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    あまみ

    忘バ/圭藤(智将含む)
    リバリバ/シキザキ、フォウイレ(411)
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    あまみ

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    圭藤

    智将と葵ちゃんがラーメン食べに行く話。
    圭ちゃんと智将が双子で圭智藤が3人で付き合ってます。
    葵ちゃんは男の子です。

    #圭藤

    やけくそデート、へい一丁(圭藤)「智将のバカ!もう知らないっ!世界一かわいい圭ちゃんをこんなに傷つけて!絶交なんだからねっ、絶交!」
    「バカって言ったほうがバカって、こないだ自分で言ってたぞ主人。あと主人が世界一かわいいなら俺もかわいさ世界一ってことになる。双子なんだから」
    「違いますう〜、同じ顔してても内面がにじみでちゃうんですう〜。ほら見て、圭ちゃんのクリクリおめめ!おっきくてかわいいでしょ!ねっ、瞬ピー!」
    「え?ああ、要くんでしたか、智将かと思いましたよ。似てますねー、ふたりとも」
    「ムキー!?瞬ピーのバカ!もう知らないっ!絶交なんだからねっ、絶交!」

    ご覧ください、あれが小手指野球部名物“誰よりも騒がしい双子捕手のケンカ“です。
    教室に入った瞬間、繰り広げられているお祭り騒ぎにガクリと両肩が重くなる。まだ一限目の前だっていうのに、ランニング10キロ分くらいの疲労感だ。あたりを見渡してもヤマがいない。こんなときばかりは、恋人“たち”と同じくクラスであることを後悔する。

    「朝から何騒いでんだよ。朝練中は仲良かったじゃねえか」

    我らが頼れるキャプテン山田様がいないとなれば、仲裁の役割はおのずとこちらに回ってくる。清峰がハンドグリップ握ってて千早がゲラゲラ笑ってるってことは、ケンカの理由はたいしたことねえんだろう。むわーっ!と、もはや大好きだろくらいの距離感の要たちを引き剥がす。
    顔はそっくり、性格は正反対な双子たちはそれはもうしょっちゅうケンカする。あまったれな要が冷静な智将につっかかるってのがお決まりのパターンだけれど、これでなかなか智将も煽られやすい。
    「ちょっと智将、ヘルプミー。俺このままいくとこのへん当てられんのよ」「断る。昨日予習しなくていいのかって声かけただろ。きっちり当てられて、きっちり怒られろ」「ひどーい!この世でふたりきりの双子にこの仕打ち!智将のケチ!頑固!マダガスカル!」「マダガスカルってなんだマダガスカルって!バオバブの木くらいスタイルいいですねってことか!」「おい双子!数学の時間に海外旅行始めるな!」
    こないだだって、授業中当てられそうになった要が智将に助けを求めて、結局ふたりそろって討ち取られてた。

    「あーん、葵っちぃ〜〜。頭脳明晰コンビがいじめるよ〜〜」
    「一周回って褒めてんじゃねえか、それ」
    「へへ、でしょお?圭ちゃんってば優しいんだから。ね、葵っち、今日お昼ふたりで食べよ」

    べたっと、お菓子売り場の子どもみたいに、要が腰回りに張り付いてくる。同じ日に生まれたっていうのに、このふたりはどうしてこうも違うんだろう。なにかいざこざがあったあとのふたりの反応は両極端で、要はやたらめったら甘えてくる。
    ちら、と一応瞳だけで確認しても、智将は気に留めた様子もない。
    「いいけど、食ったら昼練するからな」「え゙っ」、もふもふとやわらかい茶髪を指の間で滑らせる。

    ***

    明確にサブスク契約を結んだわけではないけれど、俺はちょこちょこ双子に弁当をこしらえている。要が「葵っちのお弁当食べなきゃしんじゃう!」って発作を起こしたとき九割、あとは俺の気まぐれだ。前日の夕飯の余りものにはなってしまうが、「ちょっとこれはアイツらにも食わせてやりてえな」って自信作ができたときは打率が高い。
    今日は、珍しく後者だった。

    「えっ、何これ美味しい……シェフを呼んでいただいても?」
    「本日もこの天才シェフ、藤堂葵の担当です。姉貴のつまみに作らされたんだけどよ、お前らぜってー好きだなと思って」

    チップ弾んでくださいよ、おぼっちゃま。
    目の前でほっぺたを膨らませる要に続いて、俺も自らの弁当箱へ箸を伸ばす。部室棟の脇にあるベンチは、強すぎる陽射しのせいか俺と要の貸切状態だ。俺のお弁当、要のお弁当、俺が要に作ってきたお弁当と広げれば、さながらお花見デートのよう。
    厚揚げの焼き浸し、コツは片栗粉をまとわせてカリカリになるまで炒めてやること。参考にしたレシピではたっぷりの大根おろしも添えているんだが、さすがに学校へは持ってこれないのでそこはいつかのお楽しみだ。
    「おいひい」と、右頬をふくらませる要を見ていると、ついついこちらの手が止まってしまう。昼休みに入る前に智将にも同じものを渡したけれど、彼の感想はどうだろう。清峰あたりに、食い尽くされていねえといいんだけど。

    「……で、今朝は何が理由でケンカしてたんだよ」

    ほっぺたをぼろんぼろん落とした要が、葵っちは将来いいお嫁さんになるよお〜と、泥酔した姉貴と同じセリフを繰り出したところで、口火を切った。大したことじゃないとかわされるならそれでいい。ただなんとなく、これを訊けるのも部活内で自分だけだという自負がある。
    とたんに要が、石でも噛み砕いてしまったような表情になる。

    「別にそんなケンカとかじゃないよ?智将がひとりで怒ってただけで」
    「絶交絶交騒いでただろうがオメーも。まあ、要がもう許してんなら別にいいけどよ」
    「うぐ……圭ちゃんは最初っから許してますし……」

    とにかく、揉めてた理由が知りたいなら双子の片割れに訊いてくれということらしい。
    明後日の方を向いたままむぐむぐ口を動かし続ける要の弁当箱に、ほいっとウインナーを投げ込んでやる。ちら、と目線だけよこしておきながら、その表情はニッコニコだ。
    かわいい、うれしさをギリギリこらえようとしている顔も、喜びが隠しきれていないとこも。
    「葵っちありがと」「おう」、たくさん食べなさい。この時ばかりは彼の彼氏という立場を忘れて、妹のことを思い出す。


    ***


    放課後、部活に遅刻した。いや正確にいえば部活前の準備や整備に遅刻したってだけだけど、それでも俺には大遅刻だ。なんてったって、学校へは半分くらい部活のために通っている。
    遅れたっつっても、サボりじゃない。早退した日直の代わりにプリント回収に勤しんでいただけだ。数学の教師は、俺たち野球部にちょっと学力に不安のある部員が多いのをわかっていて、それを補修じゃなく課題とちょっとした小間使いでチャラにしようとしてくれる。わりと良い先生だ。

    「お、」

    もうみんなとっくにグラウンドに散らばっているものと思っていたけれど、ひとりだけ、部室の前に佇んでいる奴がいる。
    毎日ふたりぶん眺めている背中、の片方。智将だ。
    幼稚園で「いっしょにあそぼ」が言えない子どもみたいな背中で、ジッと部室の入り口を眺めてる。
    理由なんて訊かなくてもわかる。ウチの団地より薄い部室の壁の向こうから、要の声が丸聞こえだった。清峰か千早かヤマあたりと、なんかはしゃいでいるんだろう。

    「妻と子どもに追い出されたお父さんみたいな姿になってんぞ」

    振り返った智将が思いのほか捨て犬のような視線を向けてきたものだから、うっ、と胸にキてしまう。

    「珍しいな、藤堂がまだ着替えてないなんて」
    「善行を働いてたんだよ。そう言う智将もまだ制服じゃん」
    「……」

    とたんに智将は、砂でもがぶ飲みしたみたいな表情になる。限りなく同じ顔した人間の、限りなく同じ表情を、一日に二回も拝むことになろうとは。

    「……サボる?」

    ぽろっと、本当に、ポケットから家の鍵を取りこぼしたみたいにそんなセリフを口にしていた。嫌なことがあって幼稚園に行き渋る妹に、そんなふうに声をかける姉貴を見ていたから。うーん、やっぱり要たちを妹だと思ってるのかもしれねえ。
    意外と返事が返ってこない。呆れてモノが言えないってより、将棋の試合みたいに長考している感じだ。
    アゴに手をあてたまま、智将の両目は部室の扉を見つめている。

    「……いや、練習は出る」
    「出んのか」
    「そのかわり、部活が終わったら顔を借りたい」
    「ヤンキーかよ。要にごめんなさいするって?」
    「主人はいい」
    「いいんかい」

    反抗期に付き合えってことだろう。
    わかったよ、のかわりにぽんぽんと頭を撫でる。いつもなら「やめろ」と言わんばかりに払いのけられる手は、今日は大人しく受け入れられてる。


    ***


    練習後のこの俺の活躍は、それはそれは鮮やかなものだった。いや、練習中のこの俺の活躍もそれはそれは素晴らしいものだったけれど。
    先陣を切って片付けや整備に取りかかり、何か言いたそうな後輩の悩みに率先して突っ込み、消化不良を絵に描いたような顔をして肩を回す清峰に腹の底から声をかける。

    「おいエースピッチャー様、要がキャッチングの自主練したいってよ」
    「えっ」
    「えっ!?!?」
    「わかった、水分だけ摂ってくる。ヤマ、バッターボックス入ってて」
    「えっ巻き込まれた」
    「ちょっとお!圭ちゃんそんなこと言ってないんですけど!?」
     
    人払いならぬ、双子払いもこれで完璧。「ほら、今のうち行くぞ」、まるで合コンから抜け出すように、智将を連れて飛び出した。

    「で、どうすっか。バッティングセンター……は、あんまストレス発散にならなそうだしな、お前」

    出会いたての、まだ彼が自分の中でいけすかないポジションにいた頃を思い出す。ピッチングマシン相手にズンズン前進していく智将はすごいのはすごかったけれど、個人的にはちょっと引いていた。そんな彼と付き合うことになるなんて、人生とはなんと予測のつかないことか。
    カラオケ、ゲーセン、映画館。ラーメン屋、はちょっと無さそうだし、もう買い出し付きでウチで夕飯食わせてみるか?
    情けないことに、こんなに毎日顔を合わせているっていうのに“野球以外の智将“がうまく想像つかない。

    「ラーメン」
    「だよなー、やっぱラーメンはあんまり…………え、」
    「ラーメンが食べたい。藤堂の行きつけに連れて行ってくれないか」

    行きつけて。どことなく、おじいちゃんが孫に話題を合わせているときのような違和感に、大丈夫か?と隣の顔を盗み見る。
    智将は、ぶすっと下唇を突き出している。やけくその顔だ、と俺は思った。学校をサボって海まで乗り継いでいくとか、家とは真逆の電車に飛び乗ってみるとか、そういう類のことらしい、智将にとってのラーメン屋とは。
    むくれたときの顔、要にむちゃくちゃ似てんなあ。

    「じゃ、行くか、ラーメン」

    混沌のスープに、空腹もケンカもしずめてもらおう。なんといっても、ラーメンはすべてを受け入れる。

    普段ノーラーメンで過ごしている人間に、ラーメンアテンドするのはなかなかムズい。なんか野菜ダシとかむちゃくちゃ取ってるとこがいいのかなとか、学生だし俺も金ないしコスパ一択だろとか、脳内の藤堂葵たちの議論は白熱するばかりだ。

    「ほら、着いたぞ」
    「ああ、藤堂がいつもSNSに載せてるところか。あの、どんぶりに店名が書いてある」

    結局いつも通りの変わらない店に足を向ければ、まんまと見破られてしまった。つーか俺のSNSなんかちゃんとチェックしてんだ、コイツ。そういうの興味ないと思ってたわ。

    「なんだよ、違ったか?」
    「いや合ってる、けど、智将ってラーメン屋が全部同じに見えてるタイプかと思って」
    「はあ?そんなわけないだろ、ほら邪魔になるからさっさと入るぞ。ヤサイマシマシだ」
    「いやわかってねえじゃん!ここはそういう店じゃねえから!」

    てか食券!
    グイグイ話も歩みも進める男の首根っこをひっつかんで、軒先の自販機の前へ突き出した。要と違って出来の良い智将をこんな風に面倒みる機会はなかなかないかもしれない。不謹慎かもしれないけど、ちょっと楽しくなってきた。

    「あー、食券ってわかるか?ここでたべたいらーめんのかみをかって、おみせのひとにわたすんだぞ」
    「あ、あと現金あるか?ここ電子マネー使えねえから……アレならラーメン一杯くらいなら奢……奢…………立て替えるけどよ」

    フグッ!と、隣の男が震えた。くつくつと体中を揺らして笑う智将は、先ほどまでとは別人のように楽しそうな笑顔を浮かべている。
    その顔を見た瞬間、ふわっと体が軽くなる。授業や部活の疲れも、野球の荷物一式の重さも、夏の暑さからのダメージも、すべて放り出してふたりっきりになったみたいだ。
    目のふちをぬぐいながら、智将が折った体を起こす。

    「え!?泣いてる!?」
    「いや、母さんにも言われないようなこと言い出すから……、ふふ、さすがに買い方はわかるから。財布もあるし」

    なんなら、付き合わせた詫びに俺が藤堂の分も出すよ、のお誘いはかなり魅力的すぎたけれど、さすがに要に悪くて断った。詫び、とか思わなくてもいいのにな。けどこれで、共犯者感は増したかもしれない。
    鶏ガラベースのオーソドックスな味付けのこの店は、住宅街にあるだけあって狭いわりには家族連れで混雑する。部活終わりたてで夕飯の時間にはまだ早い今頃が、実はいちばん狙い目だ。
    「智将は?どうする?」、スマホのロックを外すように、指が勝手に“いつものメニュー“を購入する。完全に感覚で覚えてるから、気まぐれでメニューの配置を変えられたら大惨事を引き起こしかねない。
    ううん、と智将は対戦相手のデータを分析するみたいに券売機へ向き合っている。しばらく野菜たっぷり麺と野菜タンメンと夏野菜冷やしラーメンのあたりを右往左往していたけれど、「藤堂、」監督に指示でも仰ぐように、ぐるりと俺へ向き直ってきた。

    「いちばん俺がウワッて顔しそうなやつ、教えてくれ」
    「いちばん俺がウワッて顔しそうなやつ?」
    「そう、なんか俺が人生最後の日にやけくそで注文しそうなメニュー」
    「勝手に今日を人生最後にすんなよ。また一緒に来ようぜ、ラーメンでも焼肉でもケーキバイキングでもよ」
    「ケーキバイキングに行く藤堂は、たしかにちょっと見たいかも」

    ラーメン、餃子、日替わりチャーハン。ゴト、ゴト、ゴトと選んだ手札がなんてことないように落ちてくる。智将にとっての天変地異、青天の霹靂、人生最後の日。たとえやけ食いだったとしても、その記念すべき晩餐を共にできるのは、少し嬉しかった。
    全然やけくそなんかじゃない、俺の鉄板ルーティンメニューを、智将にしっかり握らせる。

    ラーメン、餃子、日替わりチャーハン。ボン、ボン、ボンと並んだテーブルに、しかして智将はウワッという顔をする。

    「おーい智将、顔、顔、」
    「あ、悪い……油分がすごくて……。あと塩分も……脂質も……炭水化物も……」
    「全部じゃねえか!ほらいただきますすんぞ。あったかいうちに食うのがいちばん美味えんだから」
    「ああ、うん……、藤堂からの弁当も揚げ物だったから、ちょっと気圧された」

    ぱちっと割り箸を割りながら、いただきます、と声を合わせる。「お、弁当、」そういや食ったか?どうだった?、攻めあぐねている智将を前に、ばくりと餃子を頬張った。

    「あ、美味かったよ。タレが甘辛くて、米が足りなかった。ん、てかこの餃子も美味いな」
    「おーよかったわ、清峰に全部食われてっかもって思ってたから。また作る」
    「さすがに葉流火もそのくらいは空気読むって……え、藤堂何してるんだ」
    「智将がウワッて顔しそうなこと」

    餃子をひとくちかじって穴を開けて、レンゲにすくったスープに浸して食べる。小籠包みたいになって美味いんだ、冷食のやつしか食ったことねえけど。
    向かい側に座る智将は、かろうじてウワッのウの顔をして箸を握りしめている。
    「えらいじゃん」と、メニューをひっくり返して指でなぞった。そのままでも!アレンジしても!と、店公認の魔改造レシピがつらつらと描かれている。
    「せっかく、藤堂の好きなものを食べに来たからな」、おそるおそるアレンジメニューを覗き込んだ智将が、チャーハンをスープで湿らせる。ラーメン茶漬けだ、これも美味いんだよな。塩分の摂りすぎで翌日むくみやべえことになるんだけど。

    「……あーっ、うまい!」

    レンゲをぶるっと震わせて、智将はぷはっと天を仰いだ。

    「あー、うまい。クソッ、うまいな。これだから嫌になるんだ、ラーメン屋は」
    「何?むちゃくちゃ褒めてる?つーか好きなんじゃん智将も、油分塩分炭水化物」
    「当たり前だろうめちゃくちゃ我慢してるだけだ!ああもう、はあ、藤堂め、」

    悪態をつきながらも、食事の手は止まらない。ずるずると音を立てて麺をすすり、指で油をぬぐいながら餃子にかぶりつき、ほっぺにお米をくっつけたままチャーハンをかきこんでゆく。
    CMさながらの智将の食べっぷりに、うまそうに食うなあ、なんてこちらが釘付けになってしまうほど。
    うまそうに食うなあ、引っぱってきてよかったわ。別に俺は何一つ作っちゃいねえけど。
    ふふ、と満たされてゆく胸の中を打ち明けるみたいに、、ほいっとチャーシューを一枚をプレゼントしてやる。ちら、と目線だけよこしておきながら、その表情はニッマニマだ。
    かわいい、うれしさをギリギリこらえようとしている顔も、喜びが隠しきれていないとこも。
    「ありがとうな、藤堂」「おう」、たくさん食べなさい。この時ばかりは彼の彼氏という立場を忘れて、妹のことを思い出す。なんかこれも、昼間のデジャヴだ。
    似てんだよなあ、要は智将に。智将は要に。
    性格は正反対で、いじけ方もぐるっと真逆。
    それでも顔以外のふとした仕草で彼らふたりのことを想ってしまうのは、双子ってそういうもんなのか、俺が惚れた弱みを握らされているからか。

    「そういえば、要となに揉めてたんだよ」

    ふいに投げかけたひとことにも、智将はもう砂をかじるような顔はしない。
    ああ、と俺があげたチャーシューをつまんで、まっすぐこちらを見つめてくる。

    「藤堂の顔見てたら、忘れた」

    あながち、間違いでもないらしい。
    大好物を口に入れるときの、要と智将のあのデレっとした顔。俺の大好きな、幸せそうな表情を浮かべて、智将はもふっとチャーシューを頬張った。


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