summeralley
できた明治大正日本風パロ飯P。最終飯Pですが、前半は空P表現あるし💅も出るし総受け感あるので無理な人は避けてね。
【飯P空P】りんごの庭と鳴けぬ鳥/03ひたき 「あいつ、ずっとここにいればいいよな……」
畑仕事の最中、唐突にお父さんが言った。春が目前に迫り、踏みしめる土もずいぶん湿ってやわらかい。野菜の植え付けはほとんど終わりかけて、あとは片手に持った分だけだ。
「そうですね。ずっと旅してるのも、大変だろうし。故郷の人は、見つかってほしいけど……」
お父さんがピッコロさんを連れてきた秋の日から、もう四ヶ月以上経つ。ピッコロさんは何度も出発しようとしたが、そのたび僕は、冬の旅はよくないから春まで待つよう懇々と説得したり、旅先の話をもっと聞きたいと引き留めたりした。お父さんはもっと強引で、荷物や履き物を隠して空惚けたり、単純に腕にしがみついて出発させないようにしていた。
3135畑仕事の最中、唐突にお父さんが言った。春が目前に迫り、踏みしめる土もずいぶん湿ってやわらかい。野菜の植え付けはほとんど終わりかけて、あとは片手に持った分だけだ。
「そうですね。ずっと旅してるのも、大変だろうし。故郷の人は、見つかってほしいけど……」
お父さんがピッコロさんを連れてきた秋の日から、もう四ヶ月以上経つ。ピッコロさんは何度も出発しようとしたが、そのたび僕は、冬の旅はよくないから春まで待つよう懇々と説得したり、旅先の話をもっと聞きたいと引き留めたりした。お父さんはもっと強引で、荷物や履き物を隠して空惚けたり、単純に腕にしがみついて出発させないようにしていた。
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できた明治大正日本風パロ飯P。最終飯Pですが、前半は空P表現あるし💅も出るし総受け感あるので無理な人は避けてね。
章番02ですが、01はプロローグというか、15年前にワンシーンだけ書きたくて書いた話、その前後を捏造したのが02以降になります。01読まなくても問題ないです。
【飯P空P】りんごの庭と鳴けぬ鳥/02.せきれい お父さんは、自由な人だった。
ふらりと旅に出たかと思えば、手紙のひとつも寄越さず、突然に帰ってくる。一ヶ月戻らない時もあれば、ほんの三日で引き返して来ることもある。身勝手にも思えるが、必ず僕に、旅先で見つけた興味深いものや美しいもの、何もなければ思い出話を持ち帰ってくれたので、寂しさや悲しさを感じることはなかった。
秋の夕まぐれ、お父さんが持ち帰ったものは、これまで見たどんなものより興味深く、そして美しかった。
新芽色の膚と、一目でここいらの出身ではないと分かる面立ち。着物の奥に存在を知らせる手足は長く、全体的にしなやかな印象で、長躯でも威圧感はない。旅姿の割に極端に荷物が少なく、手にしたまっすぐな杖ばかりが無闇と象徴的だった。
3569ふらりと旅に出たかと思えば、手紙のひとつも寄越さず、突然に帰ってくる。一ヶ月戻らない時もあれば、ほんの三日で引き返して来ることもある。身勝手にも思えるが、必ず僕に、旅先で見つけた興味深いものや美しいもの、何もなければ思い出話を持ち帰ってくれたので、寂しさや悲しさを感じることはなかった。
秋の夕まぐれ、お父さんが持ち帰ったものは、これまで見たどんなものより興味深く、そして美しかった。
新芽色の膚と、一目でここいらの出身ではないと分かる面立ち。着物の奥に存在を知らせる手足は長く、全体的にしなやかな印象で、長躯でも威圧感はない。旅姿の割に極端に荷物が少なく、手にしたまっすぐな杖ばかりが無闇と象徴的だった。
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できた明治大正日本風パロ飯P。最終飯Pですが、前半は空P表現あるし💅も出るし総受け感あるので無理な人は避けてね。
【飯P空P】りんごの庭と鳴けぬ鳥/01.うぐいす(序) 陽の光がうらうらと枯木立を濡らす小春日和、市のはずれの平屋の縁に、一心に針を動かす姿がある。姿――ピッコロと言うその異国人――は、桔梗色の紬を袷に仕立てている最中であった。もう半分も縫っただろうか、長い指を動かして端を美しく処理すると、大きな黒いはさみで余った糸を切り落とした。広げてみれば、ひとまず問題のない出来である。
少しばかりの疲れを感じ、縫いかけた着物を軽く畳んで傍らに置く。目を上げて庭を見渡すと、藪椿がささやかなつぼみをつけていた。広くこそないが、よくよく整った庭である。
真竹の四ツ目垣がぐるりを囲み、その内側に、さざんかの生垣が目隠しのように葉を繁らせている。二重に守られた庭にはさまざまの植物が整然と配置され、四季を通してかれの目を楽しませていた。
2794少しばかりの疲れを感じ、縫いかけた着物を軽く畳んで傍らに置く。目を上げて庭を見渡すと、藪椿がささやかなつぼみをつけていた。広くこそないが、よくよく整った庭である。
真竹の四ツ目垣がぐるりを囲み、その内側に、さざんかの生垣が目隠しのように葉を繁らせている。二重に守られた庭にはさまざまの植物が整然と配置され、四季を通してかれの目を楽しませていた。