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DONEすわみず「じゃあ俺はこれで」
水上はそう言って片手を上げると、早足で作戦室を出ていく。
「お疲れさん」
「お疲れさんです」
「お疲れさまでーす!」
「気ぃつけや」
皆の返事を受けた背中はどこかウキウキと楽しげに見える。そんな水上を見送ったあと、隠岐は生駒を振り返って首を傾げた。
「水上先輩、最近帰るの早ないですか?」
「実は俺もそー思っててん」
生駒も同様に首を傾げる。2人してハテナを頭に浮かべたとき、南沢が元気よく手を上げた。
「はいはいはーい!おれ知ってます!すわさんと将棋してるらしいです!」
「え、ホンマに?」
「あ、これ言っちゃダメなんだっけ?」
南沢はハッと口に手を当てる。けれどすぐに「まぁもう言っちゃったものは仕方がないですよね!」と舌を出して笑った。「いやアカンやろ」と細井が呆れた視線を向けた。
1544水上はそう言って片手を上げると、早足で作戦室を出ていく。
「お疲れさん」
「お疲れさんです」
「お疲れさまでーす!」
「気ぃつけや」
皆の返事を受けた背中はどこかウキウキと楽しげに見える。そんな水上を見送ったあと、隠岐は生駒を振り返って首を傾げた。
「水上先輩、最近帰るの早ないですか?」
「実は俺もそー思っててん」
生駒も同様に首を傾げる。2人してハテナを頭に浮かべたとき、南沢が元気よく手を上げた。
「はいはいはーい!おれ知ってます!すわさんと将棋してるらしいです!」
「え、ホンマに?」
「あ、これ言っちゃダメなんだっけ?」
南沢はハッと口に手を当てる。けれどすぐに「まぁもう言っちゃったものは仕方がないですよね!」と舌を出して笑った。「いやアカンやろ」と細井が呆れた視線を向けた。
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DONEすわみず…水上視点オフィス(ビル)ラブパロ
会社近くの公園は昨今の少子化や騒音問題も相まって人気が無い。オフィスの立ち並ぶ区画にポツリと存在しているせいでもある。
ベンチは気持ちばかりに一つだけ、公園とも名ばかりなその場所が水上のお気に入りだった。昼休みはその一つしかないベンチを牛耳り脳裏で将棋を指す。
今日もいつものように公園を訪れる。
しかし、普段とは違いベンチには人影があった。珍し、と眉を顰めつつ近づく。その人物が居座りそうであるならば引き返すが、もしも立ち去るようであれば利用したい。それを確認しようとするほどには、一息つける気に入りの場所であるので。
僅かに見えるカッターシャツに、自身と同様に近くの会社の社員だろうと当たりをつける。
3439ベンチは気持ちばかりに一つだけ、公園とも名ばかりなその場所が水上のお気に入りだった。昼休みはその一つしかないベンチを牛耳り脳裏で将棋を指す。
今日もいつものように公園を訪れる。
しかし、普段とは違いベンチには人影があった。珍し、と眉を顰めつつ近づく。その人物が居座りそうであるならば引き返すが、もしも立ち去るようであれば利用したい。それを確認しようとするほどには、一息つける気に入りの場所であるので。
僅かに見えるカッターシャツに、自身と同様に近くの会社の社員だろうと当たりをつける。
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DONEすわみず…生駒視点こくはく「あの、イコさん、ちょっとえぇですか?」
遠慮がちに声をかけてきた水上に、なんや珍しいなと思う。
先程防衛任務を終えたばかりだが、作戦室に他の面々の姿はない。もう陽も翳り夕飯時、各々帰路に着いた。俺は報告書の作成で残っていたに過ぎん。この後特に用事もなかった。
「えぇよ」と返すが、水上はもごもごと口を動かすだけで一向に用件を伝えてはくれない。心なしか頬も赤い気がする。
(これは…!もしかして、告白、というやつやない?)
『んなわけあるかい』と脳内の水上にツッコまれる。
(いやいや分かってるよ。水上くんが俺のことを慕ってくれてんのは、そういうんやないっていうのは。冗談や冗談)
『それならえぇですけど』と脳内の水上は許してくれて茶番劇は幕を下ろす。けれど目の前の水上は相変わらず黙ったままだ。
1479遠慮がちに声をかけてきた水上に、なんや珍しいなと思う。
先程防衛任務を終えたばかりだが、作戦室に他の面々の姿はない。もう陽も翳り夕飯時、各々帰路に着いた。俺は報告書の作成で残っていたに過ぎん。この後特に用事もなかった。
「えぇよ」と返すが、水上はもごもごと口を動かすだけで一向に用件を伝えてはくれない。心なしか頬も赤い気がする。
(これは…!もしかして、告白、というやつやない?)
『んなわけあるかい』と脳内の水上にツッコまれる。
(いやいや分かってるよ。水上くんが俺のことを慕ってくれてんのは、そういうんやないっていうのは。冗談や冗談)
『それならえぇですけど』と脳内の水上は許してくれて茶番劇は幕を下ろす。けれど目の前の水上は相変わらず黙ったままだ。
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DONEすわみず…水上視点バレンタインに因んでチョコの話。
真似 大型ショッピングモールはバレンタインを控え、多くの女性客で賑わっている。
装飾もハートを中心に、あちらこちらでバレンタインを主張していた。
水上は世界各国から有名どころが集まると売りの催事を横目に通り過ぎ、ソファに座り込む。端の方だからか、人気はない。
この催事でしか手に入らないチョコレートを買うのだという同級生に付き添い男数人で人混みに突撃したものの、元から甘いものがそう得意ではない水上は手持ち無沙汰になって1人離脱した。
グループメッセージに別で時間を潰すと書き残しスマホをポケットにしまう。
まだまだ時間はかかるだろう。
本屋にでも行こうかと顔をあげると、近くに駄菓子屋のテイを模した菓子屋があった。
661装飾もハートを中心に、あちらこちらでバレンタインを主張していた。
水上は世界各国から有名どころが集まると売りの催事を横目に通り過ぎ、ソファに座り込む。端の方だからか、人気はない。
この催事でしか手に入らないチョコレートを買うのだという同級生に付き添い男数人で人混みに突撃したものの、元から甘いものがそう得意ではない水上は手持ち無沙汰になって1人離脱した。
グループメッセージに別で時間を潰すと書き残しスマホをポケットにしまう。
まだまだ時間はかかるだろう。
本屋にでも行こうかと顔をあげると、近くに駄菓子屋のテイを模した菓子屋があった。
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DONEすわみず…諏訪視点将棋盤の神様こぼれ話。
それを何と呼ぶ 雨が降っている。
この冷え込みではそろそろ雪へと変わるだろう。
垣根の椿はしとどになり、明日の明けを待たずに地へ落ちる。赤く色づいていた様子が見事であっただけに残念だ。
はて、この感情はどの代の当主から教わったのだったか。
そんなことを考えながら窓から視線を戻す。
眼前で悩み唸る現当主はそれに気づくことなく朝を迎えるだろう。そうして、落ちた椿に雪が積もるのを見て彼もまた、残念に思うのだろうか。
パチリと駒音が響く。
それを一暼、すぐにパチリと返してやると、家主は唸って宙を仰ぎ、石油ストーブの火にかけたヤカンのお湯がグラグラと音を立てていることに気がついた。
「ちょお待ってや」と言うと準備していた急須に注ぐ。正しい茶の淹れ方など知らず、ただただ熱い茶の入った湯呑みを2つ作る。
593この冷え込みではそろそろ雪へと変わるだろう。
垣根の椿はしとどになり、明日の明けを待たずに地へ落ちる。赤く色づいていた様子が見事であっただけに残念だ。
はて、この感情はどの代の当主から教わったのだったか。
そんなことを考えながら窓から視線を戻す。
眼前で悩み唸る現当主はそれに気づくことなく朝を迎えるだろう。そうして、落ちた椿に雪が積もるのを見て彼もまた、残念に思うのだろうか。
パチリと駒音が響く。
それを一暼、すぐにパチリと返してやると、家主は唸って宙を仰ぎ、石油ストーブの火にかけたヤカンのお湯がグラグラと音を立てていることに気がついた。
「ちょお待ってや」と言うと準備していた急須に注ぐ。正しい茶の淹れ方など知らず、ただただ熱い茶の入った湯呑みを2つ作る。
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DONEすわみず…水上視点ポメガバース(あかんあかんあかん、やってもーた!)
水上は1人、頭を抱えたい気持ちで自販機を見上げた。そう、見上げている。
視点は低く、ボタンどころかお釣りの出口さえ届かない。頭を抱えようにも手足はちんまりとしており、体はもふもふとした毛に覆われている。
水上は今、ポメラニアンになっている。
多少、疲れている自覚はあった。
テストを終えてすぐの防衛任務、任務時のトラブルとその報告書の作成をする生駒の手伝い、そこからランク戦へ向けての情報収集…。
寮がボーダー内にあり、保護者もいない。注意されないのをいいことに遅くまで残っていた。自分の体調管理を怠った気持ちはないけれど、どうやら自分が思っていた以上に身体の方は限界であったらしい。
5289水上は1人、頭を抱えたい気持ちで自販機を見上げた。そう、見上げている。
視点は低く、ボタンどころかお釣りの出口さえ届かない。頭を抱えようにも手足はちんまりとしており、体はもふもふとした毛に覆われている。
水上は今、ポメラニアンになっている。
多少、疲れている自覚はあった。
テストを終えてすぐの防衛任務、任務時のトラブルとその報告書の作成をする生駒の手伝い、そこからランク戦へ向けての情報収集…。
寮がボーダー内にあり、保護者もいない。注意されないのをいいことに遅くまで残っていた。自分の体調管理を怠った気持ちはないけれど、どうやら自分が思っていた以上に身体の方は限界であったらしい。
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DONEすわみず…水上視点未練 諏訪さんと別れた。
見えないふりをしていた小さな綻びが、無視できないくらいになって。このままじゃあかんと、俺から切り出した。決して嫌いになったわけやない。諏訪さんもそれに気づいてたから引き下がってきたけれど、俺はガンとして譲らんかった。
このままやとダメんなる、そう思ったから。
振り返ればそれなりに長いこと付き合うてて、俺の部屋には諏訪さんの私物が増えていた。逆もまた然り、諏訪さんの家には俺の私物があって、先週はそれを引き取りに行った。合鍵はまだ持ってたから家主が居ないうちに片付けた。
今日は諏訪さんが俺の部屋に来た。俺が居らん時に勝手に持って帰ってもらいたかったのが本音やけど、諏訪さんは最後だからと言った。
1030見えないふりをしていた小さな綻びが、無視できないくらいになって。このままじゃあかんと、俺から切り出した。決して嫌いになったわけやない。諏訪さんもそれに気づいてたから引き下がってきたけれど、俺はガンとして譲らんかった。
このままやとダメんなる、そう思ったから。
振り返ればそれなりに長いこと付き合うてて、俺の部屋には諏訪さんの私物が増えていた。逆もまた然り、諏訪さんの家には俺の私物があって、先週はそれを引き取りに行った。合鍵はまだ持ってたから家主が居ないうちに片付けた。
今日は諏訪さんが俺の部屋に来た。俺が居らん時に勝手に持って帰ってもらいたかったのが本音やけど、諏訪さんは最後だからと言った。
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DONEすわみず…水上視点パラレル。神様×人間。
将棋盤の神様 家の蔵は父の隠れ家であった。
広い敷地の片隅にあるその蔵は、年季の入った見かけの割に中は綺麗で、婿養子であった父が望んだ唯一の我儘でリフォームされていた。例えば目隠しでもされて入れば蔵だとは分からないくらい立派に。水上も小さな頃からそこに入り浸り、父と一緒に将棋を指したものだった。
けれど、それを似た物同士ねと笑う母も、水上に負けて参りましたと悔しがる父も、もういない。交通事故に巻き込まれて亡くなってしまった。水上が大学を機に家を出て就職が決まった報告をしたばかりの出来事であった。
結局、会社へ辞退の旨を伝えて実家へ戻ってきた。両親の遺した遺産はしばらく生活することに困らないほどで、ありがたくそれを使いながら過ごしたいと思っていた。祖父母は水上が小さな頃には既に鬼籍に入っていたし、もう恩を返したい親はいない。必要最低限の生活ができれば、それでよかった。
3541広い敷地の片隅にあるその蔵は、年季の入った見かけの割に中は綺麗で、婿養子であった父が望んだ唯一の我儘でリフォームされていた。例えば目隠しでもされて入れば蔵だとは分からないくらい立派に。水上も小さな頃からそこに入り浸り、父と一緒に将棋を指したものだった。
けれど、それを似た物同士ねと笑う母も、水上に負けて参りましたと悔しがる父も、もういない。交通事故に巻き込まれて亡くなってしまった。水上が大学を機に家を出て就職が決まった報告をしたばかりの出来事であった。
結局、会社へ辞退の旨を伝えて実家へ戻ってきた。両親の遺した遺産はしばらく生活することに困らないほどで、ありがたくそれを使いながら過ごしたいと思っていた。祖父母は水上が小さな頃には既に鬼籍に入っていたし、もう恩を返したい親はいない。必要最低限の生活ができれば、それでよかった。
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DONEすわみず…水上視点馨香 例えば人と擦れ違うときの香水であるとか、柔軟剤であるとか。はたまた体育の授業の後の制汗剤であるとか。特別に意識していなくても何となくこの香りはこの人の香りだなと感じることがある。
所謂体臭、臭いといっても良いのだが、[[rb:臭 > にお]]いという表現はまるで[[rb:臭 > くさ]]いかのように思えてしまうので、好ましい厭わしいにかかわらず、ここではあえて香りとしたい。閑話休題。
嗅覚が死んでいない限り、その香りからは逃れられない。
水上は五体満足健康体であるので、別に優れてもいないが十分に機能する嗅覚は備わっている。であるので、先に述べたように香りというものから逃れる術はない。
3359所謂体臭、臭いといっても良いのだが、[[rb:臭 > にお]]いという表現はまるで[[rb:臭 > くさ]]いかのように思えてしまうので、好ましい厭わしいにかかわらず、ここではあえて香りとしたい。閑話休題。
嗅覚が死んでいない限り、その香りからは逃れられない。
水上は五体満足健康体であるので、別に優れてもいないが十分に機能する嗅覚は備わっている。であるので、先に述べたように香りというものから逃れる術はない。