@looksick
SPOILER抗う者達⑥の続き。抗う者達⑦ ──だというのに。
何かが、何かがそびえ立っている。
「……うげぇ……」
呆然と、えべたんが呟いた。
突風に見舞われ、避けるために入った洞窟の中で、四人はそれを見つけた。
奇妙な生物の化石だった。
身の丈は2.5メートルほどか。
胴体は表面が畝のようになっている樽と表現すればいいか、細い腕が放射状に突き出ており、胴体の頂と底にはコブもしくか球根に見えなくもないものが生えている。
「古代の海底生物みたいな姿だな」
杉山が言う。
「あー、なんかそんな感じに見える。古代生物って大体変なフォルムしてるよね」
納得してうなずくえべたん。
「……本当にそう思うか?」
八木山の言葉に杉山はため息をついた。
「お前はまたそう不安がらせるようなとを言う」
6737何かが、何かがそびえ立っている。
「……うげぇ……」
呆然と、えべたんが呟いた。
突風に見舞われ、避けるために入った洞窟の中で、四人はそれを見つけた。
奇妙な生物の化石だった。
身の丈は2.5メートルほどか。
胴体は表面が畝のようになっている樽と表現すればいいか、細い腕が放射状に突き出ており、胴体の頂と底にはコブもしくか球根に見えなくもないものが生えている。
「古代の海底生物みたいな姿だな」
杉山が言う。
「あー、なんかそんな感じに見える。古代生物って大体変なフォルムしてるよね」
納得してうなずくえべたん。
「……本当にそう思うか?」
八木山の言葉に杉山はため息をついた。
「お前はまたそう不安がらせるようなとを言う」
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SPOILER抗う者達⑤の続き。抗う者達⑥「あ、そうだ、忘れる前に」
狭い個人用テント内に詰めて腰を下ろした杉山は思い出して言った。
「八木山、すまん」
そして頭を下げる。八木山は首をかしげた。
「何がだ?」
「咄嗟のこととはいえ、お前のことを『ヤギ』と呼んでしまった」
「? それがどうかしたか? 以前からたびたびそう呼んでいただろう」
「いや、まぁ、そうなんだが……しかしあの呼び方は」
七浦が使っていた。杉山はそれを気にして遠慮していたのだ。
苦笑いを浮かべる八木山。
「別に構わない。好きに呼んでくれ」
「だが」
「いいんだ。他でもない俺とお前の仲だろう。今さらだ」
それに、と続ける。
「お陰で自失から立ち直れた。むしろ感謝している。ありがとう」
今度は八木山が頭を下げる。杉山は後ろ頭をかいた。
4304狭い個人用テント内に詰めて腰を下ろした杉山は思い出して言った。
「八木山、すまん」
そして頭を下げる。八木山は首をかしげた。
「何がだ?」
「咄嗟のこととはいえ、お前のことを『ヤギ』と呼んでしまった」
「? それがどうかしたか? 以前からたびたびそう呼んでいただろう」
「いや、まぁ、そうなんだが……しかしあの呼び方は」
七浦が使っていた。杉山はそれを気にして遠慮していたのだ。
苦笑いを浮かべる八木山。
「別に構わない。好きに呼んでくれ」
「だが」
「いいんだ。他でもない俺とお前の仲だろう。今さらだ」
それに、と続ける。
「お陰で自失から立ち直れた。むしろ感謝している。ありがとう」
今度は八木山が頭を下げる。杉山は後ろ頭をかいた。
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SPOILER抗う者達④の続き。抗う者達⑤ 響き渡る杉山の声。
「ッ!!!」
急激に頭が回り始めた。
支点は? ビレイは? 上手く効いてくれるか?
ビレイが成功すれば腰周りを中心に体に衝撃が来る。
刹那の間にそれらを考え、そして祈った。祈るしかなかった。
えべたん、頼むぞ!
「南無三!!」
舌を噛まないように歯を喰いしばり、来るであろう衝撃に備る。
直後。
「グッ!」
ぐん、と勢いよく腰周りが浮くような衝撃を受け、それに引っ張られるようにして上体と足にしなるような力がかかった。中間支点から振り子のように振られて壁面に右半身が叩きつけられたが、ビレイの衝撃に比べたら些事だ。
そのまま氷の表面に擦られながら、ロープの伸縮性によってバウンドする。そうして何度か弾んだのち、八木山の体は空中で停止した。
5472「ッ!!!」
急激に頭が回り始めた。
支点は? ビレイは? 上手く効いてくれるか?
ビレイが成功すれば腰周りを中心に体に衝撃が来る。
刹那の間にそれらを考え、そして祈った。祈るしかなかった。
えべたん、頼むぞ!
「南無三!!」
舌を噛まないように歯を喰いしばり、来るであろう衝撃に備る。
直後。
「グッ!」
ぐん、と勢いよく腰周りが浮くような衝撃を受け、それに引っ張られるようにして上体と足にしなるような力がかかった。中間支点から振り子のように振られて壁面に右半身が叩きつけられたが、ビレイの衝撃に比べたら些事だ。
そのまま氷の表面に擦られながら、ロープの伸縮性によってバウンドする。そうして何度か弾んだのち、八木山の体は空中で停止した。
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SPOILER抗う者達③の続き。抗う者達④ 狂気山脈五千メートル──ショゴス乗越。
雪混じりの爆風が一行の歩みを遮らんばかりに吹き荒れる。
今にも滑落を招きそうな勢いに抗いながら、足下を警戒して前に進むのはなかなかに至難だ。たった一歩を押し出すだけでも大変な労力を要するというのに、霧散していきそうな集中力をかき集めて身の安全を確保しなければならない。余計に体力が削がれ、疲弊していく。
ショゴス乗越が狂気山脈第一の難所と言われていたのはそのためだった。
加えて四人は同時に志海を捜さなければならない。なおさら過酷な状況にさらされていた。
「……」
そんな中、穂高がふいに足を止め、息を呑む。
「梓ちゃん、どうかしたー!?」
えべたんが後ろから風にかき消されないよう大声で話しかけながら、前方を覗き込もうとした。穂高はそれを、腕を水平にして遮る。
5279雪混じりの爆風が一行の歩みを遮らんばかりに吹き荒れる。
今にも滑落を招きそうな勢いに抗いながら、足下を警戒して前に進むのはなかなかに至難だ。たった一歩を押し出すだけでも大変な労力を要するというのに、霧散していきそうな集中力をかき集めて身の安全を確保しなければならない。余計に体力が削がれ、疲弊していく。
ショゴス乗越が狂気山脈第一の難所と言われていたのはそのためだった。
加えて四人は同時に志海を捜さなければならない。なおさら過酷な状況にさらされていた。
「……」
そんな中、穂高がふいに足を止め、息を呑む。
「梓ちゃん、どうかしたー!?」
えべたんが後ろから風にかき消されないよう大声で話しかけながら、前方を覗き込もうとした。穂高はそれを、腕を水平にして遮る。
@looksick
SPOILER抗う者達②の続き。抗う者達③ 徹心の言う通り、このタイミングで倒れたのは不幸中の幸いと言えよう。
八木山は自分が思っている以上に焦っているのだと自覚した。このままさらに標高を上げていたら、強制下山の憂き目に遭っていた可能性が大きい。
だから、序盤で気付けたのは幸いなのだ。
「薬効いてきた?」
八木山が双眼鏡で見える範囲を捜索していると、穂高が声をかけてきた。手には温かいコーヒーが入ったカップを持っており、それを差し出される。
「あぁ、頭痛はだいぶ治まってきたよ。ありがとう」
カップを受け取り、少量をすする。熱と蜂蜜の甘さが冷えた体に染み渡り、八木山はほっと息をついた。
「ちゃんと呼吸してる? 捜索に夢中になって浅くなってない?」
4698八木山は自分が思っている以上に焦っているのだと自覚した。このままさらに標高を上げていたら、強制下山の憂き目に遭っていた可能性が大きい。
だから、序盤で気付けたのは幸いなのだ。
「薬効いてきた?」
八木山が双眼鏡で見える範囲を捜索していると、穂高が声をかけてきた。手には温かいコーヒーが入ったカップを持っており、それを差し出される。
「あぁ、頭痛はだいぶ治まってきたよ。ありがとう」
カップを受け取り、少量をすする。熱と蜂蜜の甘さが冷えた体に染み渡り、八木山はほっと息をついた。
「ちゃんと呼吸してる? 捜索に夢中になって浅くなってない?」
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SPOILER抗う者達①の続き。抗う者達② 闇の中、志海が八木山を振り返った。
「あー、やっぱり戻ってきちゃいましたか……八木山さん」
「志海……」
八木山は痛むように顔を歪ませた。これは夢だ。奴は本物ではない。それを理解して気が重くなった。
いったい“何を企んでいる”のか……まったく、タチが悪い。
一方、志海は八木山の気持ちを知った上で無視をして、愉快そうに笑う。
「あはは、待ってたんですよ」
八木山は目を細めた。
「何?」
「八木山先生のこと、待ってたんです」
「お前が俺を待つ、だと?」
いくら夢の産物とはいえ、志海の口から絶対に出てこないであろうセリフに、背筋が粟立つ。
「おかしいですか? はは、おかしいですよね。僕もそう思います。……でもね」
5724「あー、やっぱり戻ってきちゃいましたか……八木山さん」
「志海……」
八木山は痛むように顔を歪ませた。これは夢だ。奴は本物ではない。それを理解して気が重くなった。
いったい“何を企んでいる”のか……まったく、タチが悪い。
一方、志海は八木山の気持ちを知った上で無視をして、愉快そうに笑う。
「あはは、待ってたんですよ」
八木山は目を細めた。
「何?」
「八木山先生のこと、待ってたんです」
「お前が俺を待つ、だと?」
いくら夢の産物とはいえ、志海の口から絶対に出てこないであろうセリフに、背筋が粟立つ。
「おかしいですか? はは、おかしいですよね。僕もそう思います。……でもね」
@looksick
SPOILERナポリ山脈の二次創作です。コンセプトは野暮と蛇足です。
続くよ。長いよ。
抗う者達①※ちょこっとだけ「カエラズノケン~狂気山脈第三次登山隊の顛末~」のネタバレを含みます。
※設定の捏造を多分に含みます。
※展開や描写についての注意書きはしません。なんでも許せる方のみお願いします。
※登山のとの字も知りません。付け焼き刃もできませんでした。
※リアリティを追求したら物語そのものが成り立たなくなると思うので、ファンタジーってことで一つよろしくお願いします。
志海を捜しにいくお話です。
+++
気温マイナス30度。風はさほどではなく、高所登山に慣れた八木山にとって身を縮ませるほどの外気ではない。
しかし彼の心に吹き込む冷気はそれを大きく下回っていた。遥か前方を見上げれば、天を突かんばかりのいくつものピークが視界を鋭利に侵す。
5107※設定の捏造を多分に含みます。
※展開や描写についての注意書きはしません。なんでも許せる方のみお願いします。
※登山のとの字も知りません。付け焼き刃もできませんでした。
※リアリティを追求したら物語そのものが成り立たなくなると思うので、ファンタジーってことで一つよろしくお願いします。
志海を捜しにいくお話です。
+++
気温マイナス30度。風はさほどではなく、高所登山に慣れた八木山にとって身を縮ませるほどの外気ではない。
しかし彼の心に吹き込む冷気はそれを大きく下回っていた。遥か前方を見上げれば、天を突かんばかりのいくつものピークが視界を鋭利に侵す。
yuzu🍎
SPOILERずっと描きたい気持ちがあった友人くんとの絡み。私のぽいぽいの一番最初の落書きの中に入ってた設定の友人くんからちょっと変わってる感じします。でもハゲを気にはしてるのは変わらず☺️マシュマロで嬉しいコメント頂けて、後はもう勢いで描いちゃいました尻たたきありがとうございます!毎回反応頂けてるのもすごいハゲ身になっております!相変わらずラフ絵しか描けませんが、お付き合い頂けたら嬉しいです。 14セプナ
SPOILERhttps://twitter.com/sepuna_ntbr/status/1421152962060034049?s=21↑この🐐のセリフを書きたいがために書いた小咄。
⚠️🌊生存if 1842