oimo_1025
DOODLE【了尊?】霊媒体質?な尊の話たぶん現パロ。冒頭出会い編ですが続くかは分かりません。
その日は尊にとって、なんということのない一日として終わるはずだった。
いつも通りのバイト帰り、普段と違っていたのは近所の交差点に人だかりができていたことだ。歩道に乗り上げた車は酷くひしゃげていて、誰が見ても事故だと分かる。運転手らしき男は項垂れて路傍に座り込んでいたが、事故の相手と思しき車や人は見当たらない。少し前に救急車が走っていったのはこれのせいかもしれないと思いながら、しかしどうすることもできない上に人の不幸に対して野次馬をするような趣向も持ち合わせていない尊は、ちらりと一瞥した後足早にその場を立ち去ろうとした。その時だった。
──ひどく綺麗な男が立っていた。丁度事故を起こした男が立っている側だ。青みがかった銀色の髪に、透明感のある白い肌。長い睫毛に縁取られた瞳は蒼穹を思わせるほどに澄んでいて、その顔立ちだけでなく、雰囲気が。どこか現実離れして見えて、瞬間的に綺麗だと思うと同時に尊はぎくりと足を止めた。
4075その日は尊にとって、なんということのない一日として終わるはずだった。
いつも通りのバイト帰り、普段と違っていたのは近所の交差点に人だかりができていたことだ。歩道に乗り上げた車は酷くひしゃげていて、誰が見ても事故だと分かる。運転手らしき男は項垂れて路傍に座り込んでいたが、事故の相手と思しき車や人は見当たらない。少し前に救急車が走っていったのはこれのせいかもしれないと思いながら、しかしどうすることもできない上に人の不幸に対して野次馬をするような趣向も持ち合わせていない尊は、ちらりと一瞥した後足早にその場を立ち去ろうとした。その時だった。
──ひどく綺麗な男が立っていた。丁度事故を起こした男が立っている側だ。青みがかった銀色の髪に、透明感のある白い肌。長い睫毛に縁取られた瞳は蒼穹を思わせるほどに澄んでいて、その顔立ちだけでなく、雰囲気が。どこか現実離れして見えて、瞬間的に綺麗だと思うと同時に尊はぎくりと足を止めた。
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DOODLE夜に魘される了見と尊の話指先は触れ合わず それは決まって、『あの日』の夜に起こる。
海に面したこの家、特に海側にあるこの部屋は、眠る時でも微かに波のさざなみが鼓膜を揺らす。尊も尊の隣で眠る男も鼾をかくタイプではないから、その寝息が波音を遮ることはない。しかし時折、それを遮る音がある。
「……」
尊はベッドの上で身じろぎをして寝返りを打った。枕元に置いてある目覚まし時計を見るまでもなく、まだ深夜であるのがわかる。カーテン越しに差し込む月明かりだけが部屋の中に射していた。尊は布団の中から緩やかに光を透過してくる不思議な窓ガラスを眺めた。ブラインド機能を有したその窓は日中は紫外線だけを遮り、夜になると海に反射して割と眩しい月明かりをほどほどに減光してくれる。真っ暗にすることも可能なのだそうだが、そこは暗闇を不得手とする尊にあわせて配慮されているのだろう。
3256海に面したこの家、特に海側にあるこの部屋は、眠る時でも微かに波のさざなみが鼓膜を揺らす。尊も尊の隣で眠る男も鼾をかくタイプではないから、その寝息が波音を遮ることはない。しかし時折、それを遮る音がある。
「……」
尊はベッドの上で身じろぎをして寝返りを打った。枕元に置いてある目覚まし時計を見るまでもなく、まだ深夜であるのがわかる。カーテン越しに差し込む月明かりだけが部屋の中に射していた。尊は布団の中から緩やかに光を透過してくる不思議な窓ガラスを眺めた。ブラインド機能を有したその窓は日中は紫外線だけを遮り、夜になると海に反射して割と眩しい月明かりをほどほどに減光してくれる。真っ暗にすることも可能なのだそうだが、そこは暗闇を不得手とする尊にあわせて配慮されているのだろう。
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DOODLEふんわりしすぎた設定の上、兄弟の意味あったか?みたいになった気がしなくもないです。了尊兄弟パロ兄弟パロ
了見には一人、弟がいる。名前は尊。この世でたった一人、大切な家族だ。
その弟が最近おかしいのだ。具体的に言えば少し前から様子がおかしくなったように思う。
「尊がおかしい」
開口一番そう言うと、目の前の少年は呆れたように溜め息を吐いた。
「いきなりどうした……」
呆れたような声でそう言ったのは、藤木遊作という名の少年だった。彼は了見の友人であり、尊の同級生でもある。
了見がカフェナギの常連であるため、こうして放課後に落ち合うことは珍しいことではなかった。今日もいつものように他愛のない話をしていた筈なのだが、ふと先日の出来事を思い出してしまいつい相談してしまったのである。
ちなみに件の弟は今日はいない。用があるから少し遅くなるらしい。用とはなんだと聞いても返信はなかった。
8139了見には一人、弟がいる。名前は尊。この世でたった一人、大切な家族だ。
その弟が最近おかしいのだ。具体的に言えば少し前から様子がおかしくなったように思う。
「尊がおかしい」
開口一番そう言うと、目の前の少年は呆れたように溜め息を吐いた。
「いきなりどうした……」
呆れたような声でそう言ったのは、藤木遊作という名の少年だった。彼は了見の友人であり、尊の同級生でもある。
了見がカフェナギの常連であるため、こうして放課後に落ち合うことは珍しいことではなかった。今日もいつものように他愛のない話をしていた筈なのだが、ふと先日の出来事を思い出してしまいつい相談してしまったのである。
ちなみに件の弟は今日はいない。用があるから少し遅くなるらしい。用とはなんだと聞いても返信はなかった。
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DOODLE風邪でぶっ倒れた了見くんの話穂村尊奮闘記 了見が体調を崩したらしい。そう尊が聞かされたのは、彼と会う約束をしていた当日の朝だった。
『体調が優れない。今日は来ないでくれ』とだけ書記された書き記された簡素なメールには、謝罪も埋め合わせについても書かれていない。元々肝心なところで言葉の足りない男ではあったけれど、さすがに予定がキャンセルにされた時にここまでの短文で済まされるのは珍しかった。それだけ体調が悪いということなのだろうかと思うと、少々気にもなってくる。
メールに了承の返信はしたもののどうにも気になり、もやもやと引っ掛かるものがある。それをなんだろうと尊が首を傾げていると、ふと部屋の壁に掛けられたカレンダーを見て、思わず「あっ」と声が出た。
5816『体調が優れない。今日は来ないでくれ』とだけ書記された書き記された簡素なメールには、謝罪も埋め合わせについても書かれていない。元々肝心なところで言葉の足りない男ではあったけれど、さすがに予定がキャンセルにされた時にここまでの短文で済まされるのは珍しかった。それだけ体調が悪いということなのだろうかと思うと、少々気にもなってくる。
メールに了承の返信はしたもののどうにも気になり、もやもやと引っ掛かるものがある。それをなんだろうと尊が首を傾げていると、ふと部屋の壁に掛けられたカレンダーを見て、思わず「あっ」と声が出た。
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DOODLEいけるひと桜に攫われる系のよくあるやつ。※尊の両親的なものが出て来て喋るので、無味寄りだとは思うのですが一応注意です。
「――――ッ」
尊が布団を蹴飛ばすのと意識が覚醒するのはほとんど同時だった。
デンシティに住む大半の住民が眠りの中にいるだろうと思しき深夜のことだ。尊は時折、今のような寝苦しさに眠りを妨げられて飛び起きる。理由は大抵の場合が悪夢で、内容は過去の苦しんだ記憶であることもあれば、全く無関係ながら嫌な気持ちになるもの、嫌だったことは記憶しているが起きた瞬間に内容が飛んでしまっているものまで様々だった。
悪夢全ての起因がロスト事件の後遺症によるものばかりというわけでもないが、それでも少なからず悪夢を見やすいことについて、その頃の影響は幾許かあるようにも思う。だとしても、昔よりはずっと回数は減っているから尊自身としては「今日は見ちゃったか」と思える程度にはなってきているのだが。少なくともこの街に来て様々な経験を経た今は、膝を抱えて自分を責めるようなことはしなくなっていた。
10338「――――ッ」
尊が布団を蹴飛ばすのと意識が覚醒するのはほとんど同時だった。
デンシティに住む大半の住民が眠りの中にいるだろうと思しき深夜のことだ。尊は時折、今のような寝苦しさに眠りを妨げられて飛び起きる。理由は大抵の場合が悪夢で、内容は過去の苦しんだ記憶であることもあれば、全く無関係ながら嫌な気持ちになるもの、嫌だったことは記憶しているが起きた瞬間に内容が飛んでしまっているものまで様々だった。
悪夢全ての起因がロスト事件の後遺症によるものばかりというわけでもないが、それでも少なからず悪夢を見やすいことについて、その頃の影響は幾許かあるようにも思う。だとしても、昔よりはずっと回数は減っているから尊自身としては「今日は見ちゃったか」と思える程度にはなってきているのだが。少なくともこの街に来て様々な経験を経た今は、膝を抱えて自分を責めるようなことはしなくなっていた。
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DOODLE記憶喪失りょの話。Lost 記憶喪失になった、らしい。正確には記憶障害というのだが。
わたしは事故に遭って数日の間、生死の境をさまよっていたようだ。それを病室で目覚めた際や、その後も甲斐甲斐しく病室に通い看病をしてくれていた人物――スペクターと自らを名乗ったのでそう呼んでいる。敬称をつけたらやめて欲しいと懇願され、よく分からないまま呼び捨てることになった――が丁寧に説明してくれた。
彼はわたしの家で生活している同居人だった。仕事上では秘書のような存在なのだと聞かされたが、まるで身に覚えのない話で、本当に自分の話なのかと疑ってしまう。しかし彼の他にも、後から現れた父の知人だと主張する男女三人からも同様の話を聞かされたので、どうやら本当の話らしい。
2776わたしは事故に遭って数日の間、生死の境をさまよっていたようだ。それを病室で目覚めた際や、その後も甲斐甲斐しく病室に通い看病をしてくれていた人物――スペクターと自らを名乗ったのでそう呼んでいる。敬称をつけたらやめて欲しいと懇願され、よく分からないまま呼び捨てることになった――が丁寧に説明してくれた。
彼はわたしの家で生活している同居人だった。仕事上では秘書のような存在なのだと聞かされたが、まるで身に覚えのない話で、本当に自分の話なのかと疑ってしまう。しかし彼の他にも、後から現れた父の知人だと主張する男女三人からも同様の話を聞かされたので、どうやら本当の話らしい。