夏の花火 フィレンツェにいても日本にいてもあいつが唐突に来るのは何も珍しいことじゃない。始めのほうこそ驚いていたけれど、今では、あぁまた居るのね。程度には見慣れた光景である。
「セナ! 花火しよ!」
例えばそれが、部屋のドアを開けた瞬間に眼前に突き出された花火セットだとしても。
「……ここ、俺の部屋だよね?」
「あってると……思います」
奥から衣更の声がした。どうやら、俺の部屋であっているらしい。
「花火……? なんで?」
「やりたいからに決まってるだろ~!?」
先日れおくんは天祥院達とプールに行ってきたらしい。Knightsのみんなとバカンスもしたし、夏にやりたいことは残るところ花火ということらしかった。
「れおくん、俺以外にも友達いるでしょ? なんで俺?」
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