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    #SS

    夕月葵(または凌霄花)

    TRAINING小狐丸は自分の「ぬしさま」以外にはどこか冷たくて、自分の「ぬしさま」にはとてもとても甘くて優しいのです。小狐丸はとても冷たい。
     いや、正確には『こちら』にいる小狐丸ではなく、よその――まだ主を持たなかった小狐丸であるが。
     初めて逢った時こそ表面的には物腰柔らかで紳士的ではあったにせよ、触れるはおろか近付くことすら許さないような、審神者を見るあの冷めた瞳の中にあったのは――……


     あの日見たのは月夜に舞う美しき獣。月の光を受けて輝く白銀がとてもきれいで――、ふわりと長い髪をなびかせ舞い降りた彼は、そこに現れた溯行軍を素早い動きで一掃した。
     その場にいた動けぬ人の娘を助けたのか、それとも単に目の前にいたアレ等が邪魔であったのか――後者かもしれないなと審神者は思いながらも、今ではあの小狐丸が認めた者に対する瞳を見れば、それもまた揺らぐ。
    「いかがされましたか、ぬしさま?」
    「……っ」
     優しい瞳を向けるのは『わたしの小狐丸』であり、そこに愛しさと甘さを宿すのも、この小狐丸だけで。
     あの野生の獣がそれを向けるのは、自身の唯一だけだ。
     そう、宿るものの違いに審神者が気付いたのは、あの小狐丸と度々山で遭遇していたから。主を持たぬ狐と思えば、いつの間にやら気に入りの者を見つけていたのか。 1048

    あかぎ(利便事屋のすがた)

    DONE初詣SS、トリを飾るのはデミア√。これでようやく全√コンプ。今までのも含め、ここまでお付き合いありがとうございます。後、今回は元ネタらしさ重視故、ちょい艶やかな表現(R12レベル?)&点数表現がありますのでご了承おばm(__)m。「うわ~、すっごい人だねー。魔法都市でも一年の初めは教会の鐘の音に合わせて神様に一年の願い事をしたり、市場の初売りを楽しんだりするんですよー」
     今年一年のお願いを神様にするべく、社殿へと続く行列の中に華やいだ一輪の花‥もとい、今、隣で一緒に並んでいる世界最高と評される大魔導師デミアが魔法で作り出した彼女そっくりのデコイ人形が初詣で賑わう神社の様子に激しく興味を抱いている。
     まあ、無理もないだろう。なんたって今日はこの娘と過ごす正月三が日の初日で三日後には儚くも消えてしまうのだから。きっと彼女もこの限りある時間の中で精一杯二人の時を楽しもうとしているのかもしれない。
     おっと、のっけからしんみりしてしまったが、この娘はレビュアーの中で常に40点満点を叩き出しているだけあって、例え誰であろうとも必ず相手の好みに合わせてくれるまさにデミアプロデュースのサキュ店(こっちの世界で言う所の××店)本店の孝行娘である。
     現に今日の格好も新年初日にふさわしく、ゴールドイエローを基調とした振袖姿で程よく露出した胸と右足、さりげに施された装飾品がよりデミア本人の魅力を引き出している。パッと見た限りで 1509

    あかぎ(利便事屋のすがた)

    DONE初詣SS3人目はイレイナ√です。このSSはデート気分が味わえるようにあえて舞台背景は現代の初詣の状況に合わせてます。ご了承おば。後はデミア√を残すのみ!突然ですがここで問題です。今、隣にいる灰色の髪を綺麗に結い上げた麗しき和服美人は誰でしょう?
    「そう、私です」
     弾むような声色でこう答えたのは今、一緒に初詣の後のお楽しみ‥屋台巡りを楽しんでいる灰色の魔女イレイナ。
     今日の彼女の装いも新たな年への澄み渡る気持ちに合わせたかのように鮮やかな瑠璃色の振袖で柔らかな色合いの花の模様があちこちにあしらわれている。それに加え、帯飾りの魔女の証、帯揚げの飴色に輝くファイアアゲートのブローチ、袖や襟からちらりと覗かすレースの飾りもこの振袖の魅力を十分に引き出している。
     イレイナ自身も自他共に認める美貌だけでなく、最年少で魔女になる位の才能に溢れた才色兼備という事もあり、すれ違う度に道行く人の視線をも引き付けている。
     まさか新年早々からこんなにも素敵な娘と一緒に初詣ができるとは神様もどでかいお年玉を用意してくれたものである。
     改めて屋台周辺を見渡すと嫌でも飯テロを引き起こす食べ物系、おみくじ同様、運試しの要素もある遊び系、中にはマッチョの奇術師によるパフォーマンスなんてのもあってとてもじゃないけど一日だけじゃ全部を回り切れなさそう。
    「ここの 1264

    たまの

    SPOILERここにいるよああ、これが、俗にいう「桜にさらわれる」ってやつかぁ、なんて。あたしは思ってたんだ。

     この冬は色々あって。
     ……ホント、説明が難しいくらい色々あって。
     ケンが、たまに遠い目をするのは、今に始まったことじゃないんだけど。
     その原因を、事件を、あたしと亜己ちゃんは目の当たりにすることになって。
     あたしじゃどうすることも出来ないんだなって。大事な同僚なのに、苦しんでるの分かるのに、ただただ自分が無力で、痛いくらい。
     今でも、思い出すだけで苦味がこみ上げる。でも、ケンにとってはきっとそれ以上の苦しみだったから、あたしはもう、何も言えなかったんだ。
     亜己ちゃんが背中押してくれなかったら。
     あたしは押し黙ったまま、潰れてたかもしれない。ここにいるよって。あたしここにいるよって、やっと言葉に出来て。ゆるやかに、氷が溶けるみたいに、あたしたちは日常へ戻ってこれたけど。
     冬が終わりを告げて、春めいた日が続くようになって。
     それでも思い出したように、ひんやりとした気持ちがよみがえる時がある。
     静かに桜を見上げているケンの背中を目で追いながら、あたしの気持ちどんだけ届いたのかな、自信 1172

    あかぎ(利便事屋のすがた)

    DONE初詣SS、続きましては天晴√です。今回はちと難航して、幾度か下書きを書き直しましたがどうにか完成。
    現時点じゃすっかりお正月ムードは影も形もありませんが(滝汗)、今回も初詣デート気分を味わえれば幸いです。残るはあと二人。がんばって全√コンプリートするぞー!
    「どうしてこの時期になると皆こぞってここに集まるんだ?普段は特に気にも留めない所なのに‥。まあ、こういう時期に願い事をするのは俺たちにとっても神様にとっても合理的だけど」
     緩やかに進んだ社殿の列からようやく解放されてほっと一息つく横で赤と白のツートンカラーの髪を二つ結びにした青年‥空乃天晴が初詣で賑わう神社の周囲を見渡しながら不思議そうに呟いた。
     ちなみに今日の天晴の装いもこの場に合わせてピンクを基調とした華やかな袴姿で羽織にあしらわれている鶴の柄が華やかな髪色とも合わさっている。にも関わらず、トレードマークであるオラクル型のゴーグル、右手の皮手袋、姉から譲り受けたお守りまで欠ける事無く装備されてるのも彼らしい。ひょっとしたら羽織の奥にも愛用の工具セットを忍ばせているのかも。
     せっかくの天晴との二人きりの時間。まずはどこの屋台へと向かおうか‥?
     一緒に来ていたはずの天晴のチームメイト、一色小雨とホトト、そして新しいホトトも空気を読んで今は別行動だし、それに小雨と共に自作の船で海の向こうまで行き、そこで行われた大陸横断レースでその船を改造した車で優勝を果たした彼にとっては聊か物足 1411

    たまの

    SPOILERなんかエロいことをしないと出られない部屋胸ぐらを掴まれ、押し倒された。
     ……ええと、二十センチ以上も身長の低い、女の子から。
     強引に唇を重ねてくる。勢いまかせなので、思い切り前歯がぶつかり合う。色気もへったくれもない。ちょっと待った、という言葉は口にする前に封じられた。
     ……正直に言います、本気の抵抗はしませんでした。
     だってこの状況、ちょっとオイシイだろ。困る相手ならまだしも。何してくれんのかな、って、好奇心。これも正直に言ってしまうか、シタゴコロ、ってやつだ。
     懸命に貪られて、舌を絡め取られて。いっそ抱き返してしまおうかと頭をよぎったけれど、もう一度歯がぶつかったところではたと我に返った。舌、切れたんじゃないのか、今の。

    「――ちょっと待っ……ちぃストップ!」

     両肩を押さえて制止する。完全に覆いかぶさる状態だった彼女を、下から支えるような体勢。なんだろな、この状況、どう考えてもオイシイんだけどさ。
     腕一本ぶんの距離で引き剥がされた彼女は、まともにこちらを見ることもできない。耳、真っ赤だぞ。

    「そんながむしゃらにならなくても……」
    「でもっ、だって、こうしないと出られないって、この部屋……」
    「たしかに 1223

    あかぎ(利便事屋のすがた)

    DONEポイピクの文字投稿テストがてらに以前ここに上げた初詣絵にまつわるSSを書いてみました。今回はメイちゃんの個別√ですが、他の3人の√も順次書いていくので首を長くしてお待ち下さい。
    そういえばこういうSSを書くのはかなり久々ですが、ちょっとでも初詣デート気分を味わって頂ければ幸いです。
    「これがこっちの世界で言う所の初詣‥。騒がしいけど皆、新たな気持ちで満ち溢れているな‥」
     普段は静寂に包まれている神社も今日は一年最初の大イベント‥初詣という事もあり、この1年の祈願のついでに神様に新年の挨拶をしに来た幾多の参拝客とその人達の財布をどうにかして緩めようと画策する屋台の喧騒で賑わっている。
     そして隣には緑がかった長髪とビスクドールばりに凛々しく整った顔つきの女性‥メイがこの喧騒に驚きながらも興味深そうに周囲を見回している。
     ちなみに今日の彼女はこの場にふさわしく、愛機ウォドムポッドを思わせるシャープな柄の振袖に身を包んでいる。両肩に羽織っている椿のワンポイントがあしらわれたストールはきっとこの振袖を見立てたであろう彼女の後見人とマギーの気遣いからだろう。そればかりかこの世界ではモビルドールと言われる15cm位の女性型フィギュアなのにどういうわけか、今日はGBN内ではおなじみのリアル体型なのも新年だからこそ成せる一時の神の奇跡なのかもしれない。
     そうこうしている内に二人は本来の目的でもあるお参りもつつがなく終え、まったりと屋台巡りを楽しんでいた。食べ物系、遊び系、買 1223