世界の終わりは、幸せで 共有浴場で体を清め、読書を嗜み、眠気を覚えたら部屋の電気を消し、ベッドの上に横たわる。
学生寮に越して以来、変わらぬ少年の日常であった。
けれども、変わったのは。
「少年、先に」
「うん」
眠りに引きずられつつある少年は電気を消さずにベッドに身を横たえ、少年が布団を肩まで掛ける姿を確認してアオガミが電気を消す。
暗い室内で輝く、赤色の光。命の、光。
「アオガミ」
肩まで掛けていた布団をめくり、少年は半身の名を呼ぶ。
誘われたアオガミはといえば躊躇うことなく歩みを進め、ギシリとベッドが軋む音を僅かに立てながら少年の隣に身を滑り込ませるのであった。
「少年、明日は何時に起床を?」
「八時でいいかな。明日の予定もダアトにしかないし」
「承知」
慣れたやり取りを交わし、アオガミの手が少年の背中に伸びる。同時に、少年もまたアオガミに手を伸ばすのであった。
「おやすみ、少年」
「おやすみ、アオガミ」
瞼を閉じた少年の世界に広がるのは暗闇ではない。直ぐ傍にある赤色だ。少年がアオガミの腕の中にいる何よりの証である。
(幸せだな)
――今日こそ、良い夢が見られるかもしれない。
そう思いながら、少年は現実世界を離れ、眠りへと落ちていくのであった。