他人の家、寝室からブランケットを取ってきて細長い体にかけてやり、本をテーブルに置く。
「んん…」
不意に漏れた吐息に、先日の甘い夜を思い出し、下腹が疼いた。
「あんまり無防備にしてると、食っちまうぞ」
聞いていないのを良いことに小さく呟く。とはいえ読書中に寝てしまうほど疲れているだろう先生に無理をさせる気はない。メシでも作っておくかとキッチンに向かう。
513(案外、世話が焼けるんだよな)
勝手知ったる他人の家、寝室からブランケットを取ってきて細長い体にかけてやり、本をテーブルに置く。
「んん…」
不意に漏れた吐息に、先日の甘い夜を思い出し、下腹が疼いた。
「あんまり無防備にしてると、食っちまうぞ」
聞いていないのを良いことに小さく呟く。とはいえ読書中に寝てしまうほど疲れているだろう先生に無理をさせる気はない。メシでも作っておくかとキッチンに向かう。
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DONEいちゃいちゃちゅっちゅガチャ(https://odaibako.net/gacha/1317)さんのお題で書いた左寂ふと、瞼が軽くなるのを感じ、何かに引っ張られるように意識が覚醒する。
オレンジの小さな光を頼りにベッドサイドの時計を見ると、深夜2時の表示。
(中途半端な時間に起きてしまった)
隣で静かに眠る左馬刻くんを起こさぬよう慎重に、時計の隣のペットボトルを取った。生ぬるい水が乾いた喉と身体を潤してくれる。
何気なく視線を落とすと、身体のあちこちに赤い痕が散らばっているのが見えた。とはいえいつもの服で隠れる範囲ではあるし、何より意識を失う前まで体液に塗れていたと記憶しているが、それが綺麗に拭われている。
左馬刻くんの優しさに、胸の奥がじわりと暖かくなる。
(夜が明けなければ、いいのに)
自然と浮かんできた思いに、自分でも少し驚いた。
622オレンジの小さな光を頼りにベッドサイドの時計を見ると、深夜2時の表示。
(中途半端な時間に起きてしまった)
隣で静かに眠る左馬刻くんを起こさぬよう慎重に、時計の隣のペットボトルを取った。生ぬるい水が乾いた喉と身体を潤してくれる。
何気なく視線を落とすと、身体のあちこちに赤い痕が散らばっているのが見えた。とはいえいつもの服で隠れる範囲ではあるし、何より意識を失う前まで体液に塗れていたと記憶しているが、それが綺麗に拭われている。
左馬刻くんの優しさに、胸の奥がじわりと暖かくなる。
(夜が明けなければ、いいのに)
自然と浮かんできた思いに、自分でも少し驚いた。
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DONE簓目線の左寂。えーあーるびーのイベストネタ。
--『黒曜石の髪飾り』を手に入れました--
モンスターをやっつけてすぐ、視界の端にそんなメッセージが浮かび上がった。剣をなおした左馬刻が手を出すと、手袋の上に黒い石が2つ。
「アイテムゲット!やね〜」
「攻撃力を強化する効果があるようですね」
「それやったら、左馬刻が着けとくんがええな」
「おう」
黒い石を持ったまま、左馬刻が神宮寺先生の方をチラリと見る。視線に気づいた神宮寺先生が、左馬刻の手から黒い石を取った。
(何で、先生が?)
謎の行動をとる2人に戸惑っていると、神宮寺先生が左馬刻の三つ編みの留め具に触れた。
「せっかくだから、編み直しますね」
「頼むわ」
(何やねん、この空気は。編み直し?)
声に出さずに突っ込んでいるうちに、留め具が消えて緩く解けた左馬刻の三つ編みを、神宮寺先生が編み直していく。当たり前〜みたいな雰囲気出しとるけど、左馬刻、そんなん他人にさせるキャラちゃうやろ!?
835モンスターをやっつけてすぐ、視界の端にそんなメッセージが浮かび上がった。剣をなおした左馬刻が手を出すと、手袋の上に黒い石が2つ。
「アイテムゲット!やね〜」
「攻撃力を強化する効果があるようですね」
「それやったら、左馬刻が着けとくんがええな」
「おう」
黒い石を持ったまま、左馬刻が神宮寺先生の方をチラリと見る。視線に気づいた神宮寺先生が、左馬刻の手から黒い石を取った。
(何で、先生が?)
謎の行動をとる2人に戸惑っていると、神宮寺先生が左馬刻の三つ編みの留め具に触れた。
「せっかくだから、編み直しますね」
「頼むわ」
(何やねん、この空気は。編み直し?)
声に出さずに突っ込んでいるうちに、留め具が消えて緩く解けた左馬刻の三つ編みを、神宮寺先生が編み直していく。当たり前〜みたいな雰囲気出しとるけど、左馬刻、そんなん他人にさせるキャラちゃうやろ!?
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DONE強い受けガチャ(https://odaibako.net/gacha/1260)さんのお題で書いた左寂ピリリリリ……と鳴り響いた高い電子音で目が覚めた。俺より先に起き出した先生が電話を取る。何度となく聞いた、病院からの緊急コール。
ラップバトルが必要ない世界になっても、神宮寺寂雷の闘いは続いている。
「はい、はい……分かりました、すぐに」
先生は電話を切りあっという間に服を着て、申し訳無さそうな顔でこちらを振り向いた。
「すまない、左馬刻くん」
「いつもの事じゃねぇか。早く行ってやれよ」
「いつも……君の優しさに、甘えてしまっているね」
「帰ってくるだろ。それだけでいい」
先生の瞳に光が灯る。マイクを構えて向かい合ったあの時と同じ、闘志の光。
「ありがとう左馬刻くん。行ってきます」
「おう」
バタン、と寝室のドアが閉まる。俺はベッドを抜け出して、いつもの煙草に火をつけた。
407ラップバトルが必要ない世界になっても、神宮寺寂雷の闘いは続いている。
「はい、はい……分かりました、すぐに」
先生は電話を切りあっという間に服を着て、申し訳無さそうな顔でこちらを振り向いた。
「すまない、左馬刻くん」
「いつもの事じゃねぇか。早く行ってやれよ」
「いつも……君の優しさに、甘えてしまっているね」
「帰ってくるだろ。それだけでいい」
先生の瞳に光が灯る。マイクを構えて向かい合ったあの時と同じ、闘志の光。
「ありがとう左馬刻くん。行ってきます」
「おう」
バタン、と寝室のドアが閉まる。俺はベッドを抜け出して、いつもの煙草に火をつけた。
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DONE強い受けガチャ(https://odaibako.net/gacha/1260)さんのお題で書いた左寂「悪りぃ先生、待たせた、な……」
寂雷の足元に柄の悪い男が三人ほど倒れていることに気づき、左馬刻の声が低く沈む。
「ああ、左馬刻くん。大して待っていませんから、気にしないでいいよ」
「怪我はねぇだろうな」
「ええ」
怪我どころか服装一つ乱れていない事を確認し、左馬刻は倒れている男たちに目を向けた。マイクを持っていないところを見ると腕力でなら寂雷に勝てると思ったのだろうか。
(馬鹿な奴らだ)
完全に気絶している3人の中で一番近いところにいた男の胸ぐらを掴み上げようとしたところで、「左馬刻くん」と穏やかな声が響いた。
「恥ずかしながら、お腹が空いてしまってね。早く、帰らないかい?」
寂雷の視線に“色”を感じ、左馬刻は倒れている男達の事が完全に頭から消えた。細い腰に手を回すと抵抗なくこちらに寄り添われ、腹の底がむず痒くなる。
515寂雷の足元に柄の悪い男が三人ほど倒れていることに気づき、左馬刻の声が低く沈む。
「ああ、左馬刻くん。大して待っていませんから、気にしないでいいよ」
「怪我はねぇだろうな」
「ええ」
怪我どころか服装一つ乱れていない事を確認し、左馬刻は倒れている男たちに目を向けた。マイクを持っていないところを見ると腕力でなら寂雷に勝てると思ったのだろうか。
(馬鹿な奴らだ)
完全に気絶している3人の中で一番近いところにいた男の胸ぐらを掴み上げようとしたところで、「左馬刻くん」と穏やかな声が響いた。
「恥ずかしながら、お腹が空いてしまってね。早く、帰らないかい?」
寂雷の視線に“色”を感じ、左馬刻は倒れている男達の事が完全に頭から消えた。細い腰に手を回すと抵抗なくこちらに寄り添われ、腹の底がむず痒くなる。
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DONE強い受けガチャ(https://odaibako.net/gacha/1260)さんのお題で書いた左寂「先生、いいよな」
体当たりに近い勢いでベッドに押し倒される。煙草の香りがいつもより強い。
「俺の方が自由がきくから」といつも休みを合わせてくれるが、その分急に仕事が入ることもあるのだろう。紅い瞳は微睡を隠しきれていない。
その背に手を伸ばし少し力を入れると抵抗なく体が落ちてきた。そのまま抱きしめて、ピアスだらけの耳にゆっくり語りかける。
「左馬刻くん、私は逃げないよ。今は、おやすみ」
「けどよ、先生…」
「明日は一日休みだから。今は寝てしまおう」
「ん……明日、覚悟しとけよ…」
左馬刻くんの体がどんどん重くなっていく。起こさないように慎重に、布団を引き寄せ互いにかける。
私も早く寝てしまおう。
明日は朝から、紅い瞳がギラついているはずだから。
327体当たりに近い勢いでベッドに押し倒される。煙草の香りがいつもより強い。
「俺の方が自由がきくから」といつも休みを合わせてくれるが、その分急に仕事が入ることもあるのだろう。紅い瞳は微睡を隠しきれていない。
その背に手を伸ばし少し力を入れると抵抗なく体が落ちてきた。そのまま抱きしめて、ピアスだらけの耳にゆっくり語りかける。
「左馬刻くん、私は逃げないよ。今は、おやすみ」
「けどよ、先生…」
「明日は一日休みだから。今は寝てしまおう」
「ん……明日、覚悟しとけよ…」
左馬刻くんの体がどんどん重くなっていく。起こさないように慎重に、布団を引き寄せ互いにかける。
私も早く寝てしまおう。
明日は朝から、紅い瞳がギラついているはずだから。
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DONE強い受けガチャ(https://odaibako.net/gacha/1260)さんのお題で書いた左→寂この人の手当を受けるのは何度目だろうか。
消毒液の染み込んだコットンが腕の小さな傷を撫でる。なるべく痛みがないように配慮されている丁寧な手つきは、言葉よりも雄弁に「心配」を伝えてくるから、最近は痛みよりもくすぐったさを感じるようになってしまった。
「もう、大丈夫ですよ」
少し体温の低い指が絆創膏を貼る。離れていくその手を取りそうになったが、拳を握りぐっと堪える。
(この“先生”は、誰にでもこうだ)
千手観音の腕を一本手に入れたところで、何の意味もない。
229消毒液の染み込んだコットンが腕の小さな傷を撫でる。なるべく痛みがないように配慮されている丁寧な手つきは、言葉よりも雄弁に「心配」を伝えてくるから、最近は痛みよりもくすぐったさを感じるようになってしまった。
「もう、大丈夫ですよ」
少し体温の低い指が絆創膏を貼る。離れていくその手を取りそうになったが、拳を握りぐっと堪える。
(この“先生”は、誰にでもこうだ)
千手観音の腕を一本手に入れたところで、何の意味もない。
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DONE強い受けガチャ(https://odaibako.net/gacha/1260)さんのお題で書いた左寂「センセー、朝メシできてっぞ」
寝室のドアを開けて呼びかけるも、布団にくるまった寂雷からの返事はない。
(無理させすぎたか……いや、先生も煽ってきたし)
ドス、と少し荒めにベッドに腰掛けた瞬間、強い力で腕を引っ張られ、左馬刻の体がシーツに沈む。
「起きてたのかよ」
「もう少し……ダメ、かな」
いつもより掠れた低い声で囁く寂雷に、左馬刻は早々に白旗を上げてしまう。
「少しだけ、な」
そのまま2人揃って二度寝してしまい、冷めた朝食を温め直したのは1時間後の事だった。
234寝室のドアを開けて呼びかけるも、布団にくるまった寂雷からの返事はない。
(無理させすぎたか……いや、先生も煽ってきたし)
ドス、と少し荒めにベッドに腰掛けた瞬間、強い力で腕を引っ張られ、左馬刻の体がシーツに沈む。
「起きてたのかよ」
「もう少し……ダメ、かな」
いつもより掠れた低い声で囁く寂雷に、左馬刻は早々に白旗を上げてしまう。
「少しだけ、な」
そのまま2人揃って二度寝してしまい、冷めた朝食を温め直したのは1時間後の事だった。
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DONE強い受けガチャ(https://odaibako.net/gacha/1260)さんのお題から発想を受けて書いた左寂寂雷の家には、様々な飴が入ったピンク色のバスケットがある。
物が少ない家の中で目を引くそれはもちろん家主の趣味ではなく、TDDで集まる際乱数が勝手に持ち込んだ物だ。飴は乱数と衢、時折寂雷と一郎が消費してはまた乱数が勝手に補充をしていたが、今、その中身を減らしているのは寂雷と、以前は手をつけなかった左馬刻だけだ。
TDD解散後も寂雷との付き合いは変わらず……むしろ関係が深くなった左馬刻は、寂雷の家に来るたびに一つ、飴を食べるようになった。
その日も左馬刻は時間が空いたから、と寂雷の家にふらりと立ち寄り「仕事中なので少し待っててもらえますか」と言われ、パソコンに向かう寂雷を眺めつつ適当な飴をバスケットから取って、袋も見ずに一つ、口に入れた。
818物が少ない家の中で目を引くそれはもちろん家主の趣味ではなく、TDDで集まる際乱数が勝手に持ち込んだ物だ。飴は乱数と衢、時折寂雷と一郎が消費してはまた乱数が勝手に補充をしていたが、今、その中身を減らしているのは寂雷と、以前は手をつけなかった左馬刻だけだ。
TDD解散後も寂雷との付き合いは変わらず……むしろ関係が深くなった左馬刻は、寂雷の家に来るたびに一つ、飴を食べるようになった。
その日も左馬刻は時間が空いたから、と寂雷の家にふらりと立ち寄り「仕事中なので少し待っててもらえますか」と言われ、パソコンに向かう寂雷を眺めつつ適当な飴をバスケットから取って、袋も見ずに一つ、口に入れた。