ある休日のまだ日の暮れぬ頃。買い出しに行くという隣人の吉田に、三木は荷物持ちで名乗りをあげた。よく食べる隣人三人衆の食料なのだから、きちんと大義名分はある。なによりその量を一人で運ぶのは大変だ。吉田も断らず、二人で揃って町に出た。
店に向かっていると、車道を挟んだ向かいに三木はよく知った顔を見つけた。神在月だ。視力は良くはない神在月も、三木に気付いた。付き合いの長さは伊達じゃないといったところか。三木の反応で吉田も神在月の存在に気付く。神在月は三木に連れがいるのを見て、二人に軽くペコリと頭をさげて、そのまま通りを進んでいった。
三木を見ても慌てた様子はないから、ギリギリの逃亡ではないようだ。普段の買い物か散歩だろう。
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